“piggyback” の多義性

タイトル: “piggyback” の多義性
投稿者:松浦加寿子(倉敷市立短期大学)

筆者は保育学科に所属していますが、保育英語で頻出する“piggyback” の単語の意味をご存知でしょうか。piggy(子豚)+back(背中)で「子豚の背中」ではなく、「おんぶ、肩車」という意味で、保育分野では主に使用されます。“piggyback” の語源に関しては、不詳とされています(寺澤, 2024; 堀田, 2024)。

堀田(2024)によると、“piggyback” の語義は一般的に「おんぶ、肩車」と姿勢が異なる2つの意味がありますが、ロングマン現代英英辞典6訂版には、“if you give someone, especially a child, a piggyback, you carry them high on your shoulders, supporting them with your hands under their legs” と「肩車」の意味で記載されていて、コウビルド英英辞典でも同様に「肩車」の説明が述べられています。一方で、ジーニアス和英辞典第3版を始めとする多くの和英辞典では、 “on one’s back”、“on one’s shoulders” という表現を付加することで「おんぶ」と「肩車」の使い分けがなされていて、区別する際には修飾語句を補う必要があるといえます。

また、“piggyback” は医療分野で「追加の静脈内輸液」を指して使用されることがあると田中(2023)は述べています。以下は『ER緊急救命室』(ER, Season 10, Episode 22, 2004)で、看護師のアビーが医師のエリザベスに患者の処置を提案する場面のセリフです。

Abby: CBC, Iytes, liver panel, blood cultures times two, Zosyn 3.75 piggyback?
(血算、電解質、血液培養2回、ゾシン配合点滴静注用バッグ3.75を追加)
Elizabeth: Thought you were a nurse today.(看護師でしょ)<00:07:21>

田中も指摘しているとおり、“piggyback” は形容詞で「追加の」の意味があり、「追加する」という意味の動詞としても使用できます。以下は、『ER緊急救命室』(ER, Season 8, Episode 14, 2001)で、医師のコバッチュが病状が進行している患者に対して、新薬であるクラドリビン(2-CdA)の追加点滴をカーターに指示する場面のセリフです。

Carter: Atopicide? (エトプサイド?)
Kovac: Two CdA. You piggyback in the second phase.
(クラドリビン、第二段階で加える)<00:08:13>

さらに、“piggyback” はビジネス分野でも使用されます。以下は、Netflixで配信されている『エミリー、パリへ行く』(Emily in Paris, Season 1, Episode 2, 2020)で、主人公のエミリーが上司であるシルヴィーに、現在のマーケティングプランは効果が薄いと意見を述べた際に、その理由を尋ねられて、エミリーが返答する場面のセリフです。“piggyback off” は「便乗する」という意味です。

Emily: I studied the marketing plan before I got to Paris. It’s weak.
(パリに来る前にマーケティングプランを調べたけど、今のままでは効果が薄い)
Sylvie: Oh, how so?(どうして?)
Emily: You’re piggybacking off the ad campaign.
(広告キャンペーンに便乗しているだけだから)<00:03:19>

以上のことから、“piggyback” は多様な意味を持ち、保育や医療、ビジネスの分野で多岐にわたって使用されていることがわかりました。興味深い単語に出会った際に、その単語を追究することで私たちの英語表現の幅も広がります。今後も言葉に興味を持ち、楽しみながら英語の語彙力と表現力を向上できるといいですね。

田中芳文 (2023).『医療現場の英語表現』開拓社.
寺澤芳雄 (編) (2024).『英語語源辞典[新装版]』研究社.
堀田隆一 (2024).「hellog~英語史ブログ #5468. piggybackは「おんぶ」でも「肩車」でもある!?」https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2024-04-16-1.html (keio.ac.jp)(最終閲覧日:2024年6月10日)

2024年度 第21回ATEM西日本支部大会 研究発表募集

映像メディア英語教育学会(ATEM
第21回ATEM西日本支部大会
研究発表募集要項

2024年9月21日(土)に対面で「第21回ATEM西日本支部大会」を京都先端科学大学太秦キャンパスにて開催します。

1. 募集分野
ATEM西日本支部は、本大会での研究発表を募集します。本学会の趣旨に鑑み、英語教育、言語学、文学、文化研究、メディア研究、異文化コミュニケーション研究などの多様な専門分野から、映画や映像メディアの英語教育への活用を視野に入れた研究発表を募集します。

2. 応募要項
2.1 発表分野
研究発表:理論的、実証的な研究成果に関する発表を行う。
25分(発表20分+質疑5分)。
実践報告:授業実践やプロジェクト実施に関する発表を行う。
25分(発表20分+質疑5分)。
※著書の概要(説明)のみの場合は「研究発表」、「実践報告」のいずれにも該当しないものとします。
(出版社発表として著者が発表される場合については、事務局までお問い合わせください)。

2.2 応募資格
個人発表、共同発表共に、以下の(a)か(b)のいずれかに該当すること。
(a)ATEMの会員:2024年度までの会費を納入していること。(発表時に2024年年度の会費を納入していない場合は、研究発表費2,500円を支払うこと)
(b)非会員:研究発表費2,500円を支払うこと。
※プログラムに掲載する共同発表者すべてに適用します。学生の場合は無料となります。

3. 応募要領
以下の項目を記載し、eメールにてご応募ください。なお、締切り後に選考を行い、申込者宛に事務局より採否の結果を8月中にeメールにて通知いたします。

*募集期間: 2024年6月10日(月)~2024年8月10日(土)
*申込先:ATEM西日本支部事務局 atemwestjp@gmail.com まで
*提出形式:ワードファイルに以下の記載事項を記入し、添付ファイルにて提出

<記載事項>
氏名(日本語表記)
Name(アルファベット表記)
所属(大学院生の場合は「〇〇大学大学院」)
連絡先eメールアドレス
発表種別(「研究発表」か「実践報告」か選んでください。)
使用言語(「日本語」か「英語」か選んでください。)
発表タイトル(日本語で発表する場合、タイトルも日本語にしてください。)
発表概要(日本語400字程度/英語250語程度)
(注)
発表タイトルは、漠然とした大きなタイトルではなく、映画や映像メディアを使って何をどう教えるのか、あるいは何がわかるのか等、発表の中身が見える具体的なものにしてください。
「発表タイトル」もしくは「発表概要」のいずれかに、対象となる映像メディアの種類(例:映画、TED、ニュースなど)や作品名・タイトル(例:Frozen, “To understand autism, don’t look away”など)を含めていただきますようお願いいたします(対象映画が複数ある場合は、代表的な映画を1つ選んで、「『タイタニック』などの用例を用いて・・・」などとしていただければ結構です)。

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About Applications for the 2024 Nishinihon Chapter Conference

Dear ATEM Members:

The 21st ATEM Nishinihon Chapter Conference will be held in person at Kyoto University of Advanced Science, Uzumasa Campus on September 21st, 2024.

1. Research areas
ATEM Nishinihon Chapter calls for papers focusing on the practical use of movies or multimedia for English education, based on various research areas such as language education, linguistics, literature, cultural research, media study and cross-cultural communication study.

2. Submission requirements
2.1 Presentation types
(1) Research presentation on theoretical or empirical studies (25 minutes, including 5 minutes of Q and A)
(2) Practical report on classroom activities or implementation of projects (25 minutes, including 5 minutes of Q and A)

Note: Presentations about a book (presenter’s work) do not fall under (1) or (2). If you would like to make a presentation about your book as a representative of the publisher, please e-mail the ATEM Nishinihon Chapter Office (atemwestjp@gmail.com ).

2.2 Eligibility
To be eligible to present, the presenter (or in a group presentation, all of the presenters) must be either
(a) or (b) below (excluding students):
(a) An ATEM member who has paid the fiscal year 2024 (April 1st, 2024  March 31st, 2025) membership fee. (Those who have not paid the fiscal year 2024 membership fee as of September 21st will pay 2,500 yen as the presentation fee. )
(b) A non-member who will pay 2,500 yen as the presentation fee.
(If the presenter is a student, there is no presentation fee.)

3. Submitting a Proposal
When submitting a proposal, please provide the following information by an attached Word file to the ATEM Nishinihon Chapter Office (atemwestjp@gmail.com ). The submission period is from June 10th through August 10th, 2024. Notifications of accepted proposals will be sent via email in August.

Name
Affiliation
E-mail
Presentation Type (Research presentation/Practice report)
Language (Japanese/English)
Presentation Title
Abstract(approximately 400 Japanese characters or 250 English words)

1) Please specify your goals or objectives of your presentation in your title, for example, how you will use movies to teach what, or what you can find out through movies, etc.
2) Please include the types (film, TED, news report, etc.) and titles of the visual media relevant to your research.