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映画を観ながら、文章読解も取り入れる授業~「アンネの日記」(ジョージ・スティーヴンス監督)について~

藤田久美子(進学塾TOMAS講師・元白梅学園大学講師)

私が大学で英語講師をしていた頃には、映画が最良の教材だと考えて、かなり多くの映画を使用してきましたが、「どんな映画をどんな意味で使ったらよいのか」、また、「どんなやり方で教えるのが良いのか」等の問題はいつも考えていた問題でした。

私は言語学や英語教育の専攻ではなく、関心を持っているのは文学や歴史、さらに言えば、文学に描かれる人間関係なので、使用する映画は「文学的意味を持つもの、何らかの問題を提起するもの」であって相当優れたものを、と考えていました。しかも対象となる学生は、児童教育や地域支援などを専攻する人達だったので、そうした彼らの専攻を考慮する必要もあると考えて、「家族関係」や「家庭の中の子供の問題」等を扱ったものも使いました。

学生に好評で、何度も使った映画の中に、「アンネの日記」がありました。この映画は、元々第二次大戦中のナチスドイツ占領下のアムステルダムで、極めて不自由な狭い隠れ家暮らしを強いられたアンネ達(アンネの家族と、別の家族、さらに家族ではない男性の合計8人)の姿を描くもので、アンネの書いた実際の日記に基づいて映画化され、演劇としても何度も上演された有名な作品ですが、学生達は、名前は知っていても映画は観たことがないので、大変楽しみにしていたようでした。そうは言っても、私の使ったのは、50年以上前に公開されたモノクロの映画で、しかも上映時間は3時間余りと長く、重要な問題を扱ったものであるとは分かっていても、果たして教材として適当なのか、と心を悩ませたものでした。

しかしそうした私の心配も、映画の内容と表現の迫力が学生達を圧倒したようで、結局杞憂に終わりました。

さて、この映画の特徴はどんなところにあるのでしょうか?主人公のアンネは、確かに

家族と共に、普通ならとても暮らしてなどいけない狭い場所に隠れて暮らさねばならず、しかも、下の階は普通の会社が入っているので、昼間は、その人々に分からないように、じっとしていなくてはなりませんでした。改めて考えてみると、大人だって大変な状況を、わずか13歳のアンネとペーター、それにアンネの姉のマーゴットは、耐えたのです。アンネは特に積極的で活動的な性格の少女でした。そのアンネが、また、アンネの家族(父、母、マーゴット、アンネ)とペーターのファンダーン一家、さらに、歯医者の中年男性であるデュッセルと共に生活しながらも、時にいらいらして諍いをすることはあっても、心理的に変調を来たしたり、発狂したりすることは決してなかったのです。ですから、この映画は、決して声高に反戦を叫び、惨たらしい戦場の場面を見せることなく、しかし明らかに、何の罪もないのに、犠牲を強いられたユダヤ人家族の、極めて不自由ではあるけれど、淡々とした、節度ある、信仰に基づいた生活を描いていくものなのです。そうであるが故に、益々彼らの悲劇が(勿論アンネの家族以外にも、大勢の人々が同じ運命に会いましたが)私たちの胸に迫るのです。

そうした明らかに異常な、時にはひもじさに苦しみ、普通ならとても我慢が出来ないような生活の中でも、主人公のアンネは、少しずつ肉体的にも、心理的にも成長していきました。

初めの内、思春期の少女にありがちなように、彼女は母親に多少反発しており、父親を慕っていました。それは、この映画の中では、アンネが、友達のザンネが収容所に入れられ、ただ死を待つだけ、という恐ろしい夢を見てうなされ、それを母親が慰めようとするのに、アンネは、母よりも父に傍にいてもらいたいと言って、母を悲しませる、という場面に現れています。そして、この場面は、アンネの日記の中では、次のような表現で描かれています。

日記のなかでは、友達の名前はザンネではなく、リース(Lies)となっています。実際はそうだったのでしょう。

  Oh, God, that I should have all I could wish for and that she should be seized by such a terrible fate.  I am not more virtuous than she; she, too, wanted to do what was right, why should I be chosen to live and she probably to die?  What was the difference between us?  Why are we so far away from each other now?

母を傷つけてしまう幼いアンネですが、同時に、幼いながら、このようなことが考えられるとは、人間として素晴らしいことだと感じます。彼女自身辛い生活を強いられながら、“私は望むもの全てを持っているのに、彼女(リース)は、こんな過酷な運命に捕らえられているなんて・・・”と、アンネは友達のことを本当に真剣に憂いています。映画の場面とは多少違いますが、実際の日記には、アンネの心情がはっきりと述べられているので、他の箇所も含めて、これらの何か所かを読解のために使いました。

ペーターの父であるファンダーン氏が、ひもじさに耐えかねて、ただでさえ少ないパンを盗んで、アンネの母から酷く非難され、ここから出ていってほしい、と言われる切ない場面などもあり、彼らの暮らしが如何に限界ギリギリのものであったかがわかるのですが、そのような時にも、アンネの父のオットーが冷静に皆を説得して、気持ちを落ち着かせるのが印象的です。

アンネ達のいる場所は、彼らの隠れ家となった屋根裏部屋で、外に決して出ることの出来ない彼らの生活は単調だと思いがちですが、“自分たちの存在を絶対に知られてはならない”という彼らの心理的及び肉体的緊張が、観る者に十分感じられ、階下の会社に泥棒が入った時や、猫のムーシが何かから飛び降りた音を、見回りのゲシュタポに聞かれた時には、“万事窮す!”と思って、息をのむことになるのです。彼らの隠れ家は、遂にゲシュタボの知るところとなり、皆それぞれナチスの収容所に送られていくのだ、ということを知っていても、私たちは、彼らが命の危機に会いそうになるたびに、彼らとともにスリリングな緊張感を味わうことになるのです。本当に、ジョージ・スティーヴンス監督は、アンネが日記に記した実際に起きたことを、第一級の優れたサスペンスに仕上げたと言えるでしょう。

アンネとペーターは、初めの内は、悪口を言いあったりしていましたが、やがてその距離を縮めていきます。アンネは将来の夢をペーターに語り、二人はお互いに最も理解し合える存在であると思うようになります。アンネが、精一杯のおしゃれをして、ペーターの部屋を訪れる場面は、如何にも思春期の女の子らしく、微笑ましい場面です。

連合軍によるノルマンディー上陸作戦が始まったことをラジオで知り、皆はもう少しの辛抱だとお互い励まし合いますが、同時に、近くの店や住まいから、人々が次々と連れ去られていく様子も隠れ家の窓から見えるのです。そしてアンネとペーターは益々距離を縮め、二人はよく誰も来ない屋根裏部屋へ行って、お互いの考えを伝えあいます。アンネの次の台詞は、素晴らしいものです。

 When I think of all things out there, trees, flowers and those seagulls,
  When I think of the dearness of you, Peter, and the goodness of the people we know,
  Mr. Kraler and Miep, the vegetable man, all of them risking their lives for us every day,
  When I think of these good things, I’m not afraid anymore.  I find myself…and God, …
  We’re not the only people that have had to suffer.  There have always been people that
  have had to.  Sometime one race, sometime another.
  I still believe in spite of everything that people are really good at heart.

この瞬間、ゲシュタボの車がサイレンを鳴らして近づいてきて、アンネ達の隠れ家があるビルの前に止まります。アンネとペーターはしっかりと抱き合い、隠れ家の皆は、大騒ぎもせず、観念していたかのように、日頃から準備していた自分のリュックを手にとります。それは1944年8月4日のことでした。その後、隠れ家の皆は、それぞれの場所(収容所)に送られていきます。アンネと姉のマーゴットは、初めの2か月はアウシュヴィッツで、母と一緒に過ごせましたが、その後、二人はベルゲン・ベルゼン収容所に送られ、劣悪な環境の中でチフスに罹り、まずマーゴットが、次にアンネが1945年3月頃に亡くなりました。ベルゲン・ベルゼン収容所が、イギリス軍によって解放されたのは、そのわずか後の4月15日の事でした。

アンネのような運命を辿った少年少女は、他にも沢山いたでしょう。また、ナチスの収容所に送られたのはユダヤ人だけではなく、社会主義者や同性愛者なども多くいました。そして、現在では、このような酷い迫害の歴史を経験したユダヤ人の国家であるイスラエルが、パレスティナの人々に対して相当酷いことをしているのも事実です。一体民族の対立、宗教的対立とは、何なのでしょう?大昔から存在する一筋縄では解決できない問題ですが、その根元は、やはり、他者への不寛容、差別、無理解ではないでしょうか?私は、この映画を使って、英語学習としては、セリフの読み取りと聞き取りを主にやってきましたが、この、“他者への不寛容”という問題を自分のこととして考えてほしい、というのが私の願いでした。外見、年齢、職業、国籍、学歴、社会階層、その他による差別意識は、私たちの心の中にないでしょうか?多分無意識にそれらの差別意識は、私達の心理の中にあり、それをある程度当然のこととしているのではないでしょうか?この、一見地味ではあるけれども、観るべき優れた映画である、ジョージ・スティーヴンス監督作品「アンネの日記」を皆で観ていろいろ考えたことは、決して無駄ではなかったと思います。

(参考資料)

  • Anne Frank. (1952) The Diary of a Young Girl (Bantom Books)
  • 小川洋子. (1995)    アンネ・フランクの記憶 (角川書店)
  • George Stevens‘ Production of The Diary of Anne Frank(1959)

ATEM(映像メディア英語教育学会)東日本支部 

2025年度 第16回 ATEM(映像メディア英語教育学会)冬季支部大会プログラム

〔例会日時〕 2025年12月20日(土)

〔会場〕神田外語学院 10号館 4階 401教室
東京都千代田区内神田2丁目13-13(本館住所)
(千葉県の幕張にあります「神田外語大学」とお間違いのようご注意ください)

JR神田駅(中央線・山手線・京浜東北線)から徒歩2分
東京メトロ銀座線神田駅から徒歩3分

※駅から10号館までの地図はこちらのプログラムの最後のページをご参照ください。

〔開催形態〕 対面開催(発表は会場で行います。オンライン発表はありません)

・遠隔参加する聴講者向けに、リアルタイム中継(配信)を行います。
・対面開催で実施するため、発表者は会場にお越しください。聴講につきましては、会の盛況のためにもなるべく会場にお越しいただけましたら幸いです。
・聴講につきましては、会の盛況のためにもなるべく会場にお越しください。

オンラインで参加される方は、以下のGoogle formsにてご登録ください [12月18日(金)23:59まで]。後日ZoomのURLをお知らせします。

→学会参加・事前登録URL: https://forms.gle/r6B22RXBwtFt7n9S6

〔懇親会〕支部大会の後に懇親会を予定しております。(事前予約制)
参加ご希望の方は、こちらの懇親会参加フォーム(Google forms)にて申し込みください[12月15日(金)23:59まで]。

→懇親会参加・事前登録URL: https://forms.gle/HxGjRWEqLbFJfCkE9

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▼スケジュール

9:3010:00 受付 & 発表者リハーサル(希望者) 

10:0010:05 開会挨拶  

10:05–10:35 発表1(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「映画『ワンダー 君は太陽』に見ることばの力英語授業を通じた人間力育成の試み―」
渡邊 信(麗澤大学)

10:35–11:05 発表2(発表20分+ QA5分 + 入れ替え5分
「外国人が感じる日本の音」
関口 美緒(メリーランド大学、東京科学大学)

11:05–11:35 発表3(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
“Filmmaking and Adaptation as Iterative Practice”
Alec McAulay(Yokohama National University)

11:3512:05 昼休憩 

12:0512:30 総会 

12:30–13:00 発表4(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
“Google Scripts for Creating Video-Integrated Speaking Tasks”
Ryan SPRING(Tohoku University)

13:00–13:30 発表5(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「YouTube動画教材の開発と有効性検証:教材デザイン理論に基づくアプローチ」
中村 佐知子(東北大学)

13:30–14:00 発表6(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
“Reimagining Film-based ELA Pedagogy with Generative AI: Exploring Use Cases for Night at the Museum”
Makito Kawata(Kanda University of International Studies)

14:00–14:30 発表7(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「ソフィア・コッポラ監督 Marie Antoinette (2006) に見える『メディア文化』」
塚田 三千代(翻訳、日本ペンクラブ電子文藝館委員)

14:3014:45 休憩 / Break(15分)

14:45–15:15 発表8(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「英語教材としてのカットシーン―句動詞とその関連表現を題材に―」
三村 仁彦(帝塚山大学)

15:15–15:45 発表9(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「映画にみる日米の文化的無意識 ― 異文化理解教育への応用 ―」
斎藤 珠代(東北学院大学)

15:45–16:15 発表10(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「アメリカ文化と西部劇の伝統ー映画『ノー・カントリー』(No Country for Old Men, 2007)の場合」
日影 尚之(麗澤大学)

16:15–16:45 発表11(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「子どもの発話コーパスCHILDES の音声・映像データを使った up/down 研究への試み」
濱上 桂菜(滋賀県立大学)

16:4516:50 閉会の挨拶 

16:5017:20 役員会

17:3018:00頃 懇親会  

■ 発表に際しての留意点

1. スライド構成について

動画や音量、スクリーン反映などの機材トラブルにより、意図した形で発表ができなくなる事例が見られます。役員が可能な限りサポートいたしますが、人員に限りがあるため、発表スライドはなるべくシンプルで、補助機器を必要としない構成をご検討いただけますと幸いです。この点に関連し、以下2.、3.もご参照ください。

2. 動画再生に関するお願い

特にトラブルが起こりやすい例として、PPTスライド → 別ウィンドウ → 動画 → YouTube へと切り替える操作を同一発表内で行う場合が挙げられます。

可能な範囲で動画をご自身の機器に取り込み、PPT内に貼り付けるなど、切り替えを必要としない方法をご検討ください。万が一に備え、画像で代替説明できる準備があると安心です。

3. 音量設定について

ご自宅での準備段階の音量と会場機器につないだ際の音量に差が生じるケースが見られます。ご自身のPC・USB内の動画/音声資料は、あらかじめ十分大きめの音量で収録・設定していただけますと助かります。

4. 発表中の音・私語について

発表中にスマホアプリの通知音が鳴ると、発表者・聴衆ともに集中が阻害される可能性があります。通知オフ設定のご協力をお願いいたします。また、発表中の私語につきましてもご配慮いただけますと幸いです。

神田駅西口から10号館までの地図
(赤線が近道ですが、間違えて本館まで行っても青線を辿っていただくと10号館に着きます)

ストリートビューによる10号館概観(真ん中の細い建物です)
千代田区, 東京都 – Google マップ

 ▼プログラム(発表概要)

 9:3010:00 受付 & 発表者リハーサル(希望者) 

10:0010:05 開会挨拶  

10:05–10:35 発表1(発表20分 + QA5分 +入れ替え5分
「映画『ワンダー 君は太陽』に見ることばの力英語授業を通じた人間力育成の試み―」
渡邊 信(麗澤大学)

概要:本発表では、麗澤大学の英語教職科目「人間力育成演習」(本学独自の科目)における授業実践として、映画『ワンダー 君は太陽』(2017年)を用いた授業を報告する。本授業では、登場人物オギーやブラウン先生の台詞を通して、差別、いじめ、友情、思いやりといったテーマを学生とともに考察した。特に、ブラウン先生の格言“When given the choice between being right or being kind, choose kind.”(正しいことより親切を選べ)を中心に、学生が自らの価値観を英語で表現する活動を行った。その過程で、英語学習を通じて他者理解を深め、自分の生き方を省みる姿が見られた。本実践は、映像メディアを活用した英語教育が、言語力だけでなく人間力を育む教育としても有効であることを示唆している。

10:3511:05 発表2(発表20分+ QA5分 + 入れ替え/次の発表準備5分)
「外国人が感じる日本の音」
関口 美緒(メリーランド大学、東京科学大学)

概要:日本人は「虫の声」を聴くというが、外国人には「虫の音」や「雑音」にしか聞こえないという。そこで、本研究では、外国人日本語学習者に日本の様々な自然音を聞かせて調査した。調査は、2023年秋学期に名古屋大学G30プログラムアカデミック日本語2B(Listening and Presentation)のクラスでのListeningの一環として行った。様々な音があるが、主に自然音と動物の鳴き声(虫の音)を対象にした。その結果、日本人には心地よく聞こえる音や、音として認識するより「声」としての情緒を認識している音が、外国人学習者は「不快」であったり、「恐怖」を感じたりという結果が出た。また、2025年1月にオンラインでメキシコのセラヤ工科大学の5名にも聞き取り調査を行った。それらの結果を踏まえて、外国人日本語学習者が自然音を心理的にどう感じ、どんな傾向がみられるかを分析し、仮説を立て、考察した結果を報告する。(2023年度全国大会改訂版)

11:05–11:35 発表3(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
“Filmmaking and Adaptation as Iterative Practice”
Alec McAulay(Yokohama National University)

Abstract: This presentation outlines a pedagogical approach to teaching filmmaking and adaptation studies through iterative practice, an active, cyclical method in which students repeatedly reinterpret and reframe source materials, including films produced by other students. Moving away from adaptation as a static comparison between “original” and “derivative” texts, this method helps students understand that adaptation in filmmaking is a process of creative negotiation,  critical discovery, and playful dialogic reinterpretation. Drawing on a recent example from my Seminar on Filmmaking, I will show a short film made by one group of students, the graduates of 2024, that was inspired by a source text (a short film) available online. I will then ask participants to mirror the process the students in the graduating class of 2025 went through, namely analyzing the film made by their seniors to identify what could be improved in a re-make. We will then watch the re-make by the 2025 students and identify what changes they made, and discuss how they came to make the creative decisions that we see on screen. I hope to demonstrate how iterative exercises foster deeper understanding of adaptation’s creative potential. In addition, I will show how this pedagogical approach allows students to use English authentically to develop analytical and creative skills in both academic and production-oriented environments.

11:3512:05 昼休憩 

12:0512:30 総会 

12:30–13:00 発表4(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
“Google Scripts for Creating Video-Integrated Speaking Tasks”
Ryan SPRING(Tohoku University)

Abstract: In recent years, automatic speech recognition (ASR) has become increasingly easy to use and can now be implemented for free to create extracurricular speaking practice for EFL students (e.g., Hamagami et al., 2025; Nakamura et al., 2024; Spring et al., 2025). However, the price-to-entry for creating customized ASR tasks can still be quite high, as creating them requires quite a bit of technological knowledge, an individual website, and the proper security certifications. Here, Google Scripts can be be a potential solution as it allows anyone to make a deployable app that writes the data in a Google Sheet, which can be used as a database. This removes the necessity for one to have their own website or security certifications. In order to reduce the amount of technical knowledge required, I created several scripts and videos explaining how to use them and modify them to match teachers’ classes. This presentation shows the types of scripts that are available, how to modify them, and invites the audience to follow along and create their own original ASR speaking task. 

13:00–13:30 発表5(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「YouTube動画教材の開発と有効性検証:教材デザイン理論に基づくアプローチ」
中村 佐知子(東北大学)

概要:教材開発においては、学習者の経験を重視し、評価と改善を通じて教材の質を高めることが重要である(Tomlinson, 2012)。本発表では、このTomlinsonの理論的視点を背景とし、教材開発における一般的なプロセスであるニーズ分析、設計、実践、評価、改善という段階的サイクルを意識的に適用することで、YouTubeを活用した動画教材「Scaffolded Retention Practice(SRP)」の開発と実践的検証を行った経緯を報告する。SRPは、学習者への支援を段階的に減らしながら、学習者のフレーズ習得と総合的な英語スキル向上を促す目的で独自にデザインされた。発表者はその効果を授業実践を通じて検証し、得られた学習データを分析し、さらに教材改善につなげてきた。また、教材作成に利用可能なツールの進化は目覚ましく、教員が新しい技術や手法を柔軟に取り入れ、この開発サイクルに組み込むことが、結果としてより効率的で質の高い教材提供につながることを論じる。

13:30–14:00 発表6(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
“Reimagining Film-based ELA Pedagogy with Generative AI: Exploring Use Cases for Night at the Museum”
Makito Kawata(Kanda University of International Studies)

Abstract: Research on teaching English as a foreign language has long highlighted the pedagogical value of using films, noting their multimodal input, rich cultural content, narrative engagement, and capacity to motivate learners across proficiency levels. At the same time, the use of films in educational settings presents both benefits and challenges. For example, the positive motivational effects of film-based instruction have been reported (Kondo, 2018), whereas material development for film-based lessons is time-intensive and often needs to be created from scratch (Kadoyama, 2016). Furthermore, studies on film-use in EFL contexts tend to focus on short scenes rather than full-length movies, despite recent work supporting the educational value of experiencing an entire film narrative (Endo, 2024). This presentation examines how generative AI offers a bridge between these challenges and the pedagogical strengths of films. Drawing on a full-term university English course built around Night at the Museum (2006), it will demonstrate how AI tools can extend core principles of movie-based pedagogy. Examples include AI-generated tasks that support vocabulary acquisition (e.g., word and expression lists, definitions, synonyms, collocations, example sentences), language skill development (e.g., scene-inspired dialogues for speaking and listening activities, theme-based materials for reading and writing tasks), and intercultural inquiry through noticing and research assignments. Creative methods will also be explored, such as simulated character interactions that allow learners to “interview” characters on their experiences, motives, and values—even those beyond what appears in the film. Generative AI can function as a catalyst that reduces the barriers to designing level-appropriate classroom materials while preserving the uniquely powerful contributions of films, including engaging narratives and rich linguistic and cultural representations. Participants will gain a practical framework for adopting AI-assisted workflows to support film-based lessons and courses in EFL contexts.

14:00–14:30 発表7(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「ソフィア・コッポラ監督 Marie Antoinette (2006) に見える『メディア文化』」
塚田 三千代(翻訳、日本ペンクラブ電子文藝館委員)

概要:ソフィア・コッポラ監督の映画作品Marie Antoinette(2006年)はヴェルサイユ宮殿で過ごしたマリー・アントワネットの旅路を描いている。フランスとオーストリアの同盟国を成立させるための鍵となったマリー・アントワネットは異文化融合して自己アイデンティティを変容させる。その変容過程やセリフ(movie lines)に注目した。当時のフランス・ブルボン宮廷文化はあらゆる情報手段/メディアを使用して国内外で優越していた。本研究では、フランス・ブルボン宮廷の中央集権・絶対王政下におけるメディアの事例データ(data on examples)を収集して分布グラフに表示し、複数のメディアが情報循環/相互作用してメディアの多様化と応用範囲を広げる社会動態を可視化した。本日の発表ではメディア文化の定義、ブルボン宮廷のメディア事例、異文化融合とアイデンティティ変容、英語教育への適用について討議する。

14:3014:45 休憩 / Break(15分)

14:45–15:15 発表8(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「英語教材としてのカットシーン―句動詞とその関連表現を題材に―」
三村 仁彦(帝塚山大学)

概要:近年,家庭用ゲーム機の進化に伴い,ゲーム自体の内容も大作志向のものが多くみられるようになった。そのような作品においては,ストーリーの要所でカットシーン(cutscene)と呼ばれる映像が流れることがほとんどだが,そのクオリティはあらゆる面でアニメ映画や実写映画と比べてもまったく遜色がない。本発表では,これらのカットシーンが英語教材として十分な資質を備えていることを明らかにし,新たなメディア教材のひとつとして非常に有望であることを主張する。具体的には,人気ゲーム『メタルギアシリーズ』の最新作,『メタルギアソリッド デルタ:スネークイーター』(METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER)のカットシーンから,基本動詞を含む句動詞(phrasal verb)とその関連表現をいくつか取りあげ,同トピックを扱った複数の大学英語教材の内容と照らし合わせることで,当該シリーズのカットシーンがこれらの表現の学習に有用であることを示す。

15:15–15:45 発表9(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「映画にみる日米の文化的無意識 ― 異文化理解教育への応用 ―」
斎藤 珠代(東北学院大学)

概要:Sakamoto&Naotsuka(1989)は日米の文化を比較し、コミュニケーションにおいて誤解が生じる場合に、日米それぞれの言語活動の背後に無意識レベルでの「前提」があると考え、それらをPolite fictionsと呼んでいる。つまり、日本人もアメリカ人も互いに礼儀正しくあろうとして一種の虚構を演じている、というのである。Sakamoto&Naotsukaはいくつかのそういった心理的前提を提示して論じているが、その中から、本報告では2つの前提を取り上げ、映画の中で具体的にどのように表現されているか見ていきたい。一つはConversational ballgamesで、もう一つはYou and I are independentである。前者の例として、ディズニー映画『ライオンキング』から2つの場面が挙げられる。悪役の一味であるハイエナの3匹が交わす会話と主人公シンバとその仲間たちの間で交わされる会話である。後者の例としてはディズニー映画『ムーラン』と『7月4日に生まれて』から取り上げる。本報告で、映画の場面を用いて文脈と共に確認することで、異文化理解を深める効果があることを示したい。

15:45–16:15 発表10(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「アメリカ文化と西部劇の伝統ー映画『ノー・カントリー』(No Country for Old Men, 2007)の場合」
日影 尚之(麗澤大学)

概要:映画『ノー・カントリー』(No Country for Old Men, 2007) では、テキサスや米墨国境付近を主な舞台に、麻薬取引の決裂跡から金を盗んだ Llewelyn Moss、それを執拗に追跡する Anton Chigurh、事件を解決したい保安官Tom Bell などが逃走と追跡、銃撃戦などを繰り広げる。しかし、映画冒頭の西部劇的なパノラマ風景にもかかわらず、西部劇的プロットや映像手法は裏切られる。Lee Clark Mitchell (2018) は「閉所恐怖症」(claustrophobia)こそは伝統的西部劇の構成要素という説明も引き合いに出しながら、この映画における西部劇とノワールのジャンル間衝突 (duel)について論じ、冒頭とエンディングの語り手でもあるBell 保安官の苦悩および西部劇的思考の呪縛の根強さについて指摘する。Bellが2つの夢について妻に語り、カチカチと時を刻む…エンディングについてはどう考えるのがよいのだろうか?

16:15–16:45 発表11(発表20分 + QA5分 + 入れ替え5分
「子どもの発話コーパスCHILDES の音声・映像データを使った up/down 研究への試み」
濱上 桂菜(滋賀県立大学)

概要:CHILDES は、子どもの会話やその周辺の人の発話を収集したコーパスであり、英語・日本語を含む多様な言語データを備え、主に言語習得研究に利用されている。本発表では、CHILDES オンライン版の英語データのうち、とくに音声・映像資料に着目し、up/down の多義的用法に関する探索的分析と、関連分野への応用可能性を検討する。子どもの発話には、音声が不明瞭であったり、発話の意図や内容が取りづらかったりといった特有の難しさがある。その一方で、CHILDES を用いることで月齢差・年齢差による使用傾向や、大人からの働きかけを明らかにすることが可能であり、研究上の多様な可能性を含んでいると考えられる。

USING BANKSY TO TEACH INFERENCES AND CONNOTATIVE MEANING IN THE EFL CLASSROOM


Barry Kavanagh (Tohoku University)

Banksy’s artwork continues to draw worldwide attention for its bold imagery, ironic humour, and socially charged themes. His pieces often comment on war, inequality, technology, surveillance, and the contradictions of modern life. Because these themes are both global and contemporary, they resonate strongly with university students and offer valuable opportunities for meaningful classroom discussion. Building on my previous January 2024 post that introduced Banksy as a topic for cultural discussion, I have recently designed a more focused set of lessons on two key academic language skills: making inferences and understanding connotative meaning. These are central to developing students’ analytical abilities and preparing them for more advanced reading and writing tasks in English.

The lesson begins with students analysing four well-known Banksy works: Girl with a BalloonLove Is in the AirWhat Are You Looking At?, and Mobile Phone Lovers. Students first share their immediate reactions, whether they find the artworks inspiring, confusing, unsettling, or beautiful. Many students have seen these images online, yet few have attempted to explain the messages behind them. By encouraging students to consider what Banksy might be trying to express, the activity naturally leads them into inference-making. They examine visual clues, think about current social issues, and connect what they see with their prior knowledge. For example, Mobile Phone Lovers often sparks conversation about the role of technology in relationships, while Love Is in the Air triggers discussions about violence, protest, and the symbolism of replacing a weapon with flowers. Students are encouraged to support their interpretations with evidence from the images, which helps them move beyond simple description toward more thoughtful inferences. After this visual analysis, the lesson shifts to language. At this point, I introduce students to the idea that words carry different layers of meaning.

Words have denotative and connotative meanings. The denotative meaning is the direct, literal definition, the basic sense found in a dictionary. Connotative meaning, on the other hand, includes the feelings, associations, and emotional or cultural implications that people attach to a word. These connotations shape how language is interpreted and influence the tone of writing or speech. Understanding this distinction is crucial for students as they begin to evaluate and express opinions in English.

Students then work with a list of adjectives grouped into positive, neutral, and negative connotations. They use words like inspiringintriguingcontemporarychaoticrepulsive, and dull to describe the four artworks and explain their choices. This activity not only expands their vocabulary but also deepens their ability to recognise how subtle shifts in wording can change the impact of an opinion. Banksy’s artwork is particularly well suited to this task because it evokes such diverse reactions—some students find it deeply meaningful, while others find it confusing or even childish. These contrasting interpretations make connotation work engaging and authentic.

The next stage of the lesson involves reading two short passages presenting opposing viewpoints about Banksy. One passage praises his work for being expressive, socially relevant, and thought-provoking; the other criticises it as superficial, gimmicky, or overly sensational. Students answer comprehension questions designed to help them identify how each writer uses connotative vocabulary to influence the reader’s perception. Analysing these passages highlights the subtle ways language communicates attitude and bias.

Finally, students reflect on which passage they agree with and explain why. They must apply both inference-making and connotative vocabulary as they discuss their own judgments of Banksy’s work. This final step encourages students to articulate their viewpoints clearly and confidently, aligning with MEXT’s emphasis on developing internationally minded graduates who can think critically and express themselves effectively in English.

Overall, Banksy’s visually striking and socially relevant artwork provides a rich, motivating context for developing key academic language skills. With carefully structured scaffolding, students can engage deeply with both language and contemporary issues, ultimately enhancing their analytical, expressive, and communicative abilities.

YouGlishで単語やフレーズの理解を深めよう 

中村佐知子 東北大学 

2022年7月の東日本支部だよりでも紹介したこちらのウェブサイト。 

YouGlish 

https://youglish.com/ 

YouGlishは、YouTube上で実際に使われている単語やフレーズを検索できる便利なウェブサイトです。私は学生に、単語やフレーズを学習する際には辞書で意味を調べるだけでなく、YouGlishでも確認することを薦めています。また、私自身も日常的に活用しています。今日はこのYouGlishの活用法を3つご紹介します。 

  1. 学習した単語やフレーズの「使われ方」を確認する 

たとえば、プレゼンテーションで使われるこのフレーズをYouGlishで検索してみましょう。 

“The purpose of this presentation is”  

https://youglish.com/pronounce/the_purpose_of_this_presentation_is/english

すると、主にプレゼンテーションの冒頭部で目的を明確に述べる場面で、このフレーズがよく使用されていることが分かります。単に「このフレーズを使いましょう」と紹介するだけではなく、実際の使用場面を学生が目で見て耳で聞くことで、より鮮明な使用のイメージを持てるようになるでしょう。 

  1. アメリカ英語とイギリス英語の違いを確認する 

上部にある「US」「UK」などのボタンをクリックすると、主にそれぞれの国のアクセントを使う話者の動画を表示できます。たとえば “library” の発音を「US」と「UK」で比較してみましょう。 

library (US) 

https://youglish.com/pronounce/library/english/us

library (UK) 

https://youglish.com/pronounce/library/english/uk

「US」では「ライブラリー」と発音する話者が多いのに対し、「UK」では「ライブリー」という発音が多いことに気づくでしょう。学習者の興味のスイッチはどこに隠れているか分かりません。このような興味深い知識を共有することが、英語学習への関心を高めるきっかけになることもあります。 

  1. イントネーションやストレスを確認する 

YouGlishはイントネーションやストレスを確認するのにも最適です。たとえば、ヘッジ表現(断定を避ける際の表現)のひとつである “It seems to me that” を取り上げてみましょう。まずは、まずはこの文を音読してみてください。 

It seems to me that the situation is more serious than most people realize. 

次に、YouGlishで “It seems to me that” を検索し、このフレーズのイントネーションとストレスの位置を確認します。 

“It seems to me that” 

https://youglish.com/pronounce/%22it_seems_to_me_that%22/english

多く話者が “me” の部分にストレスを置いていることに気づくと思います。ここには「ほかの人がどう思うかは別として、少なくとも自分にはこう思える」というニュアンスが含まれています。これは「It seems to me thatは断定を避ける際に使います」と説明するだけでは決して伝わらない、実際の発話から得られる生きた情報です。 

Nation (2001) は、単語を知るということは形(form)・意味(meaning)・使い方(use)といった複数の側面を含む複雑なプロセスであると述べています。語彙やフレーズを学習する際には、ただ文字を見て意味を覚えるだけではなく、YouGlish などの動画ツールを活用し、発音・イントネーション・使用される場面も含めて確認することを心がけたいです。 

参考文献 

Nation, I. S. P. (2001). Learning Vocabulary in Another Language. Cambridge University Press. 

タイトル: わかりやすい、伝わりやすい英語とは?

滋賀県立大学 濱上桂菜

英語で話してください。と言われると身構えてしまいませんか。

習った表現が思い出せなかったり、こんな表現でいいのかな、と思ったり。

今回はそんな皆さんが安心できるような例を I, Robot (ウィル・スミスの大ヒット映画、2004年)から紹介します。

この映画では、科学者と警官の間で面白い会話がいくつもあります。

まずは、研究室に来た警官が、どんな研究をしているのか科学者に尋ねたシーンを見てみましょう。

科学者(以下、科): I specialize in hardware to wetware interfaces in an effort to advance USR’s robotic anthropomorphization program.

警官(以下、警): So, what exactly do you do around here?

科: I make the robots seem more human.

警: Wasn’t that easier to say?

科学者の最初の発言は、難しい専門用語ばかりです。

警官がもう一度「で、実際ここで何をしているんだ?」と尋ねたあとの回答、

「ロボットをもっと人間らしくしています。」の方がよっぽどわかりやすいですね。

(実際に「その方が言いやすいって思わないのか?」とツッコミが入ります。)

実際に、警官はロボットの専門家ではありません。

専門家ではない人に説明するときは、その人が理解しやすいように説明するのがコミュニケーションの基本です。ですので、このシーンでは、本来は専門用語を使わずに、「ロボットをもっと人間らしくしています。」のように、シンプルでわかりやすい表現を使うべきですよね。

この会話は、映画では笑うところですが、

しかし、意外にも私たち英語学習者がやってしまいがちな問題を教えてくれているようにも思うのです。

専門用語まで使うことはなくても、私たちは英語を一生懸命話そうとして、思わず難しい単語を並べてしまっているかもしれません。

本当はもっとシンプルで伝わりやすい表現があるかもしれないのに!

もう一つ例を紹介しましょう。

次の会話では、Sonnyという特別なロボットについて研究者が警官に説明しています。

科: You’re not going to believe this … Sonny has a secondary processing system that … clashes with his positronic brain.

警: It doesn’t make any sense.

科: Sonny has the three laws, but he can choose not to obey them.

The three laws (三原則)とは、「人に危害を加えない」、「命令に従う(第一原則に反しない限り)」、「自己を守る(第一、第二原則に反しない限り)」という原作著者が唱えた原則です。(なかなか奥深い原則ですので、興味がある人はぜひその解釈の問題点について調べてみてください。)

Sonnyもその原則に従うものとされていますが、しかし「それを破ることもできる」。

それを伝えるための科学者の最初の説明の難しいこと!

それに対して、後の説明の方がわかりやすく、伝わりやすい。

シンプルバージョンの方を見ると、私たちも学習者として安心しませんか?

そう、会話では、まずはシンプルな英語を目指したらいいんだと思えてきますよね。

この映画には、このような科学者と警官の面白いやりとりが他にもいくつかあります。

科学者の「難しいバージョン」 vs. 「シンプルバージョン」の対比ができますのでぜひ探してみてください。

ATEM(映像メディア英語教育学会)東日本支部 2025年度・第16回冬季支部大会・発表募集

〔例会日時〕 2025年12月20日(土)                        

〔会場〕 神田外語学院 10号館 4階 401教室 

 東京都千代田区内神田2丁目13-13(本館住所)

 JR神田駅(中央線・山手線・京浜東北線)から徒歩2分

 東京メトロ銀座線神田駅から徒歩3分

 ※駅から10号館までの地図はこちらの募集案内の最後のページをご参照ください。

(千葉県の幕張にあります「神田外語大学」とお間違いのようご注意ください)

〔開催形態〕 対面開催(発表は会場で行います。オンライン発表はありません)

・遠隔参加する聴講者向けに、リアルタイム中継(配信)を行います。

・対面開催で実施するため、発表者は会場にお越しください。聴講につきましては、会の盛況のためにもなるべく会場にお越しいただけましたら幸いです。

〔発表募集期間〕2025年11月15日まで      

〔内容〕 テーマは特に固定はせず、発表内容は発表者に一任します。

「映像メディア英語教育学会」という学会名が示す通り、映像/音声メディアを始めとするマルチメディアと英語教育が関連する内容を歓迎いたします。領域も授業実践、教材開発、英語教育論(異文化理解教育等を含む)と幅広く捉えていただければと思います。そうした分野やトピックに関するワークショップ(※)のご提案も含みます。ご不明な点などあればご相談ください。

〔発表時間〕 発表20分に加え、質疑応答5-10分を予定しております。

ただし、発表数や企画の有無などにより多少調整する場合があります。発表のお願い(採否)につきましては、応募締め切りから1週間程度をもって通知いたします。

※ワークショップ:発表者がファシリテーターとなり、特定のトピックに関する解説、および聴衆も含めた活動の実施、とお考えください。これまでに実施された例として、映像使用に関する著作権についての理解を深める講義、英語学習アプリの使い方に関する講座、英語で映画を撮る授業の実践体験、映画撮影技術の講座および実践体験等があります。なお、アクティビティなどが含まれる可能性も鑑み、ワークショップの実施時間は20-40分の枠内でご計画ください。

〔応募方法〕必要事項を下記Google formsにてご記入下さい。

https://forms.gle/BS7QbuEJM9a3L9Z16

1.発表者の氏名(共同発表の場合はそれぞれの氏名をコンマで列挙)

2. 発表者の所属(共同発表の場合はそれぞれの所属)

3. 発表タイトル(日本語発表の場合は日本語タイトル、英語発表の場合は英語タイトル)

4.発表概要(日本語の場合は400字程度、英語での発表は200-300 words)

※3および4での回答言語により、発表言語を判断いたします。
例) 3および4を英語で御記入→英語での御発表

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Call for Presentations for the 16th Winter Meeting of the ATEM East Japan Branch (Fiscal Year 2025), to be held on Saturday, December 20, 2025.

Dear ATEM Members:

ATEM Higashinihon Chapter will hold a Study Meeting at Kanda Institute of Foreign Languages (Chiyoda-ku, Tokyo, Japan) on December 20 (Sat.), 2025. We are planning on making the meeting Face-to-face (Presentations will be made at the venue, no online presentations). Additionally, real-time streaming is intended for remote participants; however, this may be subject to change depending on the circumstances. Please check the website for the latest details.

We are calling for presentations on English education (language education) that utilize visual and/or audio multimedia, including movies, TV dramas, YouTube, and other similar platforms. Your presentation should focus on class activities, the development of language teaching materials, theoretical or empirical studies, or cross-cultural communication studies, among other topics. We also welcome proposals for workshops on those fields or issues.

Each presentation will be 20 minutes long, with 5-10 minutes of Q&A. (This time may be adjusted depending on the number of presentations and related projects.) Please note that you will be notified of your presentation request (acceptance or rejection) approximately one week after the application deadline. 

We will contact you about the details later. 

[Application Period]  To November 15, 2025

An acceptance notice will be sent via email approximately one week after the application deadline. 

We would appreciate it if presenters could arrive at the venue as early as possible to avoid potential networking issues.

[Application Process] Please submit the following required information via Google Forms (https://forms.gle/BS7QbuEJM9a3L9Z16).

  1. Presenter’s Name (For joint presentations, list all presenters’ names separated by commas)
  2. Affiliation (For joint presentations, provide affiliations for each presenter)
  3. Presentation Title (Submit in Japanese for a Japanese presentation, or in English for an English presentation)
  4. Presentation Abstract (Approximately 400 characters for a Japanese presentation, or 200-300 words for an English presentation)

Notice: The presentation language will be determined based on the language you use in sections 3 and 4.

Example: If you complete sections 3 and 4 in English, your presentation will also be in English.

神田駅西口から10号館までの地図

(赤線が近道ですが、間違えて本館まで行っても青線を辿っていただくと10号館に着きます)

ストリートビューによる10号館概観(真ん中の細い建物です)

神田外語学院

説明動画付き英語教育統計分析ウェブサイト

スプリング・ライアン(東北大学)

言語学や英語教育の分野では、データを数値化し、実験や調査の結果を統計的に検証することで、議論をより確かなものにすることが重要です。例えば、アンケート調査を行った際、得られた結果が偶然によるものかもしれません。しかし、データを数値化し、統計分析を行うことで、その結果が本当に自分の仮説を支持しているかどうかを客観的に判断することができます。こうした分析を通じて、客観性が高まり、質的分析と併用することで、研究全体の信頼性も向上します。

一方で、多くの外国語教育者は数学者でも統計学者でもありません。そのため、統計分析の実施に困難を感じる方も少なくないようです。どの検定を使えばよいのか、結果をどう報告・解釈すればよいのか、あるいはデータをより詳細に分析するにはどの手法が適切なのか、判断に迷う教育研究者も多いのではないでしょうか。

そこで、統計分析オタクである私が、言語教育者や言語教育研究者のために、説明動画付きの統計分析ウェブサイトを作成しました:

日本語版

https://springsenglish.online/stats/index_jp.php

英語版

https://springsenglish.online/stats

言語教育を研究されている方に必要とされる主要な統計検定は、ほぼ網羅されています。それぞれの検定を選択すると、ウェブ上で簡単にデータを入力し、無料で分析を行うことができます。「計算」ボタンを押すと、論文やプレゼンテーションに引用可能な形式で結果が表示され、解釈文も自動的に出力されます。

また、本ウェブサイトでは、誤った検定を選ばないよう、さまざまな工夫を施しています。まず、各検定には簡潔で分かりやすい説明と選択基準が記載されており、判断に迷った場合には(?)マークが表示されます。このマークをクリックすると、動画と補足説明が表示されます。動画では、私自身が言語教育の具体的な事例を用いながら、やさしく解説しています。私自身もかつて、統計分析において誤った検定を選んでしまった経験があります。その際、文章だけでは理解しづらく、動画で視覚的に学ぶことで理解が深まったことが多々ありました。そうした経験を踏まえ、皆さんにも分かりやすく学んでいただけるよう、丁寧な動画コンテンツを提供しています。

さらに、検定を選択した後には、計算を実行する前に、データが正規分布に従っているかどうかなどの事前チェックが行われます。チェック結果に応じて、適切な検定が自動的に選択され、分析が実施されます。最終的には、どの検定が選ばれたのか、そしてその選択理由についても、明確な説明が出力される仕組みになっています。

今度の発表、論文に向けて、皆さん、是非、試してみて頂ければと思います。

英語教材としてのアメリカ映画の魅力

斎藤珠代(東北学院大学)

映画はとても良い英語の教材になると思いますが、様々な洋画の中でも私はアメリカ映画をよく使います。振り返ると大学時代、多くの映画を観ていました。フランス映画なども気に入って小さな映画館を巡ったりしていたものです。以前、あるフランス文学の先生と話していた時「映画が好きなんです」とおっしゃったので愚問かな、と思いつつも「映画って、フランス映画ですか?」とお聞きしたところ「当り前じゃないですか!ハリウッド映画なんか馬鹿らしくて観てられますか!」とのこと。アメリカ映画のあまりにもシンプルなハッピーエンドの構成に苦笑してしまう人も多いのでしょう。ですが、ある時ディズニー映画の『ムーラン』を見て私は意外なほど感動し、「シンプルだけど、これで良いんじゃないか」と思うようになりました。アメリカ映画に開眼した瞬間でした。

その後、多くのアメリカ映画が神話の型を踏んでいることを知るようになります。詳しくは、ATEMジャーナルの30号に拙稿「教室におけるディズニー映画の魅力―アメリカニズムにとどまらないディズニーの価値―」としてまとめましたが、神話には古今東西の人間を感動させるストーリーの型があるのです。それを踏んでいるわけですから、多くの人がアメリカ映画に感動するのは当然とも言えるでしょう。その最大のものが「英雄の旅」で、これは主人公が日常の世界を離れ、試練を経験し、最後にまた故郷に戻り仲間を救うという3ステップの型です。実に、『スターウォーズ』や多くのディズニー映画などのヒット作がこの型を基に編まれています。

私は感動的な映画を観た後は、That makes my day.という気持ちになります。「今日はこの映画を観たからよい一日だった」と。私が人生に一番求めているのは「感動」なのかもしれません。そして、私は学習にも感動が伴うのが理想的だと考えています。どうせ勉強するなら感動があったほうがいい。私のこのポリシーには科学的根拠を求めることができそうだということに最近気づきました。感情が大きく動くときに学習効果が上がるということが脳科学で知られているらしいのです。嫌々ながら勉強しても、授業の後何も覚えていないけれど、心を躍らせながら聴いた話ははっきり覚えている。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。薬学者・脳研究者の池谷裕二氏は人間の記憶力を強化するLTPという現象を起こすには脳のシータ波と扁桃体がキーとなると言っています。シータ波は対象に興味を持っているときに出るそうです。そして扁桃体は喜怒哀楽などの感情が生まれる場所です。面白い映画を興味を持って鑑賞し、喜怒哀楽を強く感じれば、その時に脳はシータ波が出ている状態になり、扁桃体の神経細胞も活動しているはずです。その意味では、大きな感動を伴うアメリカ映画を観て心を動かされながら聴いた英語は頭に強く焼き付くと言えるでしょう。アメリカ映画を使った授業にモチベーションを上げるのみでなく記憶に残るという効力もあると私は考えています。

最後に、私にとって印象に残っている場面を一つご紹介したいと思います。『ムーラン』において体を壊してしまった父親の代わりに秘かに男装して徴兵に応じ、軍隊に入る父親思いの娘、ムーラン。軍隊の中で女性であることを隠しながらも隊長に思いを寄せるようになります。その隊長の父親にあたる将軍が戦死する場面で、周りの隊員は隊長を気遣って、彼を一人にします。ここにはアメリカの価値観である「相手が助けを求めない時には助けない。もし求めていないのに助けの手を差し伸べたら相手の自立という観念を否定することになる」という心的態度が隠れていると考えられます。一人になった隊長は地面に積もった雪に刀を立て、その上に亡くなった将軍の兜を載せ、一人で父親の弔いの時間を持ちます。その時ムーランが恐る恐る近づき、ためらいがちに “I’m sorry.”と一言だけ言うのです。「ごめんなさい」以外の「残念です」の I’m sorry。ここでもしI feel sorry for you.「あなたが気の毒です」と言ってしまったら相手の自立という大切な概念を打ち砕いてしまいます。I’m sorryの使い方がよくわかる場面です。文化も含めたコンテクストのなかで言語を学習できる映画という教材は大きな可能性をもっていると感じたシーンでした。

日々の生活の中で心を動かされる映画に出会い、それを授業で学生と共有すること——それは私にとって、教える仕事の醍醐味の一つでもあります。そうした出会いは、私自身にとっても多くの気づきをもたらし、文化の多様性、そして普遍性について改めて考える契機となっています。

映画『天国から来たチャンピオン』に見る音楽と魂の結びつき

原田知子(武蔵野音楽大学)

映画『天国から来たチャンピオン』(Heaven Can Wait)は1978年に制作されたアメリカ映画です。監督のウォーレン・ベイティ(当時の表記はビーティ)が主役を務め、明るいアメリカン・フットボール選手を溌剌と演じています。大学1年の時、英語劇の仲間からこのノベライズ本を借り、生まれて初めて英語の本を夢中で読む経験をしました。その意味でも思い出深い作品ですが、現在、音楽大学で英語を教え、端唄を演奏する者として、映画に描かれた音楽と魂の深い結びつきに改めて心を惹かれています。

主人公のジョーは交通事故に遭い、天国への中継地で目を覚まします。ところが実は、新人天使の手違いで予定より早く命を奪われ、本来の死は50年後だったことが判明します。ジョーは天使長とともに地上に戻りますが、体はすでに火葬されていました。そこで、ジョーは代わりの体を探す羽目になります。

ジョーと天使長は大富豪レオの屋敷を訪れ、殺害されたばかりのレオを発見しました。ちょうどそこに、環境保護運動家のベティがレオの会社による公害に抗議しに来ます。ジョーはベティを助けるため、レオの体を一時的に借りることにします。会社の部下や使用人たちは、レオの言動の変化や、他人には見えない天使長と話している様子に戸惑いますが、レオ(の中のジョー)は環境を守る方針を次々と決定していきます。レオを悪徳経営者とばかり思っていたベティは驚き、二人は互いに惹かれていくのでした。

ジョーはレオの体を鍛えてフットボールの試合に出るため、昔馴染みのフットボール・トレーナーのマックスを屋敷に呼びます。自分がジョーであると主張するレオの話をまったく信じないマックスでしたが、レオのサックスを聞いた瞬間、彼の魂がジョーであることを悟ります。

ジョーは試合に出場できることになりますが、なんとここでレオの体を使える期間が尽きたことを天使長から告げられます。ジョーはベティに、いつか、きみを知っているように見える人が現れるかもしれないと言い残します。レオの体を失ったジョーは試合に出られるのか、再び別の体に入ったジョーにベティは気づくのか。ぜひ映画でご覧ください。

この映画では、サックスの音色が、単なる楽器の響きを超え、まさにジョーの魂そのものとして描かれています。姿形が変わっても、その音色こそがジョーの本質を伝え、昔馴染みのマックスに彼の存在を確信させます。また、後のほうでは、ある人物の体からジョーの魂が去ったことにマックスが気づくシーンがあり、それもサックスへの無関心が決め手になっていました。

生前のジョーはソプラノ・サックスを吹いていましたが、注目すべきは、死後のジョーが魂の姿になってもなおサックスを手にしている描写です。これは、音楽がいかに彼の魂と不可分であり、彼自身のアイデンティティの中核を成しているかを象徴しています。音楽がその人の魂そのものであるという描写は、単なるプロットの一部にとどまらず、音楽に携わる人々の心に響きます。劇中で流れる美しいサックスのメロディーと相まって、深く心に残ることでしょう。

映画『ワンダー 君は太陽』(原題Wonder)に見ることばの力

渡邊 信(麗澤大学外国語学部)

英語学を専門としており、ことばについて考えるのが好きです。洋画や海外ドラマも子どものころからずっと好きでしたが、沈んだ時に励ましてくれることばや、困った時に導いてくれることばに、何度出会ったかわかりません。気に入ったセリフの意味を静かに考えていると時間を忘れてしまいます。

数年前、ゼミの学生が『ワンダー 君は太陽』(2017年、監督: スティーヴン・チョボスキー、原作: R・J・パラシオ)という作品を紹介してくれました。素敵なことばがたくさん使われている作品です。今回はこの作品から印象的な言葉をいくつか紹介させていただきます。*2025年5月時点ではNetflixで視聴できます。英語音声はありますが、残念ながらサブタイトルは日本語のみです。

簡単にストーリーを紹介します(詳細はこちら)。主人公のオギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は10歳、ミドルスクールへの入学を控えています。顔に遺伝性の特徴があり、これまで何度も手術を受けてきました。家族は、母イザベル(ジュリア・ロバーツ)、父ネイト(オーウェン・ウィルソン)、姉ヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)そしてワンちゃんのデイジーです。ヴィアは入退院を繰り返す弟オギーの世話で忙しい両親に迷惑をかけないように生活している一方、内面では孤独を抱えています。母からホームスクーリングを受けてきたオギーが、「普通」の学校(いわゆるプレップスクール)に通うことになり、家族や友達、理解のある先生たちに支えられながら、いじめなど多くの困難を乗り越え成長していく1学年間が描かれています。

物語には、トゥシュマン校長(マンディ・パティンキン)、担任のブラウン先生(ダヴィード・ディグス)、オギーの友達のジャック(ノア・ジュープ)とサマー(ミリー・デイヴィス)、姉の親友ミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)、そしていじめっ子のジュリアン(ブライス・ガイザー)や、同級生のシャーロット(エル・マッキノン)など、さまざまなキャラクターが登場します。それぞれの視点や役割が物語に深みを与えています。

印象的な言葉①: 正しいことより、親切を選べ

When given the choice between being right or being kind, choose kind.

(正しいことより、親切を選べ*)

*この訳文は原作小説の日本語訳(翻訳:中井はるの)からおかりしました。ほかのセリフの日本語訳はネットフリックスのサブタイトルを筆者が改変しました。

入学初日、生徒たちを教室に迎えるブラウン先生が板書した「9月の格言(September Precept)」です。ブラウン先生は毎月違う格言を子どもたちに考えさせます。そして、”Who do I aspire to be?”(人としてどうあるべきか?)と問い続けることの大切さを説きます。

ブラウン先生は子どもたちに「9月の格言を読みたい人?」と尋ねます。多くの子どもたちが元気よく“Me, me”と手を挙げますが、サマーだけは躊躇しています。気づいた先生は彼女に優しく語りかけ、格言を読むよう促します。サマーはゆっくりと読み始め、“… choose kind”と締めくくると、満足げににっこりと微笑みます。

勇気を持って誰かを正さなければならない場面ももちろんあると思います。差別的な発言やいじめ、ハラスメントなどに直面した時などです。でも、私自身を振り返ると、会議で自分の意見に固執してしまったことなどが思いだされます。個人的には、そうした過ちを反省し、将来の戒めとしてこのことばを心に留めておきたいと思います。

この「9月の格言」は、心理学者ウェイン・W・ダイアー博士 (Wayne Dyer)の言葉に由来するようです。完全に一致する表現は見つけられませんでしたが、ダイアー博士のホームページには「あなたを傷つけた人を許す」ためのステップの一つとして、“Be kind instead of right”(正しさより親切を選ぶ)の重要性が論じられています。

印象的な言葉②: 勇気について

Courage is what it takes to stand up and speak. Courage is also what it takes to sit down and listen.

(立ち上がって話すには勇気がいる。座って聞くにも勇気がいる)。

ホームルームの入り口に貼られたポスターに書かれている格言です。この言葉は、自分の意見を表明することの大切さだけでなく、他人の発言に注意深く耳を傾けることの重要性も伝えています。一般的には、ウィンストン・チャーチル元英国首相の言葉とされていますが、諸説あるようです。

私にはこの格言は、オギーの姉ヴィアを象徴しているようにも思えます。ヴィアは、弟オギーに両親の注意が集中していることを理解し、自分を抑えることで両親の負担にならないよう努力しています。その結果、知らず知らずのうちに自己主張を控えるようになりましたが、他人の話を注意深く聞くことに長けています。この格言は、ヴィアの内面の強さや、彼女が持つ「聞く勇気」を示す伏線とも読めるのではないでしょうか。

ヴィアの「聞き上手」は以下のジャステイン(演劇部での活動を通じて知り合ったヴィアのボーイフレンド)とのやりとりに明確に表れています:

Justine: Um, I can’t figure you out. Most theatre people won’t stop talking about themselves. But you don’t talk.

Via: I… I listen.

Justine: Me, too.

Via: I know.

Justine: Oh. So you do pay attention. Okay, that’s a start. Uh…I’m a good listener so tell me something. Who are you gonna audition for?

このシーンでは、Viaの控えめな性格と、他人の話をよく聞くという彼女の特性が際立っています。そして、その「聞く」姿勢こそが、彼女の内面的な強さや勇気を象徴しているように感じられます。この場面を通じて、他者を受け入れ、耳を傾けることが、いかに重要で尊いかが改めて伝わってきます。

印象的な言葉③:顔の特徴について

We all have marks on our face. This is the map that shows where we’ve been and it’s never, ever ugly.

母親イザベルが他人と違う顔の特徴に悩む息子オギーに語りかける場面です。人の顔の特徴はその人が歩んできた道程の証であり、決して醜いものではないと伝えます。映画全体のテーマである「外見の違いを受け入れ、内面に焦点を当てる」というメッセージを象徴するこの言葉は、オギーに安心感と自信を与えると同時に、作品を見る私たちにも外見にとらわれずおたがいの内面に目を向けることの大切さを訴えかけています。

印象的な言葉④:見方を変える

 Auggie can’t change how he looks. Maybe we should change how we see.

(オーギーは自分の見た目を変えることはできません。だから、私たちが見方を変えるべきなんです。)

この言葉は、トゥシュマン校長がオギーへのいじめ(ひどい似顔絵などの嫌がらせ)を続けたジュリアンとその両親に告げたものです。ジュリアン自身は反省の言葉を口にするのですが、母親は息子を理不尽に擁護し、結果としてジュリアンは転校することになってしまいます。

この後にジュリアンの登場シーンはありませんが、原作者R.J.パラシオは2022年に『ワンダー』の続編となる小説『ホワイトバード』を発表し、このいじめっ子ジュリアンを主要人物として描いています。2023年にはマーク・フォースター監督によって映画化もされています。この続編では、ジュリアンが祖母サラ・ブルームから第二次世界大戦中の体験を聞くことで、共感や優しさ、そして勇気について学ぶ姿が描かれます。ユダヤ人であるサラは、ナチス占領下のフランスで、家族や自分が迫害された経験を語ります。彼女の話では、命を懸けてサラをかくまい、助けた人々の勇気ある行動が強調されており、それはジュリアンに、優しさや人間性が持つ力強さを深く伝えるものとなっています。この物語は、ジュリアンが歴史の悲劇を理解するだけでなく、彼自身の価値観を揺さぶり、いじめや他者への態度について考え直すきっかけを与える重要な教訓となっていきます。

印象的な言葉⑤:行いが記念碑

MR. BROWNE: Your deeds are your monuments. Archaeologists found these words inscribed on the walls of an ancient Egyptian tomb. Can anybody tell me what they mean? Summer?

Summer: Oh, uh…I think it means that the things we do are the things that matter most.

ブラウン先生がYour deeds are your monuments(あなたの行いがあなたの記念碑です)という格言を紹介し、古代エジプトの墓に刻まれていたこの言葉の意味を子どもたちに問います。指名されたサマーは少し戸惑いながらも、「私たちの行いが最も大切だという意味だと思います」と答えます。このセリフは、人の価値は見た目や地位ではなく、日々の行動に表れるという映画のテーマをやさしく伝えていると思います。

印象的な言葉⑥: 本当の偉大さとは

The final award this morning is the Henry Ward Beecher medal to honor students who have been notable or exemplary. Usually, it’s a “good works,” a service award. But I came upon a passage that he wrote, which made me realize that good works come in many forms. “Greatness,” he wrote, “lies not in being strong, but in the right using of strength. He or she is the greatest whose strength carries up the most hearts by the attraction of his own.” Without further ado, this year, I am very proud to award the Henry Ward Beecher medal to the student whose quiet strength has carried up the most hearts. So, will August Pullman please come up here to receive this award?

長いですがトゥッシュマン校長の修了式でのスピーチです。クライマックスに向けて、オギーに栄えある「ヘンリー・ウォード・ビーチャー・メダル」が授与されます。校長はメダルの名称の由来となったビーチャー牧師の言葉を引用し、こう説明します。「偉大さとは、ただ強いことではなく、その強さを正しく使うことにあります。その人自身の魅力によって多くの心を引き上げることができる人こそが、真に偉大なのです。」「静かな強さ」で多くの人々の心を動かしたオギーの姿が、この言葉にぴったりと重なり、感動的な場面となっています。

印象的な言葉⑦: 人をいたわれ。みんな闘っている。

Be kind, for everyone is fighting a hard battle. And if you really wanna see what people are, all you have to do… is look.

人をいたわれ。みんな闘っている。相手を知りたかったら、やることは1つ。よく見ること。

作品を締めくくる、オギーの印象的なナレーションです。ブラウン先生が子どもたちに贈った最後の格言として紹介されており、すべての人がそれぞれの事情を抱えながら懸命に生きており、だからこそ、互いに思いやりを持って接することの大切さを説いています。

この格言に呼応する形で、本作にはオギーの視点だけでなく、姉ヴィア、ヴィアの親友

ミランダ、母親イザベル、そしてオギーの友達ジャックなど、さまざまな登場人物の視点から描かれた場面があります。彼ら一人ひとりが、それぞれの事情や葛藤を抱えながら生きており、その多様な視点を通じて、「親切さ」の本質が浮き彫りにされています。

なお、Be kind, for everyone (that you meet) is fighting a hard battleという言葉が誰のものかについては諸説があります。いずれにせよ、類似した表現が時代を超えて伝わり、多くの人の共感を呼んできたのでしょう。

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『ワンダー 君は太陽』のような魅力的な映画を授業に取り入れることで、英語学習の楽しさを広げる可能性が期待できると感じます。本作品に登場する印象深いセリフの数々は、学びにおいて特別な瞬間を生み出し、心に残る体験を提供することでしょう。このような映画を活用した英語教育は、学習者に多様な学びの機会を提供し、単なる言語習得を超えた豊かな経験をもたらす力を秘めていると思います。これからも皆さまとともにアイデアを共有しながら、映像を活用した英語教育の可能性をさらに探求していきたいと思います。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

【参照文献】

Palacio, R. (2013). Wonder. Corgi Childrens.

Palacio, R. (2015). 365 Days of Wonder Mr. Browne’s Precepts. New York: Alfred A. Knopf.

Palacio, R. (2023). White Bird: A Wonder Story. Penguin Books Ltd.

パラシオR.J. (2015). 『ワンダー』. (中井はるの, 訳) ほるぷ出版.

【映画】

Chobosky, S. (Director). (2017). Wonder [Motion Picture].

Forster, M. (Director). (2024). White Bird [Motion Picture].

【ウェッブサイト・ウエッブページ】

Dyer, W. W. (2025, 1 10). How To Forgive Someone Who Has Hurt You: In 15 Steps. (Hay House, Inc) Retrieved from DrWayneDyer.com: https://www.drwaynedyer.com/blog/how-to-forgive-someone-in-15-steps/

International Churchill Society. (2023, January 17). Quotes Falsely Attributed to Winston Churchill. Retrieved from Internal Churchill Society: https://winstonchurchill.org/resources/quotes/quotes-falsely-attributed/

Quote Investigator. (2010, June 29). Quote Origin: Be Kind; Everyone You Meet is Fighting a Hard Battle. Retrieved from Quote Investigator: https://quoteinvestigator.com/2010/06/29/be-kind/

キノフィルムズ. (2025年1月10日). 映画『ワンダー君は太陽』公式サイト. 参照先: http://wonder-movie.jp/