タイトル:映画・TVシリーズのセリフと英和辞典
投稿者:田畑圭介(神戸親和女子大学)
現在書店に並ぶ学習英和辞典には、学習効果を高める各種工夫が織り込まれています。例えば動詞getでは[SVO to do] 、[SVO doing]、[SVO done]の形をとることを示す文型情報が視覚的に明記され、辞書の中で該当の箇所にたどり着く道しるべの役割を果たしています。
(1)
a. [SVO to do] Try to get her to sleep. なんとかして彼女を寝かしつけなさい。
b. [SVO doing] I got the old car running. 私はその古い車を始動させた。
c. [SVO done](使役)I’m going to get the car fixed. 車を修理してもらうつもりです。
d. [SVO done](被害)I got my heart broken. (失恋をして)心が折れた。
e. [SVO done](完了)I got my hair done. (美容師に)髪を整えてもらった。
上記の用例は映画・TVシリーズのセリフをもとに作成したものですが、構文ごとにまとめることで、文型と意味の対応関係が明確になります。
ただ、口語的な英語表現で構成される映画・TVシリーズのセリフの中には、上記の分類には当てはまらない用例も存在します。
(2) He’s got me confused with someone else.
(彼は俺のことを別の人と勘違いしている)<01:03:34>
『タンタンの冒険:ユニコーン号の秘密』
(The Adventures of Tintin: The Secret of the Unicorn, 2011)
この例は、[SVO done]の文型例ですが、“He’s mistaken me as someone else.”と同意となり「使役」「被害」「完了」のいずれの文意にも厳密には該当しません。(2)は「別の人と勘違いされるようにさせる」という表現形式ですが、実際に勘違いしているのは主語のheなので、(2)を(1c)の「使役」と全くの同質とみなすことは難しいです。ともかく、(2)は下線部を一つのまとまりとして捉えて、正確な理解と共に使えるようにもしておきたい表現の一例です。
英和辞典は(1)のような文型情報に加え、各語彙を使い分けるための注記も豊富に掲載しています。例えば「中古の<車>」はused、second-handの形容詞が一般的ですが、pre-ownedという表現もあります。
(3) Out there, there are 387 more new and pre-owned cars, …
(向こうには、387台以上の新車と中古車がある)< 00:20:33>
『フアン家のアメリカ開拓記』(Fresh Off the Boat, Season 2, Episode 3, 2016)
The TV Corpus (https://www.english-corpora.org/tv/)ではused car(s)の使用が圧倒的に多く、次いでsecond-hand car(s)、pre-owned car(s)の順となります。pre-ownedをウィズダム英和辞典(三省堂)で調べてみると「主に広告」という使用上の補足情報があります。これは、「以前所有されていた」という表現方法から、古さのイメージが緩和されたと考えると、納得がいきます。
本稿で紹介した(1)や(3)の各種表現を英和辞典で調べてみると、文型や用法に関する情報を通じて当該表現の全体像が把握できますので、英語学習の際には英和辞典を手の届く範囲に置いておきたいところです。