字幕アプリで英語を勉強しよう

吉牟田聡美(ATEM東日本支部、活水女子大学)

昨今は、自宅で観たい映画を選び楽しめる時代になりました。コロナ禍で外出を自粛せざるを得ない日々になって一層Amazon Prime VideoやNetflix, YouTube等々の動画配信サービスで映画を楽しむ機会が増えたのではないでしょうか。世界中の映画やテレビ番組を無尽蔵に観られるのですから、英語の勉強に活用しない手はありません。

 本コラムでは、動画配信サービスを外国語学習に用いる方法について考察してみます。ATEMにつながる映画・動画の専門家の方々は、既にご存じかと思います。どうか御笑覧ください。

 今回、外国語学習の一助として紹介するのは、私がAmazon Prime Videoを視聴する学生に紹介しているSubtitles for Language LearningというGoogle Chrome のextensionアプリです。Chrome上でダウンロードして無料で使用できます。

 このアプリに備わっている主な機能は、低速から二倍速までの再生速度変更、10秒早送り・巻戻し再生、言語字幕表示、表示タイミングの調整、辞書と連携した語義の表示、AI翻訳によるセリフの戻し訳等々です。

 二倍速再生は(真の映画ファンには邪道と怒られそうですが)一本の映画を短時間で観る際に用いて概略をつかみます。

 低速再生や10秒巻き戻しは、聞き取りの難しい部分に使います。脳内で聞こえた単語をタイプで打ち出すように強く認識しながら視聴します。私はこれを『脳内ディクテーション』と読んでいます。巻き戻しは「あ、今のセリフ何と言った?」という時、即時強化できます。

 字幕表示機能は、Prime Videoで映画の字幕版を選び、このアプリで映画字幕を表示させれば、映画は日本語字幕、アプリで英語字幕とひとつの画面に二言語の字幕表示が可能です。これは今まで高価な再生ソフトでしかかなわなかったので、画期的です。

 表示のタイミングを調整する機能も秀逸で、二秒程度遅く字幕を表示するように設定すれば脳内ディクテーションの答え合わせを即時に行えます。また、二秒先に再生すれば、目で見た英単語句の発音を確認することができます。

 辞書機能では、字幕の英単語の上にマウスオーバーさせれば、意味が自動表示されます。

 最後に、このアプリが表示するセリフにはDeepLとGoogle翻訳のアイコンがついているのでクリックすればセリフの直訳(機械翻訳)へと導いてくれます。

このように、本アプリには言語学習に有益な機能が満載なのですが、懸念のひとつは、こうした動画配信サービスでは字幕翻訳・吹替翻訳を担当した翻訳者名が明示されないことです。

 今回、DVDの戸田奈津子氏の字幕と同一の翻訳であるかどうか『ドリームガールズ』(2007年日本公開)で検証して、一貫して戸田氏の訳が使用されていることが判明しました。市販のDVDと同一の可能性が高いとしても、留意すべき点かと思われます。

 最新のアプリを使ったところで映画を聞き流して脳が活性化しなければ意味がありません。映画を用いた言語学習ストラテジー(オクスフォード、1990年)注1)が必要となるわけです。一本の作品の気に入っているシーンを含む10分程度のパートを音声と字幕の組み合わせを変えながら何度も視聴することを学生には勧めています。日本語音声ー日本語字幕、日本語音声ー英語字幕、英語音声ー日本語字幕、英語音声ー英語字幕などです。私もかつて『ハリーポッターと賢者の石』(日本公開2001年)をレンタルして一週間違う組み合わせで視聴し、返却するころにはラストシーンのセリフをイギリス英語の発音でそらんじていました。

 学習者の適性にもよりますが、一般的には多くの言語材料を一度にインプットするよりも、むしろ繰り返し同じ刺激を与えたほうが記憶には効果的かと思います。

 

 また、上で述べた視聴中のセリフの脳内ディクテーションは聴覚の集中力を高め、聞こえた英単語句の答え合わせは即時強化の強化子となり次へのモチベーションにつながると予想されます。またセリフ集を手元に置き、聞き取れなかったところに印を付け、再度聞き直すというアクションは地味ですが有効なストラテジーです。

 またリスニングだけではなく、アプリの字幕を2秒程度先に見ながら登場人物になったつもりでオーバーラップやシャドーイングすると目、耳、口という三つの感覚器官を使う刺激的な訓練になります。ある研究によると、字幕の先行表示と字幕の精度を比較した時に、前者が後者よりも内容理解の正確さを高める要因となるという結果が出ています(下郡他、2010年)。

 つまり、上手な字幕がタイムリーに表示されるより、下手な字幕でも先に表示されたほうが内容をより理解できるということです。字幕の先行と遅延表示、どちらが合うか試してみてはいかがでしょうか。

 本コラムで述べたAmazon Prime Video以外の配信サービスでも、同様の機能を有する言語学習アプリがあります。(例えば、NetflixにはLanguage Learning for Netflixなど)また複数の配信サービスで使用できるアプリもありますので、興味がおありでしたら環境に合うものを探してみてください。

【参考文献】

下郡信宏、池田朋男、関矢陽子:英語字幕による会議支援:字幕の制度と表示タイミングが理解に及ぼす影響, 情報処理学会研究報告, Vol. 2010-GN-75, No. 5, pp. 1-6, (2010).

Oxford, R. (1990). Language Learning Strategies: What Every Teacher Should Know. New York: Newbury House Publishers.

【注】

1.ストラテジーとは、レベッカ・オクスフォード(1990)が提唱する、言語学習効率向上のための直接的・間接的なコツである。例えば、直接的なストラテジーは、記憶を補強するのに連想法を使うなど。間接的なストラテジーは、仲間と励ましあいながら学習する、好きな俳優の作品を選びモチベーションを上げるなど。