2019年ATEM東日本支部夏季例会プログラム

日時:2019年6月16日(日) 13:00開会

会場:早稲田大学14号館514教室

169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目6−1

(東京メトロ東西線「早稲田駅」より徒歩5分)

 

【研究発表】

13:10~17:10

 

  1. Beyond Presentations: PowerPoint for ESL Activities, Games and Review (13:10~13:40)

Eric Shewack  (Tohoku University)

 

PowerPoint is widely known for its presentation abilities used in multitudes of environments such as business meetings, classrooms, conferences, etc. However, it is not as commonly known for its powerful ability to produce elaborate multi-media ESL review games such as TV-style trivia shows, card games for vocabulary drills, general knowledge quizzes, exam review games and so on. These activities not only offer enjoyable classes which maximize student motivation and reinforce class material in a fun, yet educational manner, but also make use of CALL technology that utilizes all aspects of multimedia from sounds to videos and visuals. Though some knowledge of photo editing software is beneficial in creating these kinds of activities, this presentation aims to introduce creative activities which every PowerPoint user can implement in the classroom.

 

2.『Ben is Back』『Beautiful Boy』に観る家族間コミュニケーションの英語 (13:50~14:20)

代表:塚田三千代(映画アナリスト・翻訳)  共同:田淵龍二(ミント音声教育研究所)

 

映画 『Ben is Back』と『Beautiful Boy』の2作品は、親の知らない場所でドラッグ依存症になっていた子供の更生に、不滅の愛で立ち向かった家族の物語を描いている。

前者は、鎮痛薬オピオイド(opioid)の過剰投薬で、薬物依存へと変じた息子を支える家族の物語である。後者は、自然と文化に恵まれた環境の中で、普通の子供が親に隠れて興味本位で乱用したドラッグが高じて依存症になり、その更生に葛藤して向き合う家族の実話に基づいた映画作品である。再生への「回路」で繰り返す再発と更生を勧める対話が繰り返される。父と息子は回想して語るが、その ‘narrative context’は交差し合う。状況が静かでリアルな映画手法で描かれるので、明るい希望が湧く。

‘social issues’としての《依存症の更生》は、メッセージとして伝わってきて、我々の知見の地平が広がる。メッセージに関わる「依存症更生と家族間のコミュニケーション回路」に見える英語を考察する。

 

 

 

  1. 『Ben is Back』『Beautiful Boy』に観る家族間コミュニケーション

/ 映画英語表現の深堀り(14:30~15:00)

代表:田淵龍二(ミント音声教育研究所 ) 共同:塚田三千代(映画アナリスト・翻訳)

 

映画は優れた語学教材である。人間性と文化の豊かさや複雑さが学べる一方、他方では場面や心情に適した表現が体験的に習える。しかし、この両面を同時に提示する授業は思うほど簡単ではない。そこで、文化面(塚田)と言語面(田淵)を区別しながら融合する共同研究をおこなった。本発表では映画における英語表現の側面に焦点を当て、特徴的フレーズを抽出した。抽出条件は、(1) 物語展開のカギとなるシーンのフレーズ、(2) 広い応用範囲の2つとした。条件(1)は人間性と文化に通じ、条件(2)は言語表現に通じる。条件(1)では予告編を活用し、条件(2)では映画映像コーパスで深掘りする。例えば『Ben is Back』ではセリフ”It’s on you. お前のせいだ” を取り上げる。そして空間的配置を示す on が人についた場合の語感を複数の映像シーンで探求する。また、「~のせいだ」の英語表現もコーパス検索しつつ、場面に応じて使い分けできる語学力の形成を目指した。

 

【休憩:15:00~15:20】

 

  1. 映像メディアを取り入れた句動詞の指導:映像導入の前後データの比較(15:20~15:50)

スプリング ライアン(東北大学 高度教養教育・学生支援機構)

 

英語学習において、句動詞の使用と理解はとても重要な要素の一つであるが、動詞枠付け言語(日本語、韓国語、スペイン語など)を第一言語とする英語学習者にとって、それはとても困難である(Liao & Fukuya, 2002; Spring, 2018など)。Yasuda (2010)やSpring (2018)によれば、句動詞の指導に認知言語学の知識を加えれば、日本人学生はより効率よく句動詞を習得することができたとするが、両者は主に言語学の観点からこの問題に取り組んでおり、教室で実施するタスクに関しての考察が課題であった。そこで、Spring (2019)は、映像メディアを句動詞の指導に加えたことにより、学生が楽しく学習できたと報告している。ただし、Spring (2019)の結果によれば、学生は映像メディアを使用しない練習問題と映像メディアを使用した課題のどちらも同じぐらい参考になった。本発表では、Spring (2018)やSpring (2019)の結果を踏まえて、練習問題に映像メディアを導入した場合の結果を報告し、導入前後の学生の意見および句動詞クイズの点数を比較し、より効果的な映像メディア使用方法を探る。

 

 

  1. 映像にみるアイルランド英語(16:00~16:30)

吉田雅之(早稲田大学)

 

一般に「アイルランド英語」といった場合、「アイルランド語(ゲール語)の影響を受けた英語」という「狭義のアイルランド英語」を指す場合とは別に「広義のアイルランド英語」が存在する。実際に文学作品などの分析で多用されているのは後者である場合が多い。その特徴の中にはイギリスにおける regional dialect すなわちイギリス北方方言(数百年前の英語の一部を垣間見ることができる)の特徴と、さらに class dialect すなわち non-standard English (イギリス国内でstandard / non-standard を意識するようになったのは18世紀後半以降のこと)の特徴があり、それがアメリカにおけるアイルランド系移民の英語の特徴ともなっている。本発表では英語史の視点を利用しつつ、映画を中心とした映像の中で使われている広義のアイルランド英語を分析する。もしステレオタイプがあるとしたら、それは何なのかを指摘し、合わせてアイルランド系移民にみられる言語以外のステレオタイプについても触れてみたい。

 

 

  1. 映画で考えるトランスジェンダー:

男性から女性へ『レディ・ガイ』&『Girl/ガール』(16:40~17:10)

清水 純子(慶應義塾大学)

 

性的少数者(LGBT)差別解消の取り組みが日本でも進んでいる。2015年東京都渋谷区議会で同性カップルの結婚に準じる関係を認める「パートナーシップ証明」が可決され、2016年日本政府はLGBT生徒への対応を記した教職員向け手引きを発行、2017年いじめ防止基本方針の改訂にLGBT生徒保護の項目が盛り込まれた。しかし現実にはLGBTに対する差別と偏見はなくならない。就活ではLGBT カミングアウトにより採用候補から除外の差別が報告される。

LGBTは依然としてデリケートな問題であるため、LGBT関連映画の教室公開には配慮が必要だが、教壇に立つ教師はあらかじめLGBTの問題点とLGBT当事者の気持ちを理解しておく必要がある。今回は、男性から女性への変身①強制的転換『レディ・ガイ』と②自発的転換『girl/ ガール』の2例からトランスジェンダーを考えてみる。