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米国TVドラマ『グッド・ドクター名医の条件』(The Good Doctor, 2017~):使ってみたい口語表現と知っておきたい医療表現

大月敦子(ATEM東日本支部、専修大学)

本作品は現在、NETFLIXやhuluなどの有料動画配信から視聴することができます。2013年に韓国で放映され大ヒットした、TVドラマ『グッド・ドクター』のアメリカ版になります。ここで敢えて取り上げずとも、すでに多くの方々が視聴されていることと思います。私も大好きな作品で、第7シーズンまで製作が完了しているそうですが、日本では現在、第6シーズンまで視聴することができます。

各シーズンが18〜22のエピソードから成る超長編にもかかわらず、エピソード毎に社会的テーマ、医療問題、普遍的なテーマ(愛・家族・友情)などが丁寧に描かれているため、英語学習用としても飽きることなく繰り返し何度も視聴できるお勧めの作品です。物語は、特定の分野において優れた才能を持つ自閉症の外科医マーフィー(Murphy)を中心に、医療現場での出来事を通して、今日的なテーマを背景に主人公や周囲の人々の成長が描かれています。

題名からも分かるように医療英語が学べるのはもちろんのこと、流行の口語表現も満載です。映画やTVドラマから英語を学ぶメリットの一つは、普段のテキストには見られない、日常的に使われる口語表現に接することができることではないでしょうか?そこで本作品のシーズン6のエピソード2から、“使ってみたい表現” “注目すべき構文” “注目すべき医療表現”を数点えらんでみました。皆様が視聴する際の参考になれば幸いです。

使ってみたい口語表現

  1. a man: Can I give you a hand?   
    手伝いましょうか?)

b. Dr. Lim: Oh. No, thanks.    
          (大丈夫、ありがとう。)
            Everything in its place.   
                (完璧よ。)

個人的には、例文a. “give 〜 a hand”は知っていても会話の中では使えず、とっさに“help”を使ってしまいますが、頑張って使ってみたいものです。英会話上級者の印象を与えること間違い無し! 一方、例文b. “Everything in its place.” を会話の中で使うのは少しハードルが高い気がします。でも、気持ちの準備をしていれば使えるかもしれません。

注目すべき構文(語順)

  1. a patient: What’s the hell do you think I’m here for
    (いったい俺が何のためにここにいると思ってるんだ?)

b. a shooter: What’s the tray for?
            (そのトレーは何に使うんだ?)

What‘s ~ for? は、「何のための〜?」の意味の口語で良く使われる構文ですが、学習用としては余り見かけない気がします。さらに例文a.では、この構文に “the hell” と “do you think” が挿入されています。その上 “What the hell!” 「まじかよ!」という意味のスラングとかけ合わせるという神業的な手の込んだ表現になっています。このような表現に接すると、個人的な感想ですが、鳥肌が立つくらい楽しくなってしまいます。

注目すべき医療表現

  1. a patient: It still feels like I’m choking.
    (まだ息が詰まるような感じなんだ。)

b. Dr. Wolke: Your bedside manner is impressive.
             (君の患者への接し方は見事だった。)

例文a. の“I’m choking”は、非常事態に備えて、日頃から使えるようにしたいものです。例文b.の “bedside manner”のmannerは「方法」「やりかた」の意味ですが、これにまつわる造語は数多く、洗練されたニュアンスを持ちます。また、ここでのbedsideは、ベッドに横たわる「患者」を意味します。修辞法の一種で、近接性から成る換喩(metonymy)による意味の拡張と考えることができます。“bedside book”「(子どもが寝る前の)読み聞かせ本」 “bedside story”「(子どもを寝かしつける時の)お話」なども同様と考えます。

参考資料
『グッド・ドクター 名医の条件』
(グッド・ドクター めいいのじょうけん、原題: The Good Doctor). 2017~
製作:ショア・Z・プロダクションズ3ADエンターメディア
             ABCスタジオズ (シーズン1-3)
            ABCシグネチャー (シーズン4- )
            ソニー・ピクチャーズテレビジョン
配給:ディズニー/ABC・ドメスティックテレビジョン/
             ソニー・ピクチャーズテレビジョン

映画を観ながら、文章読解も取り入れる授業~「アンネの日記」(ジョージ・スティーヴンス監督)について~

藤田久美子(進学塾TOMAS講師・元白梅学園大学講師)

私が大学で英語講師をしていた頃には、映画が最良の教材だと考えて、かなり多くの映画を使用してきましたが、「どんな映画をどんな意味で使ったらよいのか」、また、「どんなやり方で教えるのが良いのか」等の問題はいつも考えていた問題でした。

私は言語学や英語教育の専攻ではなく、関心を持っているのは文学や歴史、さらに言えば、文学に描かれる人間関係なので、使用する映画は「文学的意味を持つもの、何らかの問題を提起するもの」であって相当優れたものを、と考えていました。しかも対象となる学生は、児童教育や地域支援などを専攻する人達だったので、そうした彼らの専攻を考慮する必要もあると考えて、「家族関係」や「家庭の中の子供の問題」等を扱ったものも使いました。

学生に好評で、何度も使った映画の中に、「アンネの日記」がありました。この映画は、元々第二次大戦中のナチスドイツ占領下のアムステルダムで、極めて不自由な狭い隠れ家暮らしを強いられたアンネ達(アンネの家族と、別の家族、さらに家族ではない男性の合計8人)の姿を描くもので、アンネの書いた実際の日記に基づいて映画化され、演劇としても何度も上演された有名な作品ですが、学生達は、名前は知っていても映画は観たことがないので、大変楽しみにしていたようでした。そうは言っても、私の使ったのは、50年以上前に公開されたモノクロの映画で、しかも上映時間は3時間余りと長く、重要な問題を扱ったものであるとは分かっていても、果たして教材として適当なのか、と心を悩ませたものでした。

しかしそうした私の心配も、映画の内容と表現の迫力が学生達を圧倒したようで、結局杞憂に終わりました。

さて、この映画の特徴はどんなところにあるのでしょうか?主人公のアンネは、確かに

家族と共に、普通ならとても暮らしてなどいけない狭い場所に隠れて暮らさねばならず、しかも、下の階は普通の会社が入っているので、昼間は、その人々に分からないように、じっとしていなくてはなりませんでした。改めて考えてみると、大人だって大変な状況を、わずか13歳のアンネとペーター、それにアンネの姉のマーゴットは、耐えたのです。アンネは特に積極的で活動的な性格の少女でした。そのアンネが、また、アンネの家族(父、母、マーゴット、アンネ)とペーターのファンダーン一家、さらに、歯医者の中年男性であるデュッセルと共に生活しながらも、時にいらいらして諍いをすることはあっても、心理的に変調を来たしたり、発狂したりすることは決してなかったのです。ですから、この映画は、決して声高に反戦を叫び、惨たらしい戦場の場面を見せることなく、しかし明らかに、何の罪もないのに、犠牲を強いられたユダヤ人家族の、極めて不自由ではあるけれど、淡々とした、節度ある、信仰に基づいた生活を描いていくものなのです。そうであるが故に、益々彼らの悲劇が(勿論アンネの家族以外にも、大勢の人々が同じ運命に会いましたが)私たちの胸に迫るのです。

そうした明らかに異常な、時にはひもじさに苦しみ、普通ならとても我慢が出来ないような生活の中でも、主人公のアンネは、少しずつ肉体的にも、心理的にも成長していきました。

初めの内、思春期の少女にありがちなように、彼女は母親に多少反発しており、父親を慕っていました。それは、この映画の中では、アンネが、友達のザンネが収容所に入れられ、ただ死を待つだけ、という恐ろしい夢を見てうなされ、それを母親が慰めようとするのに、アンネは、母よりも父に傍にいてもらいたいと言って、母を悲しませる、という場面に現れています。そして、この場面は、アンネの日記の中では、次のような表現で描かれています。

日記のなかでは、友達の名前はザンネではなく、リース(Lies)となっています。実際はそうだったのでしょう。

  Oh, God, that I should have all I could wish for and that she should be seized by such a terrible fate.  I am not more virtuous than she; she, too, wanted to do what was right, why should I be chosen to live and she probably to die?  What was the difference between us?  Why are we so far away from each other now?

母を傷つけてしまう幼いアンネですが、同時に、幼いながら、このようなことが考えられるとは、人間として素晴らしいことだと感じます。彼女自身辛い生活を強いられながら、“私は望むもの全てを持っているのに、彼女(リース)は、こんな過酷な運命に捕らえられているなんて・・・”と、アンネは友達のことを本当に真剣に憂いています。映画の場面とは多少違いますが、実際の日記には、アンネの心情がはっきりと述べられているので、他の箇所も含めて、これらの何か所かを読解のために使いました。

ペーターの父であるファンダーン氏が、ひもじさに耐えかねて、ただでさえ少ないパンを盗んで、アンネの母から酷く非難され、ここから出ていってほしい、と言われる切ない場面などもあり、彼らの暮らしが如何に限界ギリギリのものであったかがわかるのですが、そのような時にも、アンネの父のオットーが冷静に皆を説得して、気持ちを落ち着かせるのが印象的です。

アンネ達のいる場所は、彼らの隠れ家となった屋根裏部屋で、外に決して出ることの出来ない彼らの生活は単調だと思いがちですが、“自分たちの存在を絶対に知られてはならない”という彼らの心理的及び肉体的緊張が、観る者に十分感じられ、階下の会社に泥棒が入った時や、猫のムーシが何かから飛び降りた音を、見回りのゲシュタポに聞かれた時には、“万事窮す!”と思って、息をのむことになるのです。彼らの隠れ家は、遂にゲシュタボの知るところとなり、皆それぞれナチスの収容所に送られていくのだ、ということを知っていても、私たちは、彼らが命の危機に会いそうになるたびに、彼らとともにスリリングな緊張感を味わうことになるのです。本当に、ジョージ・スティーヴンス監督は、アンネが日記に記した実際に起きたことを、第一級の優れたサスペンスに仕上げたと言えるでしょう。

アンネとペーターは、初めの内は、悪口を言いあったりしていましたが、やがてその距離を縮めていきます。アンネは将来の夢をペーターに語り、二人はお互いに最も理解し合える存在であると思うようになります。アンネが、精一杯のおしゃれをして、ペーターの部屋を訪れる場面は、如何にも思春期の女の子らしく、微笑ましい場面です。

連合軍によるノルマンディー上陸作戦が始まったことをラジオで知り、皆はもう少しの辛抱だとお互い励まし合いますが、同時に、近くの店や住まいから、人々が次々と連れ去られていく様子も隠れ家の窓から見えるのです。そしてアンネとペーターは益々距離を縮め、二人はよく誰も来ない屋根裏部屋へ行って、お互いの考えを伝えあいます。アンネの次の台詞は、素晴らしいものです。

 When I think of all things out there, trees, flowers and those seagulls,
  When I think of the dearness of you, Peter, and the goodness of the people we know,
  Mr. Kraler and Miep, the vegetable man, all of them risking their lives for us every day,
  When I think of these good things, I’m not afraid anymore.  I find myself…and God, …
  We’re not the only people that have had to suffer.  There have always been people that
  have had to.  Sometime one race, sometime another.
  I still believe in spite of everything that people are really good at heart.

この瞬間、ゲシュタボの車がサイレンを鳴らして近づいてきて、アンネ達の隠れ家があるビルの前に止まります。アンネとペーターはしっかりと抱き合い、隠れ家の皆は、大騒ぎもせず、観念していたかのように、日頃から準備していた自分のリュックを手にとります。それは1944年8月4日のことでした。その後、隠れ家の皆は、それぞれの場所(収容所)に送られていきます。アンネと姉のマーゴットは、初めの2か月はアウシュヴィッツで、母と一緒に過ごせましたが、その後、二人はベルゲン・ベルゼン収容所に送られ、劣悪な環境の中でチフスに罹り、まずマーゴットが、次にアンネが1945年3月頃に亡くなりました。ベルゲン・ベルゼン収容所が、イギリス軍によって解放されたのは、そのわずか後の4月15日の事でした。

アンネのような運命を辿った少年少女は、他にも沢山いたでしょう。また、ナチスの収容所に送られたのはユダヤ人だけではなく、社会主義者や同性愛者なども多くいました。そして、現在では、このような酷い迫害の歴史を経験したユダヤ人の国家であるイスラエルが、パレスティナの人々に対して相当酷いことをしているのも事実です。一体民族の対立、宗教的対立とは、何なのでしょう?大昔から存在する一筋縄では解決できない問題ですが、その根元は、やはり、他者への不寛容、差別、無理解ではないでしょうか?私は、この映画を使って、英語学習としては、セリフの読み取りと聞き取りを主にやってきましたが、この、“他者への不寛容”という問題を自分のこととして考えてほしい、というのが私の願いでした。外見、年齢、職業、国籍、学歴、社会階層、その他による差別意識は、私たちの心の中にないでしょうか?多分無意識にそれらの差別意識は、私達の心理の中にあり、それをある程度当然のこととしているのではないでしょうか?この、一見地味ではあるけれども、観るべき優れた映画である、ジョージ・スティーヴンス監督作品「アンネの日記」を皆で観ていろいろ考えたことは、決して無駄ではなかったと思います。

(参考資料)

  • Anne Frank. (1952) The Diary of a Young Girl (Bantom Books)
  • 小川洋子. (1995)    アンネ・フランクの記憶 (角川書店)
  • George Stevens‘ Production of The Diary of Anne Frank(1959)

USING BANKSY TO TEACH INFERENCES AND CONNOTATIVE MEANING IN THE EFL CLASSROOM


Barry Kavanagh (Tohoku University)

Banksy’s artwork continues to draw worldwide attention for its bold imagery, ironic humour, and socially charged themes. His pieces often comment on war, inequality, technology, surveillance, and the contradictions of modern life. Because these themes are both global and contemporary, they resonate strongly with university students and offer valuable opportunities for meaningful classroom discussion. Building on my previous January 2024 post that introduced Banksy as a topic for cultural discussion, I have recently designed a more focused set of lessons on two key academic language skills: making inferences and understanding connotative meaning. These are central to developing students’ analytical abilities and preparing them for more advanced reading and writing tasks in English.

The lesson begins with students analysing four well-known Banksy works: Girl with a BalloonLove Is in the AirWhat Are You Looking At?, and Mobile Phone Lovers. Students first share their immediate reactions, whether they find the artworks inspiring, confusing, unsettling, or beautiful. Many students have seen these images online, yet few have attempted to explain the messages behind them. By encouraging students to consider what Banksy might be trying to express, the activity naturally leads them into inference-making. They examine visual clues, think about current social issues, and connect what they see with their prior knowledge. For example, Mobile Phone Lovers often sparks conversation about the role of technology in relationships, while Love Is in the Air triggers discussions about violence, protest, and the symbolism of replacing a weapon with flowers. Students are encouraged to support their interpretations with evidence from the images, which helps them move beyond simple description toward more thoughtful inferences. After this visual analysis, the lesson shifts to language. At this point, I introduce students to the idea that words carry different layers of meaning.

Words have denotative and connotative meanings. The denotative meaning is the direct, literal definition, the basic sense found in a dictionary. Connotative meaning, on the other hand, includes the feelings, associations, and emotional or cultural implications that people attach to a word. These connotations shape how language is interpreted and influence the tone of writing or speech. Understanding this distinction is crucial for students as they begin to evaluate and express opinions in English.

Students then work with a list of adjectives grouped into positive, neutral, and negative connotations. They use words like inspiringintriguingcontemporarychaoticrepulsive, and dull to describe the four artworks and explain their choices. This activity not only expands their vocabulary but also deepens their ability to recognise how subtle shifts in wording can change the impact of an opinion. Banksy’s artwork is particularly well suited to this task because it evokes such diverse reactions—some students find it deeply meaningful, while others find it confusing or even childish. These contrasting interpretations make connotation work engaging and authentic.

The next stage of the lesson involves reading two short passages presenting opposing viewpoints about Banksy. One passage praises his work for being expressive, socially relevant, and thought-provoking; the other criticises it as superficial, gimmicky, or overly sensational. Students answer comprehension questions designed to help them identify how each writer uses connotative vocabulary to influence the reader’s perception. Analysing these passages highlights the subtle ways language communicates attitude and bias.

Finally, students reflect on which passage they agree with and explain why. They must apply both inference-making and connotative vocabulary as they discuss their own judgments of Banksy’s work. This final step encourages students to articulate their viewpoints clearly and confidently, aligning with MEXT’s emphasis on developing internationally minded graduates who can think critically and express themselves effectively in English.

Overall, Banksy’s visually striking and socially relevant artwork provides a rich, motivating context for developing key academic language skills. With carefully structured scaffolding, students can engage deeply with both language and contemporary issues, ultimately enhancing their analytical, expressive, and communicative abilities.

YouGlishで単語やフレーズの理解を深めよう 

中村佐知子 東北大学 

2022年7月の東日本支部だよりでも紹介したこちらのウェブサイト。 

YouGlish 

https://youglish.com/ 

YouGlishは、YouTube上で実際に使われている単語やフレーズを検索できる便利なウェブサイトです。私は学生に、単語やフレーズを学習する際には辞書で意味を調べるだけでなく、YouGlishでも確認することを薦めています。また、私自身も日常的に活用しています。今日はこのYouGlishの活用法を3つご紹介します。 

  1. 学習した単語やフレーズの「使われ方」を確認する 

たとえば、プレゼンテーションで使われるこのフレーズをYouGlishで検索してみましょう。 

“The purpose of this presentation is”  

https://youglish.com/pronounce/the_purpose_of_this_presentation_is/english

すると、主にプレゼンテーションの冒頭部で目的を明確に述べる場面で、このフレーズがよく使用されていることが分かります。単に「このフレーズを使いましょう」と紹介するだけではなく、実際の使用場面を学生が目で見て耳で聞くことで、より鮮明な使用のイメージを持てるようになるでしょう。 

  1. アメリカ英語とイギリス英語の違いを確認する 

上部にある「US」「UK」などのボタンをクリックすると、主にそれぞれの国のアクセントを使う話者の動画を表示できます。たとえば “library” の発音を「US」と「UK」で比較してみましょう。 

library (US) 

https://youglish.com/pronounce/library/english/us

library (UK) 

https://youglish.com/pronounce/library/english/uk

「US」では「ライブラリー」と発音する話者が多いのに対し、「UK」では「ライブリー」という発音が多いことに気づくでしょう。学習者の興味のスイッチはどこに隠れているか分かりません。このような興味深い知識を共有することが、英語学習への関心を高めるきっかけになることもあります。 

  1. イントネーションやストレスを確認する 

YouGlishはイントネーションやストレスを確認するのにも最適です。たとえば、ヘッジ表現(断定を避ける際の表現)のひとつである “It seems to me that” を取り上げてみましょう。まずは、まずはこの文を音読してみてください。 

It seems to me that the situation is more serious than most people realize. 

次に、YouGlishで “It seems to me that” を検索し、このフレーズのイントネーションとストレスの位置を確認します。 

“It seems to me that” 

https://youglish.com/pronounce/%22it_seems_to_me_that%22/english

多く話者が “me” の部分にストレスを置いていることに気づくと思います。ここには「ほかの人がどう思うかは別として、少なくとも自分にはこう思える」というニュアンスが含まれています。これは「It seems to me thatは断定を避ける際に使います」と説明するだけでは決して伝わらない、実際の発話から得られる生きた情報です。 

Nation (2001) は、単語を知るということは形(form)・意味(meaning)・使い方(use)といった複数の側面を含む複雑なプロセスであると述べています。語彙やフレーズを学習する際には、ただ文字を見て意味を覚えるだけではなく、YouGlish などの動画ツールを活用し、発音・イントネーション・使用される場面も含めて確認することを心がけたいです。 

参考文献 

Nation, I. S. P. (2001). Learning Vocabulary in Another Language. Cambridge University Press. 

タイトル: わかりやすい、伝わりやすい英語とは?

滋賀県立大学 濱上桂菜

英語で話してください。と言われると身構えてしまいませんか。

習った表現が思い出せなかったり、こんな表現でいいのかな、と思ったり。

今回はそんな皆さんが安心できるような例を I, Robot (ウィル・スミスの大ヒット映画、2004年)から紹介します。

この映画では、科学者と警官の間で面白い会話がいくつもあります。

まずは、研究室に来た警官が、どんな研究をしているのか科学者に尋ねたシーンを見てみましょう。

科学者(以下、科): I specialize in hardware to wetware interfaces in an effort to advance USR’s robotic anthropomorphization program.

警官(以下、警): So, what exactly do you do around here?

科: I make the robots seem more human.

警: Wasn’t that easier to say?

科学者の最初の発言は、難しい専門用語ばかりです。

警官がもう一度「で、実際ここで何をしているんだ?」と尋ねたあとの回答、

「ロボットをもっと人間らしくしています。」の方がよっぽどわかりやすいですね。

(実際に「その方が言いやすいって思わないのか?」とツッコミが入ります。)

実際に、警官はロボットの専門家ではありません。

専門家ではない人に説明するときは、その人が理解しやすいように説明するのがコミュニケーションの基本です。ですので、このシーンでは、本来は専門用語を使わずに、「ロボットをもっと人間らしくしています。」のように、シンプルでわかりやすい表現を使うべきですよね。

この会話は、映画では笑うところですが、

しかし、意外にも私たち英語学習者がやってしまいがちな問題を教えてくれているようにも思うのです。

専門用語まで使うことはなくても、私たちは英語を一生懸命話そうとして、思わず難しい単語を並べてしまっているかもしれません。

本当はもっとシンプルで伝わりやすい表現があるかもしれないのに!

もう一つ例を紹介しましょう。

次の会話では、Sonnyという特別なロボットについて研究者が警官に説明しています。

科: You’re not going to believe this … Sonny has a secondary processing system that … clashes with his positronic brain.

警: It doesn’t make any sense.

科: Sonny has the three laws, but he can choose not to obey them.

The three laws (三原則)とは、「人に危害を加えない」、「命令に従う(第一原則に反しない限り)」、「自己を守る(第一、第二原則に反しない限り)」という原作著者が唱えた原則です。(なかなか奥深い原則ですので、興味がある人はぜひその解釈の問題点について調べてみてください。)

Sonnyもその原則に従うものとされていますが、しかし「それを破ることもできる」。

それを伝えるための科学者の最初の説明の難しいこと!

それに対して、後の説明の方がわかりやすく、伝わりやすい。

シンプルバージョンの方を見ると、私たちも学習者として安心しませんか?

そう、会話では、まずはシンプルな英語を目指したらいいんだと思えてきますよね。

この映画には、このような科学者と警官の面白いやりとりが他にもいくつかあります。

科学者の「難しいバージョン」 vs. 「シンプルバージョン」の対比ができますのでぜひ探してみてください。

説明動画付き英語教育統計分析ウェブサイト

スプリング・ライアン(東北大学)

言語学や英語教育の分野では、データを数値化し、実験や調査の結果を統計的に検証することで、議論をより確かなものにすることが重要です。例えば、アンケート調査を行った際、得られた結果が偶然によるものかもしれません。しかし、データを数値化し、統計分析を行うことで、その結果が本当に自分の仮説を支持しているかどうかを客観的に判断することができます。こうした分析を通じて、客観性が高まり、質的分析と併用することで、研究全体の信頼性も向上します。

一方で、多くの外国語教育者は数学者でも統計学者でもありません。そのため、統計分析の実施に困難を感じる方も少なくないようです。どの検定を使えばよいのか、結果をどう報告・解釈すればよいのか、あるいはデータをより詳細に分析するにはどの手法が適切なのか、判断に迷う教育研究者も多いのではないでしょうか。

そこで、統計分析オタクである私が、言語教育者や言語教育研究者のために、説明動画付きの統計分析ウェブサイトを作成しました:

日本語版

https://springsenglish.online/stats/index_jp.php

英語版

https://springsenglish.online/stats

言語教育を研究されている方に必要とされる主要な統計検定は、ほぼ網羅されています。それぞれの検定を選択すると、ウェブ上で簡単にデータを入力し、無料で分析を行うことができます。「計算」ボタンを押すと、論文やプレゼンテーションに引用可能な形式で結果が表示され、解釈文も自動的に出力されます。

また、本ウェブサイトでは、誤った検定を選ばないよう、さまざまな工夫を施しています。まず、各検定には簡潔で分かりやすい説明と選択基準が記載されており、判断に迷った場合には(?)マークが表示されます。このマークをクリックすると、動画と補足説明が表示されます。動画では、私自身が言語教育の具体的な事例を用いながら、やさしく解説しています。私自身もかつて、統計分析において誤った検定を選んでしまった経験があります。その際、文章だけでは理解しづらく、動画で視覚的に学ぶことで理解が深まったことが多々ありました。そうした経験を踏まえ、皆さんにも分かりやすく学んでいただけるよう、丁寧な動画コンテンツを提供しています。

さらに、検定を選択した後には、計算を実行する前に、データが正規分布に従っているかどうかなどの事前チェックが行われます。チェック結果に応じて、適切な検定が自動的に選択され、分析が実施されます。最終的には、どの検定が選ばれたのか、そしてその選択理由についても、明確な説明が出力される仕組みになっています。

今度の発表、論文に向けて、皆さん、是非、試してみて頂ければと思います。

英語教材としてのアメリカ映画の魅力

斎藤珠代(東北学院大学)

映画はとても良い英語の教材になると思いますが、様々な洋画の中でも私はアメリカ映画をよく使います。振り返ると大学時代、多くの映画を観ていました。フランス映画なども気に入って小さな映画館を巡ったりしていたものです。以前、あるフランス文学の先生と話していた時「映画が好きなんです」とおっしゃったので愚問かな、と思いつつも「映画って、フランス映画ですか?」とお聞きしたところ「当り前じゃないですか!ハリウッド映画なんか馬鹿らしくて観てられますか!」とのこと。アメリカ映画のあまりにもシンプルなハッピーエンドの構成に苦笑してしまう人も多いのでしょう。ですが、ある時ディズニー映画の『ムーラン』を見て私は意外なほど感動し、「シンプルだけど、これで良いんじゃないか」と思うようになりました。アメリカ映画に開眼した瞬間でした。

その後、多くのアメリカ映画が神話の型を踏んでいることを知るようになります。詳しくは、ATEMジャーナルの30号に拙稿「教室におけるディズニー映画の魅力―アメリカニズムにとどまらないディズニーの価値―」としてまとめましたが、神話には古今東西の人間を感動させるストーリーの型があるのです。それを踏んでいるわけですから、多くの人がアメリカ映画に感動するのは当然とも言えるでしょう。その最大のものが「英雄の旅」で、これは主人公が日常の世界を離れ、試練を経験し、最後にまた故郷に戻り仲間を救うという3ステップの型です。実に、『スターウォーズ』や多くのディズニー映画などのヒット作がこの型を基に編まれています。

私は感動的な映画を観た後は、That makes my day.という気持ちになります。「今日はこの映画を観たからよい一日だった」と。私が人生に一番求めているのは「感動」なのかもしれません。そして、私は学習にも感動が伴うのが理想的だと考えています。どうせ勉強するなら感動があったほうがいい。私のこのポリシーには科学的根拠を求めることができそうだということに最近気づきました。感情が大きく動くときに学習効果が上がるということが脳科学で知られているらしいのです。嫌々ながら勉強しても、授業の後何も覚えていないけれど、心を躍らせながら聴いた話ははっきり覚えている。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。薬学者・脳研究者の池谷裕二氏は人間の記憶力を強化するLTPという現象を起こすには脳のシータ波と扁桃体がキーとなると言っています。シータ波は対象に興味を持っているときに出るそうです。そして扁桃体は喜怒哀楽などの感情が生まれる場所です。面白い映画を興味を持って鑑賞し、喜怒哀楽を強く感じれば、その時に脳はシータ波が出ている状態になり、扁桃体の神経細胞も活動しているはずです。その意味では、大きな感動を伴うアメリカ映画を観て心を動かされながら聴いた英語は頭に強く焼き付くと言えるでしょう。アメリカ映画を使った授業にモチベーションを上げるのみでなく記憶に残るという効力もあると私は考えています。

最後に、私にとって印象に残っている場面を一つご紹介したいと思います。『ムーラン』において体を壊してしまった父親の代わりに秘かに男装して徴兵に応じ、軍隊に入る父親思いの娘、ムーラン。軍隊の中で女性であることを隠しながらも隊長に思いを寄せるようになります。その隊長の父親にあたる将軍が戦死する場面で、周りの隊員は隊長を気遣って、彼を一人にします。ここにはアメリカの価値観である「相手が助けを求めない時には助けない。もし求めていないのに助けの手を差し伸べたら相手の自立という観念を否定することになる」という心的態度が隠れていると考えられます。一人になった隊長は地面に積もった雪に刀を立て、その上に亡くなった将軍の兜を載せ、一人で父親の弔いの時間を持ちます。その時ムーランが恐る恐る近づき、ためらいがちに “I’m sorry.”と一言だけ言うのです。「ごめんなさい」以外の「残念です」の I’m sorry。ここでもしI feel sorry for you.「あなたが気の毒です」と言ってしまったら相手の自立という大切な概念を打ち砕いてしまいます。I’m sorryの使い方がよくわかる場面です。文化も含めたコンテクストのなかで言語を学習できる映画という教材は大きな可能性をもっていると感じたシーンでした。

日々の生活の中で心を動かされる映画に出会い、それを授業で学生と共有すること——それは私にとって、教える仕事の醍醐味の一つでもあります。そうした出会いは、私自身にとっても多くの気づきをもたらし、文化の多様性、そして普遍性について改めて考える契機となっています。

映画『天国から来たチャンピオン』に見る音楽と魂の結びつき

原田知子(武蔵野音楽大学)

映画『天国から来たチャンピオン』(Heaven Can Wait)は1978年に制作されたアメリカ映画です。監督のウォーレン・ベイティ(当時の表記はビーティ)が主役を務め、明るいアメリカン・フットボール選手を溌剌と演じています。大学1年の時、英語劇の仲間からこのノベライズ本を借り、生まれて初めて英語の本を夢中で読む経験をしました。その意味でも思い出深い作品ですが、現在、音楽大学で英語を教え、端唄を演奏する者として、映画に描かれた音楽と魂の深い結びつきに改めて心を惹かれています。

主人公のジョーは交通事故に遭い、天国への中継地で目を覚まします。ところが実は、新人天使の手違いで予定より早く命を奪われ、本来の死は50年後だったことが判明します。ジョーは天使長とともに地上に戻りますが、体はすでに火葬されていました。そこで、ジョーは代わりの体を探す羽目になります。

ジョーと天使長は大富豪レオの屋敷を訪れ、殺害されたばかりのレオを発見しました。ちょうどそこに、環境保護運動家のベティがレオの会社による公害に抗議しに来ます。ジョーはベティを助けるため、レオの体を一時的に借りることにします。会社の部下や使用人たちは、レオの言動の変化や、他人には見えない天使長と話している様子に戸惑いますが、レオ(の中のジョー)は環境を守る方針を次々と決定していきます。レオを悪徳経営者とばかり思っていたベティは驚き、二人は互いに惹かれていくのでした。

ジョーはレオの体を鍛えてフットボールの試合に出るため、昔馴染みのフットボール・トレーナーのマックスを屋敷に呼びます。自分がジョーであると主張するレオの話をまったく信じないマックスでしたが、レオのサックスを聞いた瞬間、彼の魂がジョーであることを悟ります。

ジョーは試合に出場できることになりますが、なんとここでレオの体を使える期間が尽きたことを天使長から告げられます。ジョーはベティに、いつか、きみを知っているように見える人が現れるかもしれないと言い残します。レオの体を失ったジョーは試合に出られるのか、再び別の体に入ったジョーにベティは気づくのか。ぜひ映画でご覧ください。

この映画では、サックスの音色が、単なる楽器の響きを超え、まさにジョーの魂そのものとして描かれています。姿形が変わっても、その音色こそがジョーの本質を伝え、昔馴染みのマックスに彼の存在を確信させます。また、後のほうでは、ある人物の体からジョーの魂が去ったことにマックスが気づくシーンがあり、それもサックスへの無関心が決め手になっていました。

生前のジョーはソプラノ・サックスを吹いていましたが、注目すべきは、死後のジョーが魂の姿になってもなおサックスを手にしている描写です。これは、音楽がいかに彼の魂と不可分であり、彼自身のアイデンティティの中核を成しているかを象徴しています。音楽がその人の魂そのものであるという描写は、単なるプロットの一部にとどまらず、音楽に携わる人々の心に響きます。劇中で流れる美しいサックスのメロディーと相まって、深く心に残ることでしょう。

映画『ワンダー 君は太陽』(原題Wonder)に見ることばの力

渡邊 信(麗澤大学外国語学部)

英語学を専門としており、ことばについて考えるのが好きです。洋画や海外ドラマも子どものころからずっと好きでしたが、沈んだ時に励ましてくれることばや、困った時に導いてくれることばに、何度出会ったかわかりません。気に入ったセリフの意味を静かに考えていると時間を忘れてしまいます。

数年前、ゼミの学生が『ワンダー 君は太陽』(2017年、監督: スティーヴン・チョボスキー、原作: R・J・パラシオ)という作品を紹介してくれました。素敵なことばがたくさん使われている作品です。今回はこの作品から印象的な言葉をいくつか紹介させていただきます。*2025年5月時点ではNetflixで視聴できます。英語音声はありますが、残念ながらサブタイトルは日本語のみです。

簡単にストーリーを紹介します(詳細はこちら)。主人公のオギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は10歳、ミドルスクールへの入学を控えています。顔に遺伝性の特徴があり、これまで何度も手術を受けてきました。家族は、母イザベル(ジュリア・ロバーツ)、父ネイト(オーウェン・ウィルソン)、姉ヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)そしてワンちゃんのデイジーです。ヴィアは入退院を繰り返す弟オギーの世話で忙しい両親に迷惑をかけないように生活している一方、内面では孤独を抱えています。母からホームスクーリングを受けてきたオギーが、「普通」の学校(いわゆるプレップスクール)に通うことになり、家族や友達、理解のある先生たちに支えられながら、いじめなど多くの困難を乗り越え成長していく1学年間が描かれています。

物語には、トゥシュマン校長(マンディ・パティンキン)、担任のブラウン先生(ダヴィード・ディグス)、オギーの友達のジャック(ノア・ジュープ)とサマー(ミリー・デイヴィス)、姉の親友ミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)、そしていじめっ子のジュリアン(ブライス・ガイザー)や、同級生のシャーロット(エル・マッキノン)など、さまざまなキャラクターが登場します。それぞれの視点や役割が物語に深みを与えています。

印象的な言葉①: 正しいことより、親切を選べ

When given the choice between being right or being kind, choose kind.

(正しいことより、親切を選べ*)

*この訳文は原作小説の日本語訳(翻訳:中井はるの)からおかりしました。ほかのセリフの日本語訳はネットフリックスのサブタイトルを筆者が改変しました。

入学初日、生徒たちを教室に迎えるブラウン先生が板書した「9月の格言(September Precept)」です。ブラウン先生は毎月違う格言を子どもたちに考えさせます。そして、”Who do I aspire to be?”(人としてどうあるべきか?)と問い続けることの大切さを説きます。

ブラウン先生は子どもたちに「9月の格言を読みたい人?」と尋ねます。多くの子どもたちが元気よく“Me, me”と手を挙げますが、サマーだけは躊躇しています。気づいた先生は彼女に優しく語りかけ、格言を読むよう促します。サマーはゆっくりと読み始め、“… choose kind”と締めくくると、満足げににっこりと微笑みます。

勇気を持って誰かを正さなければならない場面ももちろんあると思います。差別的な発言やいじめ、ハラスメントなどに直面した時などです。でも、私自身を振り返ると、会議で自分の意見に固執してしまったことなどが思いだされます。個人的には、そうした過ちを反省し、将来の戒めとしてこのことばを心に留めておきたいと思います。

この「9月の格言」は、心理学者ウェイン・W・ダイアー博士 (Wayne Dyer)の言葉に由来するようです。完全に一致する表現は見つけられませんでしたが、ダイアー博士のホームページには「あなたを傷つけた人を許す」ためのステップの一つとして、“Be kind instead of right”(正しさより親切を選ぶ)の重要性が論じられています。

印象的な言葉②: 勇気について

Courage is what it takes to stand up and speak. Courage is also what it takes to sit down and listen.

(立ち上がって話すには勇気がいる。座って聞くにも勇気がいる)。

ホームルームの入り口に貼られたポスターに書かれている格言です。この言葉は、自分の意見を表明することの大切さだけでなく、他人の発言に注意深く耳を傾けることの重要性も伝えています。一般的には、ウィンストン・チャーチル元英国首相の言葉とされていますが、諸説あるようです。

私にはこの格言は、オギーの姉ヴィアを象徴しているようにも思えます。ヴィアは、弟オギーに両親の注意が集中していることを理解し、自分を抑えることで両親の負担にならないよう努力しています。その結果、知らず知らずのうちに自己主張を控えるようになりましたが、他人の話を注意深く聞くことに長けています。この格言は、ヴィアの内面の強さや、彼女が持つ「聞く勇気」を示す伏線とも読めるのではないでしょうか。

ヴィアの「聞き上手」は以下のジャステイン(演劇部での活動を通じて知り合ったヴィアのボーイフレンド)とのやりとりに明確に表れています:

Justine: Um, I can’t figure you out. Most theatre people won’t stop talking about themselves. But you don’t talk.

Via: I… I listen.

Justine: Me, too.

Via: I know.

Justine: Oh. So you do pay attention. Okay, that’s a start. Uh…I’m a good listener so tell me something. Who are you gonna audition for?

このシーンでは、Viaの控えめな性格と、他人の話をよく聞くという彼女の特性が際立っています。そして、その「聞く」姿勢こそが、彼女の内面的な強さや勇気を象徴しているように感じられます。この場面を通じて、他者を受け入れ、耳を傾けることが、いかに重要で尊いかが改めて伝わってきます。

印象的な言葉③:顔の特徴について

We all have marks on our face. This is the map that shows where we’ve been and it’s never, ever ugly.

母親イザベルが他人と違う顔の特徴に悩む息子オギーに語りかける場面です。人の顔の特徴はその人が歩んできた道程の証であり、決して醜いものではないと伝えます。映画全体のテーマである「外見の違いを受け入れ、内面に焦点を当てる」というメッセージを象徴するこの言葉は、オギーに安心感と自信を与えると同時に、作品を見る私たちにも外見にとらわれずおたがいの内面に目を向けることの大切さを訴えかけています。

印象的な言葉④:見方を変える

 Auggie can’t change how he looks. Maybe we should change how we see.

(オーギーは自分の見た目を変えることはできません。だから、私たちが見方を変えるべきなんです。)

この言葉は、トゥシュマン校長がオギーへのいじめ(ひどい似顔絵などの嫌がらせ)を続けたジュリアンとその両親に告げたものです。ジュリアン自身は反省の言葉を口にするのですが、母親は息子を理不尽に擁護し、結果としてジュリアンは転校することになってしまいます。

この後にジュリアンの登場シーンはありませんが、原作者R.J.パラシオは2022年に『ワンダー』の続編となる小説『ホワイトバード』を発表し、このいじめっ子ジュリアンを主要人物として描いています。2023年にはマーク・フォースター監督によって映画化もされています。この続編では、ジュリアンが祖母サラ・ブルームから第二次世界大戦中の体験を聞くことで、共感や優しさ、そして勇気について学ぶ姿が描かれます。ユダヤ人であるサラは、ナチス占領下のフランスで、家族や自分が迫害された経験を語ります。彼女の話では、命を懸けてサラをかくまい、助けた人々の勇気ある行動が強調されており、それはジュリアンに、優しさや人間性が持つ力強さを深く伝えるものとなっています。この物語は、ジュリアンが歴史の悲劇を理解するだけでなく、彼自身の価値観を揺さぶり、いじめや他者への態度について考え直すきっかけを与える重要な教訓となっていきます。

印象的な言葉⑤:行いが記念碑

MR. BROWNE: Your deeds are your monuments. Archaeologists found these words inscribed on the walls of an ancient Egyptian tomb. Can anybody tell me what they mean? Summer?

Summer: Oh, uh…I think it means that the things we do are the things that matter most.

ブラウン先生がYour deeds are your monuments(あなたの行いがあなたの記念碑です)という格言を紹介し、古代エジプトの墓に刻まれていたこの言葉の意味を子どもたちに問います。指名されたサマーは少し戸惑いながらも、「私たちの行いが最も大切だという意味だと思います」と答えます。このセリフは、人の価値は見た目や地位ではなく、日々の行動に表れるという映画のテーマをやさしく伝えていると思います。

印象的な言葉⑥: 本当の偉大さとは

The final award this morning is the Henry Ward Beecher medal to honor students who have been notable or exemplary. Usually, it’s a “good works,” a service award. But I came upon a passage that he wrote, which made me realize that good works come in many forms. “Greatness,” he wrote, “lies not in being strong, but in the right using of strength. He or she is the greatest whose strength carries up the most hearts by the attraction of his own.” Without further ado, this year, I am very proud to award the Henry Ward Beecher medal to the student whose quiet strength has carried up the most hearts. So, will August Pullman please come up here to receive this award?

長いですがトゥッシュマン校長の修了式でのスピーチです。クライマックスに向けて、オギーに栄えある「ヘンリー・ウォード・ビーチャー・メダル」が授与されます。校長はメダルの名称の由来となったビーチャー牧師の言葉を引用し、こう説明します。「偉大さとは、ただ強いことではなく、その強さを正しく使うことにあります。その人自身の魅力によって多くの心を引き上げることができる人こそが、真に偉大なのです。」「静かな強さ」で多くの人々の心を動かしたオギーの姿が、この言葉にぴったりと重なり、感動的な場面となっています。

印象的な言葉⑦: 人をいたわれ。みんな闘っている。

Be kind, for everyone is fighting a hard battle. And if you really wanna see what people are, all you have to do… is look.

人をいたわれ。みんな闘っている。相手を知りたかったら、やることは1つ。よく見ること。

作品を締めくくる、オギーの印象的なナレーションです。ブラウン先生が子どもたちに贈った最後の格言として紹介されており、すべての人がそれぞれの事情を抱えながら懸命に生きており、だからこそ、互いに思いやりを持って接することの大切さを説いています。

この格言に呼応する形で、本作にはオギーの視点だけでなく、姉ヴィア、ヴィアの親友

ミランダ、母親イザベル、そしてオギーの友達ジャックなど、さまざまな登場人物の視点から描かれた場面があります。彼ら一人ひとりが、それぞれの事情や葛藤を抱えながら生きており、その多様な視点を通じて、「親切さ」の本質が浮き彫りにされています。

なお、Be kind, for everyone (that you meet) is fighting a hard battleという言葉が誰のものかについては諸説があります。いずれにせよ、類似した表現が時代を超えて伝わり、多くの人の共感を呼んできたのでしょう。

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『ワンダー 君は太陽』のような魅力的な映画を授業に取り入れることで、英語学習の楽しさを広げる可能性が期待できると感じます。本作品に登場する印象深いセリフの数々は、学びにおいて特別な瞬間を生み出し、心に残る体験を提供することでしょう。このような映画を活用した英語教育は、学習者に多様な学びの機会を提供し、単なる言語習得を超えた豊かな経験をもたらす力を秘めていると思います。これからも皆さまとともにアイデアを共有しながら、映像を活用した英語教育の可能性をさらに探求していきたいと思います。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

【参照文献】

Palacio, R. (2013). Wonder. Corgi Childrens.

Palacio, R. (2015). 365 Days of Wonder Mr. Browne’s Precepts. New York: Alfred A. Knopf.

Palacio, R. (2023). White Bird: A Wonder Story. Penguin Books Ltd.

パラシオR.J. (2015). 『ワンダー』. (中井はるの, 訳) ほるぷ出版.

【映画】

Chobosky, S. (Director). (2017). Wonder [Motion Picture].

Forster, M. (Director). (2024). White Bird [Motion Picture].

【ウェッブサイト・ウエッブページ】

Dyer, W. W. (2025, 1 10). How To Forgive Someone Who Has Hurt You: In 15 Steps. (Hay House, Inc) Retrieved from DrWayneDyer.com: https://www.drwaynedyer.com/blog/how-to-forgive-someone-in-15-steps/

International Churchill Society. (2023, January 17). Quotes Falsely Attributed to Winston Churchill. Retrieved from Internal Churchill Society: https://winstonchurchill.org/resources/quotes/quotes-falsely-attributed/

Quote Investigator. (2010, June 29). Quote Origin: Be Kind; Everyone You Meet is Fighting a Hard Battle. Retrieved from Quote Investigator: https://quoteinvestigator.com/2010/06/29/be-kind/

キノフィルムズ. (2025年1月10日). 映画『ワンダー君は太陽』公式サイト. 参照先: http://wonder-movie.jp/

記憶に残る授業

竹原文代 (神田外語学院)

1990年頃の話です。大学の必修英語の授業で先生から突然『映画を観てメタファーを学びます』と言われ、単に映画を楽しむのではなく意識的にメタファーを探しながら観るという経験を初めてしました。なぜ必修英語で映画を使うのか、二十歳そこそこの未熟者だった私にはテキストを使わない授業があまりに斬新で少し戸惑いを覚えました。さらに、その映画がイタリア映画だったこともあり(英語字幕でしたが)、戸惑いは次第に不信感へと変わりかけました。

教える立場になり思うのは、先生は単に教科書の内容を口頭で説明するのではなく学生の興味を引きながら知識を記憶に定着させる方法を模索していたのではないか、ということです。必要な情報や定義はテキストに書いてありますが、それを単なる試験対策ではなく一生の財産として記憶に落とし込むことこそが教える側の腕の見せどころです。しかし、『これから知識を定着させるために…』などと前置きしてしまえば、まるでマジックの種明かしをするようなもの。ワクワクやドキドキがなくなり印象にも残らなかったでしょう。

その先生が男性だったことは覚えていますが、名前も顔も思い出せません。しかしながら映画を使ってメタファーを教わった授業のインパクトが30年以上経った今でも蘇るという点でその授業は大成功だったと言えます。

授業で使用した映画は1988年公開の『ニュー・シネマ・パラダイス』(Nuovo Cinema Paradiso)でした。ご覧になったことのない方も、エンニオ・モリコーネが作曲した劇中曲を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

この映画を観たことのない方、または昔観たことがあるけど見返していない方へ、少し脱線しますがまた観たくなる(かもしれない)情報を共有します。

① 劇場版ではなく完全版をお勧めします。この映画は、少年期・青年期・成人期と一人の男性の人生を描いています。しかし劇場版では、成人期の重要なシーンがカットされており、大切な人との再会が描かれていません。

② メタファーが至る所にあります。キーワードは『マリア像』『鐘』『広場(と犬)』『悪天候(不吉な予兆ではなく、効果的に心情を表しています)』、そして『ほつれた毛糸』です。

話を戻しましょう。

皆さん、ご自身の学生生活を振り返って、思い出せる授業はいくつありますか? 印象に残っている授業で一番古い記憶はいつのものでしょうか? それはどんな授業でしたか?

私はこの授業の他にもいくつか忘れられない授業がありますが、共通するのは五感に強く訴えかけるものがあったこと、そして感情が大きく揺さぶられたことです。

映画や動画を授業に活用するのは、こうした点で非常に有効だと実感しています。どのように使ったら効果的か、タイミングやさじ加減をどうするか。より良い授業を目指して、これからも試行錯誤し続けたいと思います。