ユダヤ事情を知ればTVシリーズがもっとおもしろくなる?!

タイトル:ユダヤ事情を知ればTVシリーズがもっとおもしろくなる?!
投稿者:松井夏津紀(京都外国語大学・非)

「ユダヤ系キャラが出てくるTVシリーズは?」と聞かれれば、海外ドラマ好きなら様々な作品名が出てくるのではないでしょうか。『となりのサインフェルド』(Seinfeld, 1989-1998)のJerryや『フレンズ』(Friends, 1994-2004)のRossとMonica、『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』(The Big Bang Theory, 2007-2019)のHoward、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(Orange is the New Black, 2013-2019)のNicky、『HOMELAND』(Homeland, 2011-2020)のSaul、人気アニメ『サウスパーク』(South Park, 1997-)のKyleなど、数々の人気シリーズでユダヤ系の登場人物が出てきます。そして、これらの作品では、セリフやストーリー展開と登場人物の背景にあるユダヤ事情が深く関わっていることがよくあります。

「ユダヤ人」の定義にもよりますが、世界のユダヤ系人口は推計2000万人だそうで、そのうち約650万人がイスラエルに住んでいますが、アメリカにも500万~700万人のユダヤ系市民がいるそうです。アメリカでは、ユダヤ系はマイノリティーですが、映画産業関係者にユダヤ系が多く、このことがTVシリーズのユダヤ系アメリカ人というキャラクター設定に影響していそうです。(上記シリーズにもユダヤ系製作者が携わっています。)

これらの作品では、ユダヤ教の行事の場面に遭遇することも珍しくありません。では、『フレンズ』のRossと幼い息子のBenとのやりとりを見てみましょう。

Ross: You know what holiday is coming up?(もうすぐ何の日が来るかわかってる?)
Ben: Christmas.(クリスマス)
Ross: Yeah, and you know what other holiday is coming up?(それともう1つあるだろ?)
Ben: Christmas Eve.(クリスマスイブ)
Ross: Yes, but also…(あと1つ・・・)
Hanukkah!(ハヌカー!)See, you’re part Jewish and Hanukkah is a Jewish holiday.(お前もユダヤ系だ。ユダヤの祭りだぞ)<00:05:31-00:05:52>
『フレンズ』(Friends, Season 7, Episode 10, 2013)

Benはユダヤ系の父Rossとは別々に暮らしているので、ユダヤ教の伝統ことはまだよく知らないようで、Rossがユダヤ教の行事を教えようとしています。このシーンでは、Rossが “you know what other holiday is coming up?” と聞いたときに、大人だったら “Hanukkah” と答えるところで、幼いBenが “Christmas Eve!” と答えることで笑いが起きています。言い換えると、Hanukkahの存在を知らないと笑えないシーンです。このように、クリスマスの時期に祝うHanukkahや、ユダヤ教の成人式のBar mitzvah(女児はBat mitzvah)、ユダヤ教の戒律に従ったKosherという食習慣について少し知識があると、TVシリーズのストーリー展開を理解するのに役立つことがあります。

コメディーでは、「ユダヤ人的ステレオタイプ」が笑いのネタになっていることもよくあります。多くは製作者がユダヤ系なので、「自虐ネタ」という側面であるのかもしれません。代表的なステレオタイプに「世話焼きのJewish mother」というものがあります。Big Bang TheoryのHowardの母親は、このステレオタイプの大げさバージョンと言ってもいいでしょう。また、HowardやFriendsのRossのような「神経質で振る舞いがぎこちないマザコン男」というのもユダヤ系のステレオタイプの一つのようです。SeinfeldのJerry やSouth ParkのKyleのようにニュートラルな気質のキャラクターもいるのですが、そんな彼らでも「ケチ」というようなユダヤ人いじりはつきものです。South Parkでは、シリーズを通してKyleが宿敵Cartmanから様々なユダヤネタで「いじられる」のが鉄板ネタになっています。

アメリカやイギリス、カナダ、フランスのような欧米諸国には、一定数のユダヤ系住民がいるので、自身がユダヤ系でなくても、このような「ユダヤ事情」になじみのある人が多いようです。しかし、日本人の多くは実生活でユダヤ文化と接することがほとんどないので、ユダヤ事情は未知のものであることが多いと思われます。ユダヤ事情に関する知識が少しあると、TVシリーズや映画をより詳細に楽しむことができることも多いので、作品を見ながら少しずつ学んでいくのもよいかもしれません。