【投稿一覧】
2009年10月11日
「目に見えないものが見える!!」平井大輔
2009年08月24日
「表現のcultural literacyを知る楽しさ」横山仁視
2009年06月13日
「悪くなるdevelopについて」倉田誠
2009年01月09日
「幸せの尺度」松田早恵
2009年10月11日
タイトル:「目に見えないものが見える!!」
投稿者:平井大輔(近畿大学)
映画Field of Dreams(『フィールド・オブ・ドリームズ』)(1989)には次のセリフがあります。
Ray Kinsella: Something’s going to happen at the game. I don’t know what. But there’s something at Fenway Park. I got to be there with Terence Mann to find it out.
(この試合で何かが起こるんだ。何かわからないけど。しかし、フェンウエイパークで何かあるんだ。それを観にテレンス・マンとそこへ行かないといけないんだ。)<0:43:50>
このセリフで非常に興味深いのが、冒頭の”Something’s going to happen at the game. I don’t know what.”というセリフです。我々はこのセリフをどのように理解しているでしょうか? “what”の後ろに何か見えますか?
実はこのあとには省略されている英語があるのです。この文を省略せずにすべて書き出すとすれば、以下のように理解していることが分かります。
Something’s going to happen at the game. I don’t know what is going to happen.
ただ単に”what”で終わっているのではなく、意味的にはそのあとに上のような文が続いていることを私たちは(少なくとも英語母語話者は)正しく理解しているのです。このように、言葉には目に見えているものだけが存在するわけではないのですね。それを理解できる力ってすばらしいですね。
映画は、このような省略されている英語を発見し、そこに何が隠されているのかを考える機会を与えてくれる最高の材料でもあるのです。映画で言葉力を試してみませんか?
2009年08月24日
タイトル:「表現のcultural literacyを知る楽しさ」
投稿者:横山仁視(京都女子大学)
アメリカ英語をよく観察してみると、今日でも使われている表現の中には北米先住民の習慣を色濃く残しているものがあります。
bury the hatchet (=forget old differences and make peace)「仲直りをする、和睦する、戦いをやめる」はその一例です。この表現はアメリカ先住民の戦いの習慣を反映しているもので、敵が戦うことをやめる印として、トマホーク(北米先住民の戦闘・狩に用いる石[鉄]おの)を文字通りに地中に埋めたと言われています。対照的な表現にdig up the hatchet (=argue about an old disagreement)「古いけんかを再び始める」があります。また、turn down (=reject)「(申し出など)を断る」もまた興味深い表現で、その由来は植民地時代にさかのぼります。当時、恥ずかしがり屋の若い男性が女性に求婚する際に”courting mirror”「求婚用の鏡」(ガラスの上に装飾を施した18世紀の木枠つきの小型鏡で、求愛の習慣的贈物だったことからこう呼ばれる)の鏡の面をテーブルの上にして置き、相手の女性がその鏡を覗き込みほほ笑むと求愛を受け入れたことを表し、逆に、鏡を裏返しにすると求愛を断ったとされています。
こうした表現は映画の台詞にも見られます。『ワーキング・ガール』(1988)と『評決』(1982)から見てみましょう。
TESS: Look, you, maybe you can fool these guys with this saint act you’ve got down, but do not ever speak to me again like we don’t know what really happened. You got me?(いい加減にしてよ。もっともらしい口きいて、他の人は騙せても私には効かないわよ。何が人生は積極的につかむよ。)
KATHARINE: Tess, this is business. Let’s just bury the hatchet. Okay?(テス、これはビジネスよ。済んだことは忘れましょう。いいわね。)
TESS: You know where you can bury your hatchet? Now get your bony ass out of my sight!(忘れるもんですか。消えてよこのギスギスだぬき。)—Working Girl: <01:39:11>
KEVIN: We’ve been going for four years, now. See, four years my wife has been crying herself to sleep. What they did to her sister!(4年面倒を見ている。4年だぞ。女房は4年間泣き暮らした。姉があんなことに。)
GALVIN: Look, I swear to ya, I wouldn’t turn down the offer if I thought I couldn’t win the case.(分かってくれ。私には勝つ自信がある。)
KEVIN: What do you mean, what you thought? I am a working man, trying to get my wife out of town. Now we hired you and I am paying you!(自信だと?俺は安月給取りだが、正規にあんたを雇った。)—The Verdict: <00:49:00>
2009年9月26日(土)に帝塚山大学(学園前キャンパス)で開催されるATEM関西支部第7回大会では、このような言語や文化に関する情報交換も盛んに行われますので、是非ご参加ください。
2009年06月13日
タイトル:「悪くなるdevelopについて」
投稿者:倉田誠(京都外国語大学)
日本人英語学習者の多くが正しく使えていない動詞の一つにdevelopがあります。この動詞は古フランス語起源で、語源はde(脱却させる)+velop(筒)というものです。中学校で習うenvelope「封筒」という単語がen+velopから造られていることは、想像に難くないでしょう。英和辞典等ではdevelopは「<能力・産業など>を発達させる、発展させる」や「<資源・産業など>を開発する」という意味が強調されていますので、「何かをよくする」という意味の動詞であると誤解している日本人学習者が多いようです。しかしながら、developには「<病気>を発病する」という悪くなる用法や「<フィルム・写真>を現像する」という善悪という尺度では測れない用法もありますね。そこで再度語源の意味を「筒状(velop)のものから出す(de)→見えない状態から見える状態にする→顕在化させる」と認識すると、「善悪にかかわらず、何かが際立つ」という中核的意味になります。上掲の「<フィルム・写真>を現像する」という意味は、現像液につけると文字通り「被写体が浮き出てくる」というイメージが出ますよね。ちなみに、現像液はdeveloperといいます。developの意味的ロジック通りですよね。
下記は「悪い方向」に顕在化化しているdevelopの用例ですので、参考にしてください。スペースの関係上、今回は3例しか上げられませんが、2009年9月26日(土)に帝塚山大学で開かれるATEM関西支部大会では、このような英語学に関する情報交換も盛んに行われますので、乞うご期待!
①Deep Blue Sea 『ディープ・ブルー』(1999)<00:05:17>
Susan: 200,000 men and women develop Alzheimer’s each year.(20万人の人々が毎年、アルツハイマー病を発症しているのよ。)
②Big Daddy 『ビッグ・ダディー』(1999)<00:43:52>
Julian: Layla, if you don’t come over to Sonny’s apartment tonight…there’s a good chance I’ll develop a stutter. P-P-P-Please don’t do this to me. (ライラ、今晩ソニーのアパートに来てくれなかったら、僕は吃るようになってしまうと思う。どっ、どっ、どっ、どうかそんな目にあわさないでくれよ。)
③The American President 『アメリカンプレジデント』(1995)<00:44:41>
Leo: But you’ve spent a lot of time over the years telling me the trouble with the environmental lobby is that we don’t understand the fundamental truth that politics is perception. This is a bad time to develop ignorance.(君は環境陳情の工作をする上で、政治上の臭いものに蓋をするようではだめだと力説してきたじゃないか。今回のことも蓋をしていてはだめだよ。)
2009年01月09日
タイトル:「幸せの尺度」
投稿者:松田早恵(摂南大学)
『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』(Waitress)には様々な人生模様が描かれています。主人公のジェナは、自己本位で暴力的な夫アールから逃れたいと思っているのですが、結局彼の言うことには逆らえず、”Absolutely.”(その通りよ)を連発します。そして、不運にもアールの子どもを妊娠してしまうのです。そんな彼女に優しく接するのが、新しく着任してきた若き産婦人科医、ポマター先生です。お互いに家庭があるとは知りつつ、2人はどんどん魅かれ合っていきます。
そんなある日、ジェナはウェイトレス仲間のベッキーと店長カルの不倫現場を目撃してしまいます。自分のことを棚にあげてベッキーを責めるジェナ。でもベッキーにはベッキーの思いがあります。ベッキーには寝たきりの夫がいるのですが、夫と別れること=見捨てることはできないと言うのです。
ジェナは店長カルに次のように聞きます。
JENNA: Are you happy? I mean you call yourself a happy man?
(あなたは幸せ?自分のことを幸せだって言える?)
CAL: Well, if you’re asking me a serious question, I’ll tell you. Happy enough. I don’t expect much. I don’t give much. I don’t get much. I generally enjoy whatever comes up. That’s my truth.(真面目に聞いてるんなら答えてやるよ。十分幸せだよ。期待もし過ぎず、与えることももらうこともほどほど。大抵、成り行き任せを楽しんでいる。それが俺の本音さ。)<01:05:38>
一方、もう1人のウェイトレス仲間ドーンは、第一印象が悪かった(ストーカーされていた)相手との結婚を決めます。
DAWN: He got to me…He’s so passionate. He writes me these spontaneous poems…He’s not pretty, but he grows on you…I’ve found someone who loves me to death and I AM happy.(気持ちが届いたのよ。すっごく情熱的で、即興の詩を作ってくれるの。男前じゃないけど、段々好きになってくるのよ。私のことを死ぬほど愛してくれる人を見つけて、私はし・あ・わ・せ!)<00:58:00>
いろいろな生き方に触れて、ジェナ自身も自分の人生を見つめ直します。赤ちゃんが生れた日、ジェナが下した決断とは?ネタばれするので、後は映画でご確認くださいね。
※余談:このDVDにはPie Recipe Book(パイ5種のレシピブック)が付いていたのですが、私が是非作ってみたいパイは、Falling in Love Chocolate Mousse Pie(恋するチョコレートムースパイ)です。Earl Murders Me Cause I’m Having an Affair Pie(不倫でアールに殺されるパイ)もおいしそうですが、材料のブラックベリーがちょっと日本では手に入りそうにないかもしれません。