人を慰めたいときのコミュニケーション

濱上桂菜(立命館大学)

親しい人が悩んで困っている時、何とか声をかけたいものですよね。

今回はそんな時に役に立ちそうな映画のシーンを二つご紹介します。

・映画「SING シング」

I know you’re sad right now and probably afraid to try again (…)

今は悲しくて頑張る気にもなれないと思うけど …(省略)

But you told me…”don’t let fear stop you from doing the thing you love.”

でもあなた言ってたでしょ 「恐怖に負けて夢を諦めるな」 と

大切な人が悩み苦しんでいる時には、相手が独りぼっちではないことを伝えたいですよね。そんな時には、まず相手の気持ちに共感するのが大事と言われています。上のセリフでも、まず、I know you’re …の部分で相手の感情に共感しています。そして、その後にBut を使って慰めの言葉をかけるのです。

このセリフの間に目線をどこに向けているかにも注目してみましょう。I know you’re …の部分では目線を相手からそらしていますが、but 以下のところでは相手の方をしっかりと見ています。つまり、本当に伝えたい内容は but 以下の内容と言えるでしょう。この目線の使い方も、人を元気づけたいときの大切なポイントなのではないでしょうか。

・映画「インサイド・ヘッド」

次のシーンは Sadness が Bing Bong を慰める印象的なシーンです。

(この映画は、とある女の子ライリーの頭の中で展開する、キャラクター化した感情たちや空想人物の冒険物語です。)

(Bing Bongは、大事にしていたカートのおもちゃを失ってしまい、悲しみに暮れています。)

Bing Bong: It’s all I had left of Riley.

「ライリーとの唯一の思い出の品なのに」

Sadness: I bet you and Riley had great adventures.

 (カートを使って)「あなたとライリーは大冒険したのよね」

Bing Bong: They were wonderful. Once we flew back in time. We had breakfast twice that day.

「素晴らしかったよ。時間を遡ったこともある。その日は朝食を2回食べたんだ」

Sadness: That’s sounds amazing. I bet Riley liked it.

「すごい。ライリーもそれは喜んだでしょう」

Bing Bong: Oh, she did. We were best friends.

「そうとも。僕たちは親友だった。」(涙を流す)

Sadness: Yeah. It’s sad.

「そうね。悲しいね。」

Sadness は、辛く思っている相手に共感しています。I bet … (きっと…だ)や、 It’s sad. (悲しいね) という表現を使って共感していますね。しかし、驚くべきことに、ここでは一つも具体的な慰めの言葉をかけていません。 But を使って、「だけど、楽しい思い出は心に残ってるでしょ」などの慰めの言葉をかけていないのです。

立ち位置やジェスチャーも印象的です。Sadness は、悲しむ相手と向かい合うわけではありません。相手の横に並んで座り、優しく相手の手に触れています。つまり、相手と同じ方向を向いて、近くにいることをそっと伝えているだけです。

大切な相手をなぐさめる方法は、もちろん状況、人間関係、文化などによっても変わってくると思います。しかし、相手が本当に辛く思っていて、どんな声掛けをしたらいいのかわからない時には、もしかしたら Sadness がしたように共感して寄り添うのが唯一できることなのかもしれません。