2007年

【投稿一覧】
2007年09月12日
「男女間の友情はあり得るか?『恋人たちの予感』より」中井英民
2007年06月30日
「「理想の愛」とシェイクスピアのソネット」奥村真紀
2007年05月06日
「Boot Camp Song」井村誠
2007年05月06日
「 「山羊的」な男を求めて:『ノッティングヒルの恋人』から」石川保茂
2007年01月02日
「Brokeback Mountain (2005):パスしていいんですか」元山千歳


2007年09月12日

タイトル:「男女間の友情はあり得るか?『恋人たちの予感』より」
投稿者:中井英民(天理大学)

シカゴ大学を卒業したばかりのサリーとハリーは、仕方なく同じ車でニューヨークまで行きますが、二人の相性は最悪でまったく意見が合いません。まずはこの映画のテーマである「男女間の友情はあり得るか」でもめます。

Harry: Men and women can’t be friends because the sex part always gets in the way.
(男と女はセックスが邪魔して、友達にはなれないんだ)

Sally: That’s not true. I have a number of men friends and there’s no sex involved.
(そんなことないわ。私にはセックスが絡まない男友達がたくさんいるわ)

Harry: No, you don’t. You only think you do.
(いやいないね。いると思っているだけさ)

この映画では、その後二人の間に恋愛感情やセックス抜きの友情が何年間も続くのですが、でも結局は・・・。さて男女間の友情について、あなたはどう思いますか。私はいまも昔も、異性の親友はできると信じていますが。

この映画からもう一つ、よく聞く議論を紹介します。ハリーは親友のジェスに「性格のいい子だよ」とサリーを紹介しようとしますが、「だったら、その子は美人じゃないんだろう」とジェスは言い張ります。

When someone’s not that attractive, they’re always described as having a good personality.
(そんなに美人じゃない女性のことは、いつでも「性格がいい」って表現されるんだよ。)

男でも女でも、「外見と気立て」は両立しないのでしょうか。


2007年06月30日

タイトル:「「理想の愛」とシェイクスピアのソネット」
投稿者:奥村真紀(同志社大学・非、京都女子大学・非)

古いものを愛し、伝統を重んじることで知られているイギリス社会においては、古典的文学作品もまた愛されています。2007年3月に行われた調査では、イギリス人が「この本なしでは生きていけない」と思う本のトップに、19世紀の女性作家ジェイン・オースティンが選ばれました。また、イギリスの誇る大詩人シェイクスピアの作品も時を超えて愛されています。ジェイン・オースティンの『分別と多感』は『いつか晴れた日に』という邦題で映画化されていますが、分別に富んだ姉エリノアと、感受性の強い妹マリアンがそれぞれに愛と幸せを求める物語です。自己抑制のできるエリノアが我慢強く待つことで愛を得るのに対し、愛こそがすべてだと信じるマリアンは一目惚れした男性に裏切られ、絶望のさなかで、かつて彼と一緒に暗唱したソネットをつぶやきます。

“Love is not love/ which alters when it alteration finds, Or bends with the remover to remove:”
(相手が心変わりをしたからといって変わったり、相手が心を移せば自分も移すような、そんな愛は愛ではない)

これをつぶやく激情的なマリアンを演じるのは『タイタニック』のケイト・ウィンスレット。傷ついた表情が秀逸です。映画で暗唱される、ネイティブの読む美しい英詩のリズムを堪能してみてください。

“To be or not to be; that is the question”(生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ)

これはハムレットのセリフですが、シェイクスピアのセリフはリズミカルでとても美しく、新聞や本のタイトルにもよく引用されます。ソネットというのは14行で書かれる愛の詩のことで、シェイクスピアはソネットの名手としても非常に有名です。17世紀に書かれたシェイクスピアのソネットは、21世紀のみなさんの理想の愛にも通じるものがあるのではないでしょうか?みなさんは、分別に富んだエリノアと多感なマリアン、どちらに共感しますか?


2007年05月06日

タイトル:「Boot Camp Song」
投稿者:井村誠(大阪工業大学)

アメリカ映画では、軍隊の訓練で、隊列を組んで大声で歌いながら走っているシーンがよく出てきますよね。前から気になっていたのですが、いったいどんな内容の歌を歌っているのでしょうか?

リチャード・ギア主演の『愛と青春の旅立ち』(An Officer and a Gentleman, 1982 Paramount Pictures)から、字幕を拾ってみました。

Flying low and feeling mean(低空飛行でぶちかまそう)
Spot a family by the stream(川のほとりに親子連れ)
Pickle a pair (Pick up a pear?) and hear them scream(ナシの実拾って悲鳴をあげた)
‘Cause napalm sticks to kids(おれの落としたナパーム弾)

Family of gooks are sitting in a ditch(溝の中に親子連れ)
Little baby’s sucking on momma’s tit(ママの乳吸う赤ん坊)
Chemical firms don’t give a shit(爆弾相手を選ばない)
That napalm sticks to kids(ナパーム一家を皆殺し)

明らかにベトナム戦争を茶化したものですが、なんともひどい内容ですね。軍隊では頑強な精神(grim determination)を鍛えるために、わざと汚い罵り言葉が多用されるようです。

Lift your head and hold it high(頭を上げて胸を張れ)
The best in the regiment is running on by(精鋭小隊のお通りだ)

これなら勇ましい内容で、ジョギングしながら歌っても問題なさそうです。


2007年05月06日

タイトル:「 「山羊的」な男を求めて:『ノッティングヒルの恋人』から」
投稿者:石川 保茂(京都外国語短期大学)

「山羊的」男はなかなか見つかりません。「ライオン的」男があまりに幅をきかせるので自立たないのですが、「山羊的」男は決して内気なだけではないのです。人生の大事なポイントで,周りの意見を聞き自問し熟考します。

『ノッティングヒルの恋人』の女性主人公アナとの仲が悪化し落ち込むウイリアムに、友人のマックスが「完璧な」彼女を紹介した時も、

WILLIAM: …to find someone you actually love, who’ll love you, the chances are always minuscule.(愛せる人や愛してくれる人を見つけるにはチャンスは奇跡に近いんだ)

と言ってアナとの出会いを大切にします。では、「奇跡」とは何でしょうか。

ANA: …and what am I doing with you?(一体私はあなたと一緒に何やっているのかしら)

二人の出会いは奇跡なのか、なぜ二人に起こったのか。恋人ならば皆この問にとらわれ、考え続け、そしてわからないのです。それでも答が欲しくて、まるでそこに答があるかのように相手の瞳を見つめます。そして二人はお互いの瞳の奥にそれを探し続けて一生を送るのです。

奇跡的な出会いが今街のあちこちで起きているはずです。あなたも街に出かけてみませんか。


2007年01月02日

タイトル:「Brokeback Mountain (2005):パスしていいんですか」
投稿者:元山千歳(京都外国語大学)

「これ、ほんとにハリウッド映画なんだろうか」って、EnnisとJackのセックス・シーンを見たとき、ついつい口から出そうになった。Basic Instinct(1992)でセックス・シーンは主流ハリウッド映画公認になってしまったけど、男同士ってことになると話はちがう。1963年のワイオミング州、夏のブロークバック・マウンティン、羊番として雇われたカーボーイ同士の愛の物語だ。そのときだけの事として関係が終わっていたら問題はなかった。巷に戻った二人は、妻子がいるにもかかわらず山での思いを断ち切れない。Ennis家の階段脇で、歯茎から血がでそうなほどキスしあう二人を、思わず見て呆然とするEnnisの妻Alma、そのひきつった表情を見て「これはヤバイ」と背筋を寒くするボクら。とにもかくにもアカデミー監督賞のAng Leeは伝統と前衛の一線を<パス>してしまうことで知られていて、この映画にも、西部劇を<パス>し”gay cowboy movie”などというサブ・ジャンル名がつけられてしまったりする。ご存じのように英語の<パス>にはpass out(生と死の一線をパスする)やpassword(敵と味方の一線をパスするコトバ)などなどあるが、この映画における決定的英語は、事故で亡くなったJackの実家を訪れたEnnisに苦々しく吐く父親のセリフだ。Jackのヤツは連れ合いと別れてここで牧場をやりたがってたようだけど、そんなことは通用しないよ、と父親は言う。映画の英語はこうだ:

But, like most of Jack’s ideas . . . never come to pass.

「マイッタ」って感じなんだけど、ともあれ、ときにゲイはへトロとして<パス>されて生活していることもある。だけど二人は同性愛者だと知られている。建国の頃、アメリカで同性愛は死刑か去勢にあたいする罪だったし、19世紀後半にあってそれは病気あるいは狂気だった。マサチューセッツ州をのぞきアメリカではまだ同性愛結婚は違法だ。Passover(過越祭)が思い起されもするが、<パス>かどうかはときに命にかかわる。厳しいメッセージを投げかける『ブロークバック・マウンティン』、アカデミー作品賞の最終審査に<パス>してもよかったのに。