中村佐知子 東北大学
2022年7月の東日本支部だよりでも紹介したこちらのウェブサイト。
YouGlish
YouGlishは、YouTube上で実際に使われている単語やフレーズを検索できる便利なウェブサイトです。私は学生に、単語やフレーズを学習する際には辞書で意味を調べるだけでなく、YouGlishでも確認することを薦めています。また、私自身も日常的に活用しています。今日はこのYouGlishの活用法を3つご紹介します。
- 学習した単語やフレーズの「使われ方」を確認する
たとえば、プレゼンテーションで使われるこのフレーズをYouGlishで検索してみましょう。
“The purpose of this presentation is”
https://youglish.com/pronounce/the_purpose_of_this_presentation_is/english
すると、主にプレゼンテーションの冒頭部で目的を明確に述べる場面で、このフレーズがよく使用されていることが分かります。単に「このフレーズを使いましょう」と紹介するだけではなく、実際の使用場面を学生が目で見て耳で聞くことで、より鮮明な使用のイメージを持てるようになるでしょう。
- アメリカ英語とイギリス英語の違いを確認する
上部にある「US」「UK」などのボタンをクリックすると、主にそれぞれの国のアクセントを使う話者の動画を表示できます。たとえば “library” の発音を「US」と「UK」で比較してみましょう。
library (US)
https://youglish.com/pronounce/library/english/us
library (UK)
https://youglish.com/pronounce/library/english/uk
「US」では「ライブラリー」と発音する話者が多いのに対し、「UK」では「ライブリー」という発音が多いことに気づくでしょう。学習者の興味のスイッチはどこに隠れているか分かりません。このような興味深い知識を共有することが、英語学習への関心を高めるきっかけになることもあります。
- イントネーションやストレスを確認する
YouGlishはイントネーションやストレスを確認するのにも最適です。たとえば、ヘッジ表現(断定を避ける際の表現)のひとつである “It seems to me that” を取り上げてみましょう。まずは、まずはこの文を音読してみてください。
It seems to me that the situation is more serious than most people realize.
次に、YouGlishで “It seems to me that” を検索し、このフレーズのイントネーションとストレスの位置を確認します。
“It seems to me that”
https://youglish.com/pronounce/%22it_seems_to_me_that%22/english
多く話者が “me” の部分にストレスを置いていることに気づくと思います。ここには「ほかの人がどう思うかは別として、少なくとも自分にはこう思える」というニュアンスが含まれています。これは「It seems to me thatは断定を避ける際に使います」と説明するだけでは決して伝わらない、実際の発話から得られる生きた情報です。
Nation (2001) は、単語を知るということは形(form)・意味(meaning)・使い方(use)といった複数の側面を含む複雑なプロセスであると述べています。語彙やフレーズを学習する際には、ただ文字を見て意味を覚えるだけではなく、YouGlish などの動画ツールを活用し、発音・イントネーション・使用される場面も含めて確認することを心がけたいです。
参考文献
Nation, I. S. P. (2001). Learning Vocabulary in Another Language. Cambridge University Press.