第8回映画英語教育学会(ATEM)東日本支部大会プログラム

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【開会の辞/総会】 10:00~10:15(ATEM会員のみ)
【休 憩】 10:15~10:20 (5分間)
※ 研究発表につきましては、質疑応答・発表者交替の時間も含めての時間表示になっております。
【研究発表】 10:20~12:00  
1. 大月 敦子 (専修大学)10:20~10:45
「幼児・児童英語母語話者の『Be動詞』の語法文法について」
本研究では、映画英語の『Be動詞』コーパスを作成している。特に現在は、幼児・児童の英語母語話者を中心に分析を進めている。『Be動詞』は意味的に最も抽象度が高い動詞であるが、進行形や受動態の文法的用法に使われる頻度が高く、それ以外は、定型表現的用法が多数を占めていることが分かってきた。そこでそれらの分析と共にアニメ映画「ミスター・インクレディブル」“The Incredibles” (2005) の『Be動詞』コーパスを紹介しながら、文法・語法の視点から発表する。

2. 清澤 香 (国際基督教大学)10:45~11:10
「クリティカル・シンキングの授業導入」
クリティカル・シンキングはTESOL等の幅広い分野で用いられる頻度の高いトピックの一つであるが、今回は、YouTubeからの動画を使った授業冒頭での導入を紹介する。このアクティビティを通して、クリティカル・シンキングとは何かを考え、論理的思考に基づく問いかけの姿勢を意識させることを目指す。

3. 塚田 三千代 (映画アナリスト・翻訳家)11:10~11:35
「『映画と文化データベース Movie and Culture Database (略称:MCDB)』について」
MCDBの内容、アクセス方法を紹介します。
URL:http://home.a03.itscom.net/mtart/index.html 他。
参加者はスマホ対応携帯電話、またはi-phoneをご持参ください。

4. 藤田 久美子 (進学塾トーマス講師・元白梅学園大学講師) 11:35~12:00
「映画 『ブルックリン』 (2015) に描かれた一人の移民女性の成長と自立」
『ブルックリン』は、第二次大戦後間もない1950年代に、希望に満ちた未来を求めて、新天地アメリカ(ニューヨーク)へと渡った一人の若いアイルランド人女性を主役に、彼女が、新しい環境の中での様々な苦労を経験しながら、アメリカ市民として生きていく人生を選んでいくまでの過程を描いている。本発表では、彼女の成長の意味を考え、同時に、原作にも触れながら、当時の移民とはどのようなことであったのかを考えたいと思う。

【昼 食】 12:00~13:00 (60分間)

【基調講演】 13:00~14:30
講 師:  角山 照彦  広島国際大学看護学部教授
講演タイトル:  映画・ドラマを活用した英語テキスト開発
― Learn English with “Titanic” 出版までとこれから ―
≪講演要旨≫
本講演では、映画やドラマといったオーセンティックな映像素材を活用した英語テキスト開発における実際の制作過程や必要となる手続きについて解説すると共に、今後のテキスト開発の方向性や課題について触れる予定である。映画英語教育を実践している教員の中には、その実践で得られた成果や知見を学会で発表するだけでなく、開発教材をテキストとして出版したいと願う人も多いことであろう。しかし、映画会社との権利許諾処理など映画特有の手続きがあり、通常のテキスト開発と比べ往々にして敷居が高くなっている。そこで、教材開発に関心を持つ教員向けに、筆者が試行錯誤の末、映画『タイタニック』を活用した英語テキストであるLearn English with “Titanic” を出版するに至るまでの過程を紹介する。また、同書を例にとりながら、「総合教材」という側面が強い映画の活用法を昨今のキーワードである学力の多様化やアクティブラーニングへの対応に焦点を当てて提示していく。

【休 憩】 14:30~14:40 (10分間)
【研究発表】 14:40~15:35

5. 【招聘】 小林 敏彦 (小樽商科大学大学院)14:40~15:10
「現実の英語と映画の英語の9の相違点:音声、語彙構文、語用論的特徴の比較」
映画の英語が現実の映画で使われる英語とは同一でないことは、誰もが認めるところであるが、本発表では、何がどの程度異なるかを、音声的、語彙構文的、語用論的特徴に着目し、以下9の相違点を特定する:音声的特徴(発音が明確である、標準語で話されている、流暢で言い間違いがない)、語彙統語的特徴(コミュニケーション方略がない、語彙選択が的確、政治的に正しい語彙選択)、語用論的特徴(意味が明白、発話中の自己修正がない、対話が誤解なく進む)。これらの特徴は、エンターテーメントとしての媒体であるがために、必然的に発生するものであるが、各実例を、You-Tubeと映画の場面を提示して比較する。映画を日々授業で活用している教員は、現実の英語との相違点を理解し、学習者に系統立てて伝えることが大切であると考える。

6. 吉田 雅之 (早稲田大学)15:10~15:35
「歴史言語学からみた人名表記」
日本人は欧米の人名表記をする際に、なるべく原語に忠実であろうとするので、「英語読み」とは別のカタカナ表記が人名の場合には存在し、そこにヨーロッパ各国語の特色を垣間見ることができる。また歴史文化面をさかのぼった場合にも、メディアを通じて我々は多民族・多文化を背景とする映像にごく普通に接しているため、キリスト教やギリシア・ローマ神話にさかのぼる人名は当然として、それ以外の影響も英語圏のメディア・コンテンツの中で垣間見ることができる。今回の発表では英語で人名に接した場合にも確認できる各国語の特徴を、歴史比較言語学・音声学・正書法をからめつつ、探っていきたい。一例としては、『ファインディング・ニモ』の「ニモ」をさかのぼりつつ、関連映像・関連表現に言及する。

【休 憩】 15:35~15:40 (5分間)

【研究発表】 15:40~16:55
7. 小泉 勇人 (東京工業大学) 15:40~16:05
「ウディ・アレン映画で英語教育のススメ ―Magic in the Moonlight における魔法の正体―」
映画を使用する英語授業においては、どのような作品を選択し、どの場面を学習に用いれば良いかという課題がある。この課題は、学習者の興味関心を高め、学習動機付け強化の可能性を探る上で取り組み続ける意義があるだろう。授業の目的により作品/場面選択の多様性がある一方で、本発表が作品/場面選択の基準とするのは、英語学習への効果のみならず、学習者にとって知的な刺激となる問(学術的な問)が投げかけられている作品であるか、そしてその作品における物語構造に極めて重要な意味を持つ場面であるかどうかである。その基準を踏まえた上で本発表が授業への導入を提案する作品は、ウディ・アレン監督によって製作された一連の作品群である。発表ではまず、多くのアレン監督作品に共通する特質を分析しながら、映画英語教育においてアレン作品を採用する意義について論じる。次にケーススタディとして『マジック・イン・ムーンライト』(Magic in the Moonlight, 2014)を取り上げる。この作品を授業で用いる際にどの場面を選択できるか、どのように物語の分析を行い、それを適宜紹介することで学生の興味関心を高めることができるのかを検討する。とりわけここでは、この作品を通じてアレンが観客側に投げかける刺激的な問の一つ、「果たして優れているのは、人間の知恵の結晶とも言える奇術/手品か、生まれついての才能である魔法/霊能力のどちらか」を中心に論じる。

8.清水 純子 (慶応義塾大学) 16:05~16:30
「シネマデータベース構築の留意点と使用方法」
映画は、内容の完成度の高さと話題性において、授業用映像の王者である。『シェヘラザードのシネマデータベース』は、映画を英語教師および映画研究者向けの最もわかりやすい資料として、手軽に無料で閲覧できるネット上の媒体である。本発表は、格調の高さと都会的センスで注目度の高い『ニューヨーク映画批評家協会賞』(New York Film Critics Circle Awards)「作品賞」82本を作成した経験をふまえて、シネマデータベース構築の留意点とその使用法について披露する。

9. 日影 尚之 (麗澤大学) 16:30~16:55
「食の映画で学ぶことばと文化 ―『マダム・マロリーと魔法のスパイス』 (The Hundred-Foot Journey, 2014) の場合」
 高校生が大学での学びを知るための「出張講義」の教材として、高校1~2年生を対象に作成した内容について紹介する。具体的作品としては、食に関する多くの映画のうち、今回は『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(The Hundred-Foot Journey, 2014)について考えたい。インドから欧州に来た移民やフランス人が英語を話す設定なので、ネイティブではない日本の英語学習者と多少共通点があるかもしれない。この映画の監督ラッセ・ハルストレムは北欧出身だが、アメリカにも進出して映画を作成しており、食とhome(故郷)および母親の記憶など、同監督の『ギルバート・グレイプ』(What’s Eating Gilbert Grape, 1993)や『ショコラ』(Chocolat, 2000)などとも比較すると興味深いと思う。

【休 憩】 16:55~17:05 (10分間)
【研究発表】 17:05~17:30
10. 【招聘】 藤枝 善之 (京都外国語大学・短期大学) 17:05~17:30
「The定冠詞! ―映画で英文法を楽しむ―」
作品のタイトルでThe Godfatherは頭に定冠詞が付くのに、Titanicは無冠詞になっている。これはなぜだろうか? 英語のノンネイティブが直感で答えられない問いに、ネイティブ・スピーカーがDVDの特典映像で「懇切丁寧に」答えてくれる。しばしば、聞き手が初めて遭遇するもの(新情報)に話し手がtheを付けるが、それはなぜだろうか? 映画のいくつかのシーンを見ることで、その共通項をあぶり出してみたい。また、「特定のものにtheを付ける」という伝説は本当だろうか? I am like a flame in the rain. — Sabrina のthe rainは特定の雨を指すのだろうか? 本発表では、映画を楽しみながら、謎だらけの定冠詞の核心に迫りたい。

【閉会の辞】 17:30~17:40

≪懇親会≫ 参加を希望される方は、受付にてお申し出ください。
時間:18:00~20:00
場所:CHINADOLL 新宿アイランドタワー店
参加費:4,000円 ☆中華コース飲放題付き☆(受付時にお支払いをお願いいたします。)
≪ATEM会員募集≫
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