滋賀県立大学 濱上桂菜
英語で話してください。と言われると身構えてしまいませんか。
習った表現が思い出せなかったり、こんな表現でいいのかな、と思ったり。
今回はそんな皆さんが安心できるような例を I, Robot (ウィル・スミスの大ヒット映画、2004年)から紹介します。
この映画では、科学者と警官の間で面白い会話がいくつもあります。
まずは、研究室に来た警官が、どんな研究をしているのか科学者に尋ねたシーンを見てみましょう。
科学者(以下、科): I specialize in hardware to wetware interfaces in an effort to advance USR’s robotic anthropomorphization program.
警官(以下、警): So, what exactly do you do around here?
科: I make the robots seem more human.
警: Wasn’t that easier to say?
科学者の最初の発言は、難しい専門用語ばかりです。
警官がもう一度「で、実際ここで何をしているんだ?」と尋ねたあとの回答、
「ロボットをもっと人間らしくしています。」の方がよっぽどわかりやすいですね。
(実際に「その方が言いやすいって思わないのか?」とツッコミが入ります。)
実際に、警官はロボットの専門家ではありません。
専門家ではない人に説明するときは、その人が理解しやすいように説明するのがコミュニケーションの基本です。ですので、このシーンでは、本来は専門用語を使わずに、「ロボットをもっと人間らしくしています。」のように、シンプルでわかりやすい表現を使うべきですよね。
この会話は、映画では笑うところですが、
しかし、意外にも私たち英語学習者がやってしまいがちな問題を教えてくれているようにも思うのです。
専門用語まで使うことはなくても、私たちは英語を一生懸命話そうとして、思わず難しい単語を並べてしまっているかもしれません。
本当はもっとシンプルで伝わりやすい表現があるかもしれないのに!
もう一つ例を紹介しましょう。
次の会話では、Sonnyという特別なロボットについて研究者が警官に説明しています。
科: You’re not going to believe this … Sonny has a secondary processing system that … clashes with his positronic brain.
警: It doesn’t make any sense.
科: Sonny has the three laws, but he can choose not to obey them.
The three laws (三原則)とは、「人に危害を加えない」、「命令に従う(第一原則に反しない限り)」、「自己を守る(第一、第二原則に反しない限り)」という原作著者が唱えた原則です。(なかなか奥深い原則ですので、興味がある人はぜひその解釈の問題点について調べてみてください。)
Sonnyもその原則に従うものとされていますが、しかし「それを破ることもできる」。
それを伝えるための科学者の最初の説明の難しいこと!
それに対して、後の説明の方がわかりやすく、伝わりやすい。
シンプルバージョンの方を見ると、私たちも学習者として安心しませんか?
そう、会話では、まずはシンプルな英語を目指したらいいんだと思えてきますよね。
この映画には、このような科学者と警官の面白いやりとりが他にもいくつかあります。
科学者の「難しいバージョン」 vs. 「シンプルバージョン」の対比ができますのでぜひ探してみてください。