ATEM 西日本支部事務局
大阪工業大学
井村誠研究室
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映像メディアと英語

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 (2016.2.1~)

【執筆担当】(2019年度)

1月   小林翠 2月   衛藤圭一  3月  國友万裕・松井夏津紀
4月   倉田誠・Ken Poon 5月  吉川裕介・小野隆啓  6月  井村誠・ルッケル瀬本阿矢 
7月  藤倉なおこ・北本晃治  8月  松田早恵・福井美奈子  9月   山本五郎・金田直子
10月   野中泉・小林敏彦 11月   飯田泰弘・深津勇仁 12月   蘒寛美・田畑圭介
1月  倉田誠 

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2019年3月1日

投稿者:松井夏津紀(京都外国語大学・非)
タイトル:新語mansplainingの用法から見える社会問題

女性の社会進出が進んでいる現代でも、日本を含め未だに男性中心社会の国が多く、女性を一括りにして男性より劣っていると考える風潮が残っているようです。先日、ある大手企業で働く友人(女性)が「mansplainingって知ってる?うちはmansplainingが蔓延してる職場。この単語、使わせてもらう!」と言ってきました。

mansplainingは最近、頻繁に使われている語ですので、ご存知の方も多いかと思いますが、portmanteau word(かばん語)、或いはblend(混成語)と呼ばれる複数の語の一部を組み合わせて作られた語(代表的なものではsmoke + fogからできたsmog )で、manとexplainからできています。mansplainingは「男性が相手の女性を見下して(無知であると決めつけて)上から目線で解説をすること」という名詞で、2008年からインターネット上で使用され始め、2018年にはThe Oxford English Dictionaryに動詞のmansplainが新語として載りました。

では、mansplainingが使われているコメディードラマのセリフを紹介したいと思います。

Erlich: There is a grotesque gender imbalance in the VC field right now. I can help you navigate the toxicity of this male culture which is encroaching on our feminist island. I mean, for instance, there's something called mansplaining? Have you heard about this?(ベンチャー・キャピタル(VC)の世界は男社会。俺は解毒剤になる。女の園を囲い込む男どもへのね。男の解説(マンスプレイニング)って言葉を知ってる?)
Monica: We know what mansplaining is.(知ってるわ)
Erlich: Mansplaining is when a man will condescendingly explain something to a woman that she already knows.(マンスプレイニングとは、女性が知ってる話を男が偉そうに説明すること)
Monica: …
Laurie: Mr. Bachman, we have work to do.(私たちは忙しいの)<00:02:54>
『シリコンバレー』(Silicon Valley, Season 4, Episode 7, 2017)

この会話は、男性のアーリックが投資会社経営陣のモニカとローリーに自分を雇うように交渉している場面のものです。アーリックは、この会社は女性が多いので自分が入社すると男社会と調和が取れるとモニカたちを説得しています。そこで、彼はmansplainingという語を取り上げて、女性に偉そうにする男性がまだ多いということを言おうとします。アーリックはmansplainingを知っているかとモニカたちに尋ねますが、「知ってるわ」と答えるモニカのことばを遮って、mansplainingについて解説を始めます。モニカもローリーも、アーリックがまさにmansplainingをしてくるのでうんざりします。この場面では、アーリックが女性たちに無意識にmansplainingをしてしまうところが笑いのポイントになっています。

また、別のコメディードラマ『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』(The Big Bang Theory, Season 12, Episode 5, 2018)では、学者のシェルドンが同じ大学に勤める学者の妻エイミーに対して次のような発言をする場面があります。

Sheldon: Oh, then perhaps you don't understand. See, mansplaining is when a man explains things to a woman like she’s stupid.”(ああ、君はわかってないんだね。mansplainingっていうのは男が女に対して、バカ相手に説明するみたいに物事を解説することなんだよ(筆者訳))

すでにmansplainingの意味を知っているエイミーは、シェルドンのmansplainingぶりに呆れてことばが出てきません。シェルドンもアーリックと同じように、自覚なしにmansplainingをしてしまっているのです。

上記の2つのセリフはわかりやすい形でmansplainingを皮肉って笑いにしている例ですが、mansplainingによる性差別の「被害者」は女性だけとは限りません。男性の場合、普段の何気ない発言に対して、相手の女性が「それはmansplainingです!」と訴えれば、たとえ「冤罪」であっても、性差別主義者のレッテルを貼られてしまうかもしれません。差別問題は根深く複雑ですので一言では語れませんが、mansplainingによる性差別の「加害者」とされる側も「被害者」とされる側も、mansplainingだと判断{した/された}発言に対して、なぜmansplainingとみな{せる/される}のか、客観的に観察する姿勢が必要ではないでしょうか。まずは「女だから無知なはずだ」とか「男だから女の私を無知だと思っているはずだ」というような主観的な固定観念にとらわれないように注意したいものですね。


2019年3月1日

投稿者:國友万裕(同志社大学・非)
タイトル:映画で学ぶ社会の変遷

筆者は、昨年、ある大学で『百万長者と結婚する方法』(1953)という映画を教材として使いました。マリリン・モンローの主演で、お金持ちの男を見つけて、玉の輿に乗ろうと思っている3人の女性を描くコメディの古典です。この映画が作られた当時は、女性は仕事をするよりも、お金持ちの男と結婚することが人生のゴールという考えが根強かったことを思わせる表現がたくさん出てきます。一つ例を挙げてみます。

Schatze: To be specific about it, nothing under six figures a year.(具体的にいうと、年収が10万ドルない人は問題外よ)<00:16:04>

figureという言葉は色々な意味がありますが、ここでは「数字」という意味で使われています。したがって、under six figuresで年収が6桁以下の人という意味になるのです。この映画の原題はHow to Marry a Millionaireで、ほぼ、原題を直訳した邦題がつけられたと言えます。

ところが、21世紀の映画を見ていると、原題とはまったく関係がないのに、How to(方法、やり方、仕方)のような日本題名が付いているものが多いことに気づきます。ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの主演の『最高の人生の見つけ方』(2007)という映画をご存知でしょうか。この映画の原題は The Bucket Listで、末期癌の老人たちを描くコメディですが、bucket listとは、「死ぬまでにしたいことのリスト」という意味です。アメリカは余命宣告をはっきりしますから、余命が限られている人たちのなかにはbucket listを作っている人が実際に存在するのでしょう。

また、マイケル・ダグラスとダイアン・キートン主演の『最高の人生のつくり方』(2014)という映画もありました。この映画の原題はAnd So It Goesで、老年男女のラブストーリーです。and so it goesとは、「まあ、仕方がない」という意味です。筆者は以前、ある先生から「断念することは獲得することだ」という言葉を聞いたことがあるのですが、人間、歳をとってくると「仕方がない」と諦めることが多くなります。それは挫折というのではなく、自分の限界を知ること、人生を知ることであり、一つの成熟なのです。これと似た表現で、That’s life(それが人生というものさ)や、 Life goes on(辛いことがあっても、人生は続いていくんだよ)といった言葉を日常生活の中で時々耳にします。人生なんて絵に描いたようにうまくいくものじゃないから、頑張ろうと相手を励ます時に使うようです。

他にも『最高の人生の選び方』(The Open Road, 2009)、『最高の人生のはじめ方』(The Magic of Belle Isle, 2012)、『最高の家族の見つけかた』(The Hollars, 2016)など、How to系の邦題がつくアメリカ映画は、お年寄りを主人公にしているものが多いです。最初の『最高の人生の見つけ方』がヒットした影で、こういうタイトルのものが増えたのでしょうが、この背後には老齢化社会があります。「人生100年時代」とも言われる現代では、お年寄りがどう老後を過ごし、どう終活をしたらいいのかが深刻な社会問題となっています。本屋さんに行けば、同じようなタイトルのHow to本をたくさん見つけることができるはずです。老い方を模索している人は多いことが、「~の(し)方」というような映画の邦題に反映されているのではないでしょうか。

もっとも、21世紀になって20年近くが過ぎ、最近はHow to本よりも、教養書の方に人気が移ってきたという話も耳にします。政治、歴史、哲学、音楽、宗教など、幅広い教養を重視する世の中になり、それは多少、これからの邦題にも影響をもたらすかもしれません。


2019年2月1日

投稿者:衛藤圭一(京都外国語大学・非)
タイトル:特定の含みをもつ間接表現

かつて筆者は「間接的な言い方を好む日本人と違って、英語話者はストレートに自分の意見を述べる」と思い込んでいました。しかし、実は彼らも自分の意見をストレートに言わずに、聞き手に真意が伝わるよう間接的な言い方をすることが少なくありません。たとえば、次の例では、テーブルに腰をかけて話をする娼婦のヴィヴィアンに、そのテーブルで朝食を取っていた実業家のエドワードがこんなセリフを言っています。

(1) Edward: There are four other chairs here.(ここには、僕が座っている椅子以外に4脚もあるよ)<00:31:42>
『プリティ・ウーマン』(Pretty Woman, 1990)

表面上エドワードは「他にも椅子が4脚ある」ということを伝えていますが、このセリフを通してマナーに疎い彼女に伝えたいのは「不作法にテーブルに腰をかけてはだめだよ」という忠告です。

このように、英語話者も会話に含みを持たせることがありますが、以下では文脈に関係なく特定の含みをもつ間接表現を3つ紹介します。まずは下の (2) をご覧ください。

(2) Amos: Thought she could pull the wool over my eyes. Well, I wasn’t born yesterday. (俺の目を欺くことができると妻は思ったんだ。やれやれ、俺は昨日生まれたケツの青いガキじゃないんだぞ)<00:14:59>
『シカゴ』(Chicago, 2002)

アモスは「昨日生まれたのではない」というセリフを通して、「(これまで生きてきた経験から)俺の目は節穴じゃないぞ」という真意を伝えています。この表現は見くびってほしくないという気持ちを伝えるときに用いられます。
さて、次の例はいかがでしょうか。

(3) McClane: Who do you think you are, lady? Hilary Clinton?(何様だと思っているんだ、そこの女?ヒラリー・クリントンとでも思っているのか?)<01:12:28>
『ダイ・ハード 3』(Die Hard: With a Vengeance, 1995)

(3) では、クラクションを鳴らしながら車を追い越した女性に対して、マクレーンがやじを飛ばしています。彼のセリフは文字通りには「あなたは自分自身を誰だと思っているのか」という意味ですが、相手の傍若無人な振る舞いを批判する時に用いられます。また、(3) は疑問文として機能していないという点も特筆すべきですが、以下の例も疑問文でありながら相手に質問を投げかけているわけではないという点にご注目ください。

(4) Elliott: What are you waiting for? Let’s go!(何を待っているの?さっさと出発しようよ!)<01:36:41>
『E.T.』(E. T.: The Extra-Terrestrial, 1982)

(4) の文は文字通りには「何を待っているの」ですが、エリオットはグズグズしている兄にすぐに出発するよう促しています。このように、What are you waiting for? は相手の行動を促す時に用いられます。

これらの表現を覚えておくと、間接的に述べられていても相手の真意をすぐ把握できるようになりますので、ぜひご参考にしてください。


2019年1月1日

投稿者:小林 翠(小野学園女子中学・高等学校)
タイトル:進行形と相性の良い「比較級and 比較級」

英語には (1) のような「比較級 and 比較級」といった形式の表現があります。

(1) It is getting darker and darker.

(1) は暗さの度合いが次第に増えていくことを表し、「だんだん暗くなってきている」という意味になります。(1) の例のように、「比較級 and 比較級」は動詞の進行形と共に使われることが多いですが、このことは映画やドラマの台詞でも度々観察されます。

(2) Uncle Crenshow: The Little family’s getting bigger and bigger.(リトル家は増え続ける)< 00:17:24 >
『スチュアート・リトル』(Stuart Little, 1999)

(2) は、小さな白いねずみのスチュアートを養子として引き取ったリトル夫妻が、リトル家の親戚一同に彼を初お披露目するシーンです。リトル夫妻が新しくスチュアートを迎え入れることで、リトル家の規模がどんどん大きくなっていくことを意味しています。

 次の (3) はドラマ『フレンズ』(Friends, Season 1, Episode 17, 1995) で用いられた台詞です。

(3) Rachel: Every day, you are becoming more and more like your mother.(あなたはあなたのママに似てきてるわ)< 00:10:49 >

(3) は、レイチェルが友人のモニカとケンカをしているとき、モニカが自分の母親の嫌味なところを嫌っていることを知った上で、「だんだんお母さんに似てきている」という捨て台詞を嫌がらせで言ったセリフです。

進行形は、ある時点において動作や状態などが進行していることや、まだ継続中であることを意味するものです。そのため、「ますます~/どんどん~」という段階的な変化を表す「比較級 and 比較級」が進行形と共に使われることが多くなると考えられます。進行形と「比較級 and 比較級」は意味的に「相性が良い」のです。このように、「比較級 and 比較級」は進行形と相性が良いため、共に用いられる動詞が状態動詞でも進行形で使われることがあります。

次の (4) は映画『ムーラン・ルージュ』(Moulin Rouge, 2001) で用いられた台詞です。

(4) Satine: Every day I’m loving you more and more.(日々に高まるあなたへの愛。抑えられぬこの気持ち)< 01:48:31 >

(4) は、花形踊り子のサティーンが舞台上から曲に乗せて、作家であるクリスチャンに向けて思いを伝えるシーンで用いられています。本来、loveのような状態動詞は進行形になりません。しかし (4) は、loveが「比較級 and 比較級」と共に進行形で用いられ、日に日にあなたへの愛が高まっていくということを意味しています。

ほかにどのような動詞と一緒に使われるかなどに注目しつつ、映画で「比較級 and 比較級」の表現を探してみましょう。