2019年ATEM東日本支部春季例会プログラム

【講演】                                   13:00-14:00

講演者:赤塚祐哉(早稲田大学本庄高等学院)
題目: 「国際バカロレアの英語授業における映像メディアの
活用実態と可能性」

概要:多様な価値観が共存し、物事を多面的に捉える重要性が高まり、高次思考力(略称HOTS)レベルの問いについて探究する批判的思考を育成する授業の重要性が指摘されています。ところが、英語の授業では、言語運用力が障壁であると捉えられ、そうした力を育成する体系的な教育方法の確立にまで至っていません。そこで基本となる問いとして、「HOTSレベルの問いを中心とした英語授業は、言語運用力と批判的思考の育成に対してどの程度に有効に機能するのか」を設定し、国際バカロレア・ディプロマプログラム(略称IBDP)」の外国語科目「Language B」に着目したいと思います。今回は、その科目の中で取り扱われる映像メディアの活用実態と可能性について議論したいと考えています。

≪Q&A 15分の後休憩15分≫

 

【研究発表】

1.清水純子(慶応義塾大学)                                                      14:30~14:55
塚田三千代(映画アナリスト・翻訳家)                                                         15:00~15:25
「『ビリーブ 未来への大逆転』、『レプリカズ』、『メリー・ポピンズ  リターンズ』、『運び屋』に見る文化と人間性の考察」
今回取り上げる映画4本を通して英米文化の断片と人間性の考察を試みる。『ビリーブ 未来への大逆転』では、公民権運動たけなわのアメリカで、女性弁護士RGB(ルース・ベイ・ギンダーズバーグ)が、ジェンダー・フリーを法廷において勝ち取る苦悩と栄光の足跡をたどる。キアヌ・リーブス製作主演の『レプリカズ』では、家族愛が招く禁断の人間クローン製造について考える。初作の55年後に製作された本映画『メリー・ポピンズ リターンズ』は、ディズニー映画文化の奥の深さを感じさせる。ディズニーは、原作者P.L.トラヴァ―への献辞「アニメはご法度。ミュージカルもダメ。脚本は原作者の承認を得ること」を守っているからだ。4本目の『運び屋』は原題の“The Mule”という語の意味作用と内包する文化を表象している。退役軍人と百合の新種栽培、インターネット通販時代の到来で破産した後の再起を描く。家族とは…?不法物運搬人と取締り現場責任者や組織トップとの人間性の優しい心情を垣間見せ、アメリカ移民社会文化の一端を浮き彫りにする。
これら4本の映画をMCDB(映画と文化データベース)及び『J.シミズの映画レビュー』に所収するにあたり、諸意見と判定を求む。

≪Q&A 10分の後休憩5分≫

2.田淵龍二(ミント音声教育研究所)     15:40~16:05
「日英映像対訳コーパスによる May I? など機能語だけの文に
よる学習法」

 

簡易に運用できる言語表現の要望に応える学習法PCB-DDLを提案する。PCB-DDL(parallel-corpus-based data driven learning)は対訳コーパスによるデータ駆動型学習である。ある目的で集められた用例を連続して見聞きすることで文法や意味を自律的帰納的に発見し習得する。PCB-DDLは乳幼児の言語習得過程に似ており、人工知能(AI)の深層学習にも使われる。今回は、容易に記憶可能な短文のうち”May I?”や”Can You?”など機能語だけの文を対象とした。対訳コーパスはコーポラ(CORPORA)のSeleafを使った。Seleafは映画映像コーパスである。英語表現の場面(文脈)と発音(抑揚)を同時に確認できるので、/may i/が抑調の付加疑問なのか、揚調の疑問か、言い淀みの平調かを判別できる。助動詞にはcan, do, may, must, shall, will、人称代名詞には I, you, we, he, her, they のそれぞれ6種を用いた。その結果/may i↑/などは身振りと合わせると効果があることがわかった。

≪Q&A10分の後休憩5分≫

 

3.吉田雅之(早稲田大学)          16:20~16:45
「映像で考えるアイルランド系人名」

アイルランド系の人名の中で有名なのは Mac や O で始まる人名であるが、当事者にとっては当たり前のように見えても、英語学習者にとっては、たとえば「マッカーサー」という名前の中にアイルランド系文学の中で最も有名な人名のひとつと言える「アーサー王」の名前が埋め込まれていることに気づく人は少ないのではないだろうか。本発表では身近なアイルランド系人名の語源をたどりつつ、人名と歴史・文化との関係をさぐりたい。また英語史、特に綴り字と発音の変化に関する知識が人名の探求に寄与することを確認したい。アイルランド語(=ゲール語)の文字体系と発音体系は英語のそれと異なる点が多く、アイルランド系人名が英語圏文化の中で使用されるうちに英語風の発音を独自に発達させて Anglicized pronunciation が成立する様子も探っていきたい。

≪Q&A 10分の後休憩5分≫

4.ライアン・スプリング(東北大学)    17:00~17:25
「Developing speaking skills through short film creation:
A preliminary analysis」

A number of studies have suggested that short film creation can be an effective task for students in a project-based language learning (PBLL) class (e.g. Dooly & Sadler, 2015; Hafner et al., 2015; Spring, 2019). However, no studies have been performed to verify the effects that short film creation in a foreign language can have on students’ oral abilities through objective measures. This study introduces a preliminary investigation of data taken from two short film creation PBLL classes of L1 Japanese EFL students. Pre and posttests of speaking were utilized to collect data, and then analyzed through objective measures of fluency, syntactic complexity, semantic complexity, syntactic accuracy and pronunciation accuracy (as per Lambert & Kormos, 2014). Initial results revealed that statistically significant differences were found in some measures of students’ fluency, syntactic complexity, syntactic accuracy and pronunciation accuracy, but not in their semantic complexity. These results suggest that accuracy and fluency are most likely to be improved through such a PBLL task.

≪Q&A 10分≫

閉会の辞

17:40ころ終了予定

 

会場:麗澤大学東京研究センター

http://www.reitaku-u.ac.jp/daigaku/campus/campus01.html

東京都新宿区西新宿6-5-1*問い合わせ:e-mail(ej-seminar@atem.org

*事前申し込みの必要はありません。

*参加費無料(例会終了後、懇親会を予定しています。)

*会場:新宿アイランドタワー4階 新宿駅西口より徒歩8分