Ought toの表す様々な感情

タイトル:Ought toの表す様々な感情
投稿者:衛藤圭一(京都外国語短期大学)

このコラムでは、学校英語などでshouldと似た意味とされることが多いought toの特徴について,映画などの英文を通じて見ていきたいと思います。従来、ought toとshouldは「忠告」や「義務」を表す点で共通しているものの、厳密に言えば、前者は決まり事などの客観的意味、後者は個人的意見のような主観的意味を表す点で異なると主張されてきました。一例として、Swan (1980)は(1)のような文では、客観的意味を表すought toの代わりに主観的意味のshouldを用いると不適格になるとしています。

(1) We ought to go and see Mary tomorrow, but I don’t think we will.(私たちは明日メアリーに会いに行かないといけないけど、私は行かないと思う。)

つまり、上の文でought toではなくshouldを入れると、「個人的に行かなければならないと思っているが私としては行くつもりがない」のように響き、but以下の主張と内容が矛盾することになります。

Close(1992)もSwanと同様に、以下のような棲み分けがshouldとought toに見られると述べています。

(2)
a. Applications should be submitted by March 31st at the latest.
(申込書は遅くとも3月31日までに提出されなければならない。)
b. You’ll have to make up your mind quickly. Applications ought to be in by tomorrow, and I doubt whether yours will arrive in time.(君は急いで願書を提出するかどうかを決めなければならない。願書は明日までに提出しなければならないが、早く決めないと願書の到着が間に合わないと思う。)

たとえば(2a)のshouldは単なる義務を表いていますが、(2b)のought toが表す義務には話し手の焦燥感や怒りといった感情を伴います。これは、ought toが義務を放置している点に注目を置いた表現であることから、「ぐずぐずするな」といった焦燥感や怒りなどの感情が生まれるためです。また、話し手が聞き手に早く遂行するよう促す場面では、shouldよりもought toが好まれるという趣旨の記述をCloseは行っています。その傍証として、ought toの使用例(2b)では先行文を通じて、締め切りが迫る中で応募を決めかねている聞き手に即断するよう促している点にご注目ください。

以上で述べた話し手の感情については、映画におけるought toの例でも観察することができます。(3)はため息をつきながら、救助隊である話者クルーズが中隊長ケイシーのふるまいを批判している場面ですが、ここではought toを用いることで話し手の焦燥感を表しています。

(3) I mean, you know I love Casey. But he ought to have more respect for Rescue Squad. (つまり、私がケイシーを好きなことは知ってるよね。でも、彼は救助隊にもっと敬意を払うべきですよ。)<00:12:29>
『シカゴ・ファイア』(Chicago Fire, Season 6, Episode 5, 2017)

Ought toが表す,話し手の感情は焦燥感だけではありません。たとえば次の例は話者ミッキーが「怒り」を露わにして責めている場面です。

(4) After all these years together, you don’t know what to do? You ought to be ashamed of yourself. Now, get out there and do it!(これまで何年も一緒にボクシングをしてきて、お前はどうしたらいいのかわからないのか?恥を知れ。さあ、ここから出て行って、戦うんだ!)<00:41:30>
『ロッキー 3』(Rocky III, 1982)

一方、下の(5)は別れて家を出ると告げた夫に対して、長年連れ添った話者Roseが涙を流しながら別の人生を送るよう告げている場面ですが、このような場合も妻の「悔しさ」や「悲しさ」といった感情を伴っているため、shouldよりもought toが好まれると考えられます。

(5) Well, maybe you ought to go on and stay down there with her. (じゃあ、そのままその女性と一緒に暮らした方がいいんじゃないの。)<01:19:28>
『フェンス』(Fences, 2016)

このように、ought toが使われる場合には、上記のような「話し手の感情」を伴う傾向があると言えます。もし映画を見ていて使用例を見つけたら、セリフが発せられる状況と話し手がどのような感情を交えて発話しているのかに注目してみてください。

Call for Presentations at the 2023 STEM Conference (2023年 STEM大会の発表応募)

Dear ATEM Members,
We are accepting calls for presentations at the 2023 STEM Conference, which will take place according to the following information:
ATEM会員各位、
姉妹学会STEMの2023国際大会への発表応募を募集しています。大会の詳細は下記の通りです。
Date: October 28th (Sat)
Venue: Kookmin University, Seoul (Korea)
Title: Equity, Responsibilities and the Future of Learning
Optional Tour: Oct. 29th (Sun.) Half-day tour in Seoul
We hope some of you will consider presenting, as it also affords you great international relations and the opportunity to submit to the STEM Journal.
STEM大会での参加により、国際交流ができ、STEM Journalへの投稿が可能となりますので、ご発表の程、是非、ご参考にしてください。
To apply, please fill out the Google Form below, by June 20th. I realize this is not much time, but the initial application is quite simple.
申し込む際は、6月20日まで、以下のGoogle Formを入力してください

ATEM西日本支部20周年記念大会 研究発表募集【 募 集 期 間 延 長 】

映像メディア英語教育学会(ATEM)
第20回ATEM西日本支部20周年記念大会
研究発表募集要項

2023年9月2日(土)に対面で「第20回ATEM西日本支部20周年記念大会」を京都外国語大学にて開催します。

1. 募集分野
ATEM西日本支部は、本大会での研究発表を募集します。本学会の趣旨に鑑み、英語教育、言語学、文学、文化研究、メディア研究、異文化コミュニケーション研究などの多様な専門分野から、映画や映像メディアの英語教育への活用を視野に入れた研究発表を募集します。

2. 応募要項
2.1 発表分野
研究発表:理論的、実証的な研究成果に関する発表を行う。
25分(発表20分+質疑5分)。
実践報告:授業実践やプロジェクト実施に関する発表を行う。
25分(発表20分+質疑5分)。
※著書の概要(説明)のみの場合は「研究発表」、「実践報告」のいずれにも該当しないものとします。
(出版社発表として著者が発表される場合については、事務局までお問い合わせください)。

2.2 応募資格
個人発表、共同発表共に、以下の(a)か(b)のいずれかに該当すること。
(a)ATEMの会員:2022年度までの会費を納入していること。(発表時に2023年年度の会費を納入していない場合は、研究発表費2,500円を支払うこと)
(b)未会員:研究発表費2,500円を支払うこと。
※プログラムに掲載する共同発表者すべてに適用します。

3. 応募要領
以下の項目を記載し、eメールにてご応募ください。なお、締切り後に選考を行い、申込者宛に事務局より採否の結果を7月中にeメールにて通知いたします。

*募集期間: 2023年3月20日(月)~2023年6月25日(日)
*申込先:ATEM西日本支部事務局 atemwestjp@gmail.com まで
*提出形式:ワードファイルに以下の記載事項を記入し、添付ファイルにて提出

<記載事項>
①氏名(日本語表記)
②Name(アルファベット表記)
③所属(大学院生の場合は「〇〇大学大学院」)
④連絡先eメールアドレス
⑤発表種別(「研究発表」か「実践報告」か選んでください。)
⑥使用言語(「日本語」か「英語」か選んでください。)
⑦発表タイトル(日本語で発表する場合、タイトルも日本語にしてください。)
⑧発表概要(日本語800字程度/英語400語程度)
(注)
発表タイトルは、漠然とした大きなタイトルではなく、映画や映像メディアを使って何をどう教えるのか、あるいは何がわかるのか等、発表の中身が見える具体的なものにしてください。
「発表タイトル」もしくは「発表概要」のいずれかに、対象となる映像メディアの種類(例:映画、TED、ニュースなど)や作品名・タイトル(例:Frozen, “To understand autism, don’t look away”など)を含めていただきますようお願いいたします(対象映画が複数ある場合は、代表的な映画を1つ選んで、「『タイタニック』などの用例を用いて・・・」などとしていただければ結構です)。

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About Applications for the 2023 Nishinihon Chapter Conference

Dear ATEM Members:

The 20th ATEM Nishinihon Chapter Conference will be held in person at Kyoto University of Foreign Studies on September 2nd, 2023.

1. Research areas
ATEM Nishinihon Chapter calls for papers focusing on the practical use of movies or multimedia for English education, based on various research areas such as language education, linguistics, literature, cultural research, media study and cross-cultural communication study.

2. Submission requirements
2.1 Presentation types
(1) Research presentation on theoretical or empirical studies (25 minutes, including 5 minutes of Q and A)
(2) Practical report on classroom activities or implementation of projects (25 minutes, including 5 minutes of Q and A)

Note: Presentations about a book (presenter’s work) do not fall under (1) or (2). If you would like to make a presentation about your book as a representative of the publisher, please e-mail the ATEM Nishinihon Chapter Office (atemwestjp@gmail.com ).

2.2 Eligibility
To be eligible to present, the presenter (or in a group presentation, all of the presenters) must be either
(a) or (b) below:
(a) An ATEM member who has paid the fiscal year 2022 (April 1st, 2022 – March 31st, 2023) membership fee. (Those who have not paid the fiscal year 2022 membership fee as of September 2 will pay 2,500 yen as the presentation fee. )
(b) A non-member who will pay 2,500 yen as the presentation fee.

3. Submitting a Proposal
When submitting a proposal, please provide the following information by an attached Word file to the ATEM Nishinihon Chapter Office (atemwestjp@gmail.com ). The submission period is from March 20th through June 25th, 2023. Notifications of accepted proposals will be sent via email in July.

①Name
②Affiliation
③E-mail
④Presentation Type (Research presentation/Practice report)
⑤Language (Japanese/English)
⑥Presentation Title
⑦Abstract(Japanese 800 letters; English 400 words)

1) Please specify your goals or objectives of your presentation in your title, for example, how you will use movies to teach what, or what you can find out through movies, etc.
2) Please include the types (film, TED, news report, etc.) and titles of the visual media relevant to your research.

Singularity―映画で学ぶ宇宙物理学(Interstellar, 2014)

タイトル:Singularity―映画で学ぶ宇宙物理学(Interstellar, 2014)
投稿者:井村誠(大阪工業大学)

シンギュラリティ(singularity)という言葉を最近よく耳にします。人工知能が人類の知能を超える転換期のことを指し、2045年にはそれによって予測不可能な事態が生じるだろうとも言われています。さてsingularityは「特異点」と訳されますが、何故そのような訳になるのでしょうか。この言葉は他の分野でも用いられます。数学では不連続で微分できない点のように、一般法則が成り立たない点のことを指します。1970年にフィールズ賞を受賞した広中平祐博士の研究は特異点に関するものでした。宇宙物理学ではブラックホールに特異点が存在すると考えられています。そこでは重力が無限大となって、物理法則が破綻してしまうことになります。そこで宇宙物理学の最前線では、そのような特異点を解消するために、一般相対性理論と量子理論を融合した統一理論(量子重力理論)が追究されています。

2014年に公開された『インターステラー』(Interstellar)では、現代宇宙物理学の研究が想像する宇宙の姿を垣間見ることができます。気候変動が進み人類の滅亡が迫り来る中、NASAは秘密裏に居住可能な別の銀河系惑星の探査を進めています。しかし何十万光年も離れた他の銀河系へと旅をするためには、ワームホールを通って時空を飛び越える必要があり、また巨大なブラックホールの超重力の影響で時間の進み方が異なるため、地球との時差が生じたりします。この映画の台詞の中から singularityが使われているシーンを見てみましょう。(字幕翻訳:アンゼたかし)

<01:05:41-01:06:08>
Cooper : Romilly, are you reading these forces?(ロミリー、重力は?)
Romilly : It’s unbelievable.(すごいぞ。)
Doyle : A literal heart of darkness.(まさに闇の奥だな。)
Romilly : If we could just see the collapsed star inside… the singularity, yeah, we’d solve gravity.(重力崩壊の中心「特異点」を観測できれば重力を解明できる。)
Cooper : And we can’t get anything from it?(観測は無理か?)
Romilly : Nothing escapes that horizon. Not even light. The answer’s there, just no way to see it.(なにも届かない。光さえも。答えは闇の中だ。)

この他にも数カ所singularityが登場しますが、いずれもブラックホールの中では理論上重力が無限となって、現在の物理法則では説明できなくなる限界が存在することを示しています。この映画はノーベル賞を受賞した理論物理学者のキップ・ソーン(Kip Thorne, 1941-)が製作総指揮を務めていることからも、きわめて科学的水準の高いScience Fictionであると言えるでしょう。

さてsingularityという言葉はもちろん「ひとつ」を表すsingleに由来しますが、singularを辞書で引くと「単数の」という意味の他に、「並外れた」「非凡な」「奇妙な」などの意味が出てきます。つまり「単数」というコアミーニングから「唯一の」→「独特な」→「風変わりな」という意味に拡張していったと考えられます。ですから、He is single. なら、「彼は独身だ」という意味ですが、He is singular. だと「彼は変わり者だ」という意味になるので注意が必要ですね。進化論で有名なチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin, 1809-1882)は、ビーグル号の航海記の中で、finchというスズメに似た鳥について、“These birds are the most singular of any in the archipelago.” と記しています。つまりその種において独特である(only one of the kind)ということです。このようにsingularityはユニークで極めて特殊な点ということで「特異点」という訳になったと考えられます。Singularityという言葉の意味についていろいろな角度からアプローチしてみました。その意味合いや語感を掴むことができたでしょうか。

ATEM西日本支部20周年記念大会 研究発表募集

映像メディア英語教育学会(ATEM)
第20回ATEM西日本支部20周年記念大会
研究発表募集要項

2023年9月2日(土)に対面で「第20回ATEM西日本支部20周年記念大会」を京都外国語大学にて開催します。

1. 募集分野
ATEM西日本支部は、本大会での研究発表を募集します。本学会の趣旨に鑑み、英語教育、言語学、文学、文化研究、メディア研究、異文化コミュニケーション研究などの多様な専門分野から、映画や映像メディアの英語教育への活用を視野に入れた研究発表を募集します。

2. 応募要項
2.1 発表分野
研究発表:理論的、実証的な研究成果に関する発表を行う。
 25分(発表20分+質疑5分)。
実践報告:授業実践やプロジェクト実施に関する発表を行う。
 25分(発表20分+質疑5分)。
※著書の概要(説明)のみの場合は「研究発表」、「実践報告」のいずれにも該当しないものとします。
(出版社発表として著者が発表される場合については、事務局までお問い合わせください)。

2.2 応募資格
個人発表、共同発表共に、以下の(a)か(b)のいずれかに該当すること。
(a)ATEMの会員:2022年度までの会費を納入していること。(発表時に2023年年度の会費を納入していない場合は、研究発表費2,500円を支払うこと)
(b)未会員:研究発表費2,500円を支払うこと。
※プログラムに掲載する共同発表者すべてに適用します。

3. 応募要領
以下の項目を記載し、eメールにてご応募ください。なお、締切り後に選考を行い、申込者宛に事務局より採否の結果を6月上旬にeメールにて通知いたします。

*募集期間: 2023年3月20日(月)~2023年5月28日(日)
*申込先:ATEM西日本支部事務局 atemwestjp@gmail.com まで
*提出形式:ワードファイルに以下の記載事項を記入し、添付ファイルにて提出

<記載事項>
①氏名(日本語表記)
②Name(アルファベット表記)
③所属(大学院生の場合は「〇〇大学大学院」)
④連絡先eメールアドレス
⑤発表種別(「研究発表」か「実践報告」か選んでください。)
⑥使用言語(「日本語」か「英語」か選んでください。)
⑦発表タイトル(日本語で発表する場合、タイトルも日本語にしてください。)
⑧発表概要(日本語800字程度/英語400語程度)
(注)
発表タイトルは、漠然とした大きなタイトルではなく、映画や映像メディアを使って何をどう教えるのか、あるいは何がわかるのか等、発表の中身が見える具体的なものにしてください。
「発表タイトル」もしくは「発表概要」のいずれかに、対象となる映像メディアの種類(例:映画、TED、ニュースなど)や作品名・タイトル(例:Frozen, “To understand autism, don’t look away”など)を含めていただきますようお願いいたします(対象映画が複数ある場合は、代表的な映画を1つ選んで、「『タイタニック』などの用例を用いて・・・」などとしていただければ結構です)。

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About Applications for the 2023 Nishinihon Chapter Conference

Dear ATEM Members:

The 20th ATEM Nishinihon Chapter Conference will be held in person at Kyoto University of Foreign Studies on September 2nd, 2023.

1. Research areas
ATEM Nishinihon Chapter calls for papers focusing on the practical use of movies or multimedia for English education, based on various research areas such as language education, linguistics, literature, cultural research, media study and cross-cultural communication study.

2. Submission requirements
2.1 Presentation types
(1) Research presentation on theoretical or empirical studies (25 minutes, including 5 minutes of Q and A)
(2) Practical report on classroom activities or implementation of projects (25 minutes, including 5 minutes of Q and A)

Note: Presentations about a book (presenter’s work) do not fall under (1) or (2). If you would like to make a presentation about your book as a representative of the publisher, please e-mail the ATEM Nishinihon Chapter Office (atemwestjp@gmail.com ).

2.2 Eligibility
To be eligible to present, the presenter (or in a group presentation, all of the presenters) must be either
(a) or (b) below:
(a) An ATEM member who has paid the fiscal year 2022 (April 1st, 2022 – March 31st, 2023) membership fee. (Those who have not paid the fiscal year 2022 membership fee as of September 2 will pay 2,500 yen as the presentation fee. )
(b) A non-member who will pay 2,500 yen as the presentation fee.

3. Submitting a Proposal
When submitting a proposal, please provide the following information by an attached Word file to the ATEM Nishinihon Chapter Office (atemwestjp@gmail.com ). The submission period is from March 20th through May 28th, 2023. Notifications of accepted proposals will be sent via email in early June.

①Name
②Affiliation
③E-mail
④Presentation Type (Research presentation/Practice report)
⑤Language (Japanese/English)
⑥Presentation Title
⑦Abstract(Japanese 800 letters; English 400 words)

1) Please specify your goals or objectives of your presentation in your title, for example, how you will use movies to teach what, or what you can find out through movies, etc.
2) Please include the types (film, TED, news report, etc.) and titles of the visual media relevant to your research.

学校英語と映画のセリフ:映画で学ぶ英語の気づき

タイトル:学校英語と映画のセリフ:映画で学ぶ英語の気づき
投稿者:石原健志(大阪星光学院中学・高等学校)

映像メディアを英語学習に利用することで、「気づき」の度合いが高まることが期待されます。「気づき」はことばの学習に大切な役割を果たします。例えば、細かい文法規則がいつまでたっても身につかないのは、その知識が単に「理屈」として知っているだけにとどまってしまい、コミュニケーションの中で「使える」知識にならないためだと言われています。文法規則の定着は、学習者本人の気づきが大切だと言われています。肯定文から疑問文への変化や、英文法の穴埋め問題のような機械的な練習をいくら繰り返しても、そこで身につくのは、単なる記号的なやり方にとどまってしまいます。意味のある英語学習には場面設定のある練習活動が不可欠です。本稿では、映画『ハリーポッターと賢者の石』(Harry Potter and the Philosopher’s Stone, 2001)を使用して、中学で習う英文法の規則と映画の実例を照らし合わせ、英語学習の「気づき」に果たす役割について述べていきたいと思います。

最近の中学校の英文法書は記述が大変充実しています。『中学英文法 Fine [改訂版]』(渡辺, 2021)ではThere構文のthere is / are …に続く要素について次のように書いてあります。

「~」には不特定の名詞が入る。the・所有格の人称代名詞(myなど)・指示代名詞(this / that)など特定のものを指す語は使われない。
×There is the cat on the sofa.
(『中学英文法 Fine[改訂版]』p.144)

このような記述が中学校の英文法の参考書に記載されていることは、ひと昔前には考えられなかったのではないでしょうか。我々が思っている以上に学校英語が扱う英文法の記述は充実してきているのです。

しかしながら、このような規則を提示されるだけではなかなか英語学習は進みません。実際に映画を観てみると、ここで書かれた規則に反するように見える例も見つかります。次のセリフは『ハリーポッターと賢者の石』からのものです。

Ron: It’s a chessboard.(チェス盤の上だ)
Harry: There’s the door.(ドアがあるよ)
Hermione: Now what do we do?(どうする?)
<02:01:16>

このセリフでは、一見、先ほどの説明に反するようにThere’s の後に定冠詞付きの名詞句the doorが続いています。このようなセリフに出会うことは、英語学習の気づきに繋がる絶好の機会です。参考書に書いてあることと違う例に出会うことができるのが、映画など映像メディアの醍醐味です。ここで「例外に出会ってしまった。だから学校英語は役に立たない」としてしまうのは学習の機会を逃していることになります。例えば辞書を引いてみるのはどうでしょうか。そうすることで、今回取り上げた映画のセリフにおけるthere’s the 名詞句と学校英語の参考書に書かれた説明との違いに気づく機会になるでしょう。

英語学習は「気づき」を繰り返すことで英文法の理解が深まり、英語を使った様々なコミュニケーションの中で英文法のルールを使えるようになっていくのです。そういう意味で映像メディアは「英語の気づき」の宝庫だと言えます。また、中学英文法は英文法の基本ですが、必ずしも簡単であるわけではありません。「基本≠簡単」です。分かったつもりの中学英文法も、映像メディアの実例を通じて見つめ直すことで、きっと新しい気づきがあるでしょう。

2022年度第19回支部大会のお知らせ(プログラム、発表概要および参加登録について)

第19回西日本支部大会が2023年3月5日(日)にオンライン(Zoom)で開催されます。大会プログラム、及び発表概要は以下をご覧ください。

第19回西日本支部大会_プログラム
第19回西日本支部大会 発表概要

ATEM会員の皆様には、大会前日に会員のメーリングリストを通じて、Zoom URLをお知らせしますので、参加登録は不要となります。会員登録はされず、当日参加を希望される方は次のサイトより、3 2日(木)12:00 までにご登録をお願いします。ご登録いただいた方に支部大会会場のZoom URLをEメールにて3月4日(土)にお知らせします。参加費は無料です。

https://forms.gle/gTpmLcotLx8Sktnf9

多くの皆様のご参加をお待ちしております。

2023年1月21日
ATEM西日本支部長
近藤 暁子

メディアでひもとくspeaking of Xとspeaking of Wとspeaking of Z

タイトル:メディアでひもとくspeaking of Xとspeaking of Wとspeaking of Z
投稿者:倉田 誠(京都外国語大学)

ちょうど一年前の2022年1月の「映像メディアと英語」で、speaking of X (SoX)について映画やTOEICや入試問題からの用例を紹介しました。映画やドラマなどの話の展開の速い会話では、Xの部分に多義性をうまく使って、全く別の話題に話をすり替えるという「我田引水」的な会話の荒業も可能であることにも触れ、それを便宜上SoXPと呼びました。XPのPは「polysemy(多義)」を表すという意味です。今回も標準的なSoXの(1)の例を示し、その後にその亜種である(2)のSoXPを再掲するところから話を始めます。

(1) Good morning, everyone. Remember how we had been concerned about meeting our monthly sales goal? Well, the new sweaters have all been sold. However, now the storage room is a mess and needs to be cleaned up—we have a lot of empty boxes and packaging in there. I’ve updated the duty roster with this assignment. And speaking of the roster, I know some of you are planning on being away soon for vacation. Please make sure I have your time-off request forms by the end of the week.
(公式TOEIC Listening & Reading問題集6 Test 1 Part 4 #83-85)

この問題文は、会議での上司社員による発言の抜粋という設定のモノローグです。セーターの売り上げ目標が達成されたものの、収納庫の散らかり具合に対処する業務当番表を更新したと言ったところで、「休暇願を出す人はお早めに」という展開になっています。下線部のrosterは両方とも当番表という意味で多義性はありません。よってSoXと分類します。

(2) Chuck : It’s a perfect marriage between technology and systems management.
Morgan : Speaking of marriage, Chuck, when are you going to make an honest woman out of Kelly?
『キャスト・アウェイ』(Cast Away, 2000) <00:15:33>

(2)はSoXPの例です。主人公のチャックは、婚約者のケリーの実家で、彼女の親戚とクリスマスディナーを食べています。食事をしながらチャックは、勤務するフェデラルエクスプレス社の最新の技術管理システムについて、雄弁に話をしています。ケリーの叔父のモーガンは、ケリーとなかなか結婚をしないチャックに焦燥感を抱いており、チャックが話の中で「融合」の意味でmarriageを使った瞬間を逃しませんでした。SoXPを使って原義である「結婚」の話題に引き込み、全員を爆笑させます。まさに多義性を利用した「我田引水」的会話の荒業です。

このようにSoX(SoXPを含む)は、具体的な語句をピンポイントに指しますが、1970年以降はspeaking of which (SoW) という別の変種のパターンの使用が急増しました。関係代名詞の非制限用法が、先行文脈をピンポイントではなく、広範囲に捉えることが可能なパターンです。

(3) Katherine : She is such a sweet girl. She’s saving money for college.
Karen : Speaking of which, where did Dave go to college?
『デスパレートな妻たち』 (Desperate Housewives, Season 5, Episode 3) (2008) <00:11:30>

詮索好きなカレンおばさんは、近所に住むイーディーの婚約者で謎の多い男デーヴの情報を聞き出すため、食事会に来ています。そのレストランのアルバイト女子大生のことを、キャサリンが「優しくてよい娘よ。アルバイト料金を学費の足しにしているの。」と言ったが早いか、カレンはSoWでデーヴの出身大学の話に転じます。SoWは先行情報を「ザックリ」と切り取ることができる点でSoXよりも簡便な表現方法と言えるかもしれません。

最後に、変数のXもWも何もない、SoZ(Zero)という形式を紹介します。このパターンは2000年以降から顕著にみられるようになったとされています。SoZはSoWよりも先行文脈をかなり広範囲に捉えることができるために、情報の関連性は若干希薄化される場合が多いとされます。(参考文献:『映画でひもとく英語学』(pp.40-41))

(4) Martin : … All the while, a whole generation of Swedes simply skirted the issue by never getting married in the first place. Thank you. Speaking of, have you all met my lovely wife, Ruth?
『ビリーブ 未来への大逆転』(On the Basis of Sex, 2018) <00:39:25>

(4)では、弁護士のマーティンがパーティーで、弁護士仲間とスウェーデン人が結婚しないのは、結婚税という変な税金があるからだと雄弁に語っています。その時に、妻で弁護士のルースが飲み物を持ってきます。マーティンはSoZを使って、スウェーデンの結婚の話題から転じて、自身の配偶者であるルースの紹介にスムーズに切り換えます。話題の関連性はそれほど強くないかもしれませんが、結婚つながりの話題転換となります。

SoXもSoWもSoZも速い会話の中で使いこなすのはかなり難しいと思います。就中、多義を操るSoXPという亜種の我田引水の荒業は、映画やドラマのセリフの離れ業だと思いますが、英語を生業とする私たち教員はスパッと使ってみたいものですね。

第 19 回 西 日 本 支 部 大 会 研 究 発 表 募 集 要 項 【 募 集 期 間 延 長 】

第19回西日本支部大会(オンライン)を2023年3月5日(日)に開催します。ついては、下記の要領で研究発表を募集します。
ATEM Nishinihon Chapter calls for presentations for the 19th ATEM Nishinihon Chapter Conference to be held online on March 5th, 2023.

<応募要領>以下の項目を記載し、eメールにてご応募ください。なお、締切り後に選考を行い、申込者宛に事務局より採否の結果を2023 年 1月 末 にeメールにて通知いたします。(詳細はこちらをご覧ください。☞ 募集要項

* 募集期間:2022年10月1日(土)~2023 年 1月 15 日 ( 日 )
* 申込先:ATEM西日本支部事務局(神戸親和女子大学・田畑圭介研究室内)まで
Email: tabata@kobe-shinwa.ac.jp
*提出形式:ワードファイルに以下の記載事項を記入し、添付ファイルにて提出
*発表形態:Zoomによるライブ発表(ただし、発表枠の都合によりオンデマンド発表をご依頼する場合もあります)

<記載事項>
①氏名(ふりがな)
②所属
③連絡先メールアドレス
④発表種別
⑤発表題目
⑥使用言語
⑦発表概要(日本語800字程度/英語400語程度)

<Submission Procedure>
When submitting a proposal, please send the following information with an attached Word file to the ATEM Nishinihon Chapter Office (tabata@kobe-shinwa.ac.jp). The submission period is from October 1st through January 15th, 2023. The review result will be sent via email in late January 2023.(For more details, please refer to the Submission Guideline

① Name
② Affiliation
③ E-mail
④ Presentation Type
⑤ Presentation Title
⑥ Language
⑦ Abstract(Japanese 800 letters; English 400 words)

第19回西日本支部大会研究発表募集 Calls for Presentation at the 19th Chapter Meeting

第19回西日本支部大会(オンライン)を2023年3月5日(日)に開催します。ついては、下記の要領で研究発表を募集します。
ATEM Nishinihon Chapter calls for presentations for the 19th ATEM Nishinihon Chapter Conference to be held online on March 5th, 2023.

<応募要領>以下の項目を記載し、eメールにてご応募ください。なお、締切り後に選考を行い、申込者宛に事務局より採否の結果を12月下旬にeメールにて通知いたします。(詳細はこちらをご覧ください。☞ 募集要項

* 募集期間:2022年10月1日(土)~ 2022年12月11日(日)
* 申込先:ATEM西日本支部事務局(神戸親和女子大学・田畑圭介研究室内)まで
Email: tabata@kobe-shinwa.ac.jp
*提出形式:ワードファイルに以下の記載事項を記入し、添付ファイルにて提出
*発表形態:Zoomによるライブ発表(ただし、発表枠の都合によりオンデマンド発表をご依頼する場合もあります)

<記載事項>
①氏名(ふりがな)
②所属
③連絡先メールアドレス
④発表種別
⑤発表題目
⑥使用言語
⑦発表概要(日本語800字程度/英語400語程度)

<Submission Procedure>
When submitting a proposal, please send the following information with an attached Word file to the ATEM Nishinihon Chapter Office (tabata@kobe-shinwa.ac.jp). The submission period is from October 1st through December 11th, 2022. The review result will be sent via email in late December.(For more details, please refer to the Submission Guideline

① Name
② Affiliation
③ E-mail
④ Presentation Type
⑤ Presentation Title
⑥ Language
⑦ Abstract(Japanese 800 letters; English 400 words)