動詞化する語について

タイトル:動詞化する語について
投稿者:福井美奈子(京都産業大学)

英語の中には「通常は名詞として扱われるが、動詞として使用されることもある」語があります。book(予約する)、ship(発送する)、あるいはdress(~に服を着せる)などはほんの一例であり、日常的に使用する語として定着しているものは多く存在します。また、このような語の中にはskype(スカイプをする)、youtube(YouTubeを観る)など、インターネット普及後に生まれた新しい語も存在します。ちなみに、google(検索する)は企業名が動詞化している点で上記の語とは異なるものの、『ジーニアス英和辞典(第5版)』などの辞書にも掲載されていることから、一般的に使用される語として認識されていると考えることができます。

Googleに代表される膨大な情報量を持つ検索エンジンは、我々の生活を大きく変化させました。そこで、単に「検索する」という意味にとどまらない動詞googleの使用について、映画『理想の恋人.com』(Must Love Dogs, 2005)を通して考えてみることにします。

8か月前に離婚をして家に閉じこもりがちなSarahを心配する家族が彼女の家に一堂に会します。家族の願いはSarahが再婚して幸せになることで、次々と写真を見せながら彼女に恋人候補を紹介しようとします。しかし、どの写真を見せられても気乗りしないSarah。仕方なく家族たちは彼女がそのうち興味を持ってくれるものと願いながら、持参した写真を冷蔵庫にマグネットで貼りつけていきます。すると、誰かが貼りつけた雑誌の1ページに掲載された男性に気づいたSarahがBill Jr.に尋ねます。

Sarah: Who is this?(この人は誰?)
Bill Jr.: I have no idea, but if you’re interested, I’ll google him.(わからない、でも興味があるなら検索するよ)<00:03:13>

この例で動詞として使用されたgoogleは、単に「検索エンジンを用いてインターネット上の情報を検索する」という作業にとどまりません。Bill Jr.は件の男性について何の情報も持っていませんが、Sarahを心配し彼女の幸せを願う家族であるが故に、「検索エンジンを利用すれば彼が何者なのかを調べることができるし、彼女にふさわしい人物なのか正体を突き止めることができる」というニュアンスも付加され、検索エンジンが持つ情報量の膨大さについても暗に示していると考えられるのではないでしょうか。

さて、名詞が動詞化する上記の例以外にも、ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(Sex and the City, Season 4, Episode 5, 2001)に興味深い例があります。
ある朝、かつてのボーイフレンドであったSteveとバッタリ会ったMirandaは、Steveから自分のバーを開店するので開店日に来てほしいと誘われます。すると、Steveの新しいガールフレンドのJessicaが“We’d love to see you there.”(2人で待ってる)<00:01:39>と会話に加わります。その後、店を持つことを提案したのは自分であり、Steveと別れてからその提案が実現したことに腹を立てたMirandaは、親友のCarrieに電話で次のように話すのです。

Miranda: She “we’d” him, Carrie, right in front of me.(私に向かって「2人で」よ)<00:01:43>

上の台詞に見られる“we’d”は「私たち2人の中に彼を含めた/入れた」という意味に相当し、Mirandaが独自に動詞化したものですが、話し言葉にこのような自由度が存在することは興味深いことです。直説話法を使用してShe said, “We’d love to see you there.”と表現するよりも、よりMirandaの怒りが強いメッセージとして聞き手に伝わるのではないでしょうか。

技術の発展や新しいサービスの登場を反映し、動詞化する語が現れては廃れていきます。スマホアプリを使用したタクシー配車サービスであるUberからuber(タクシーを呼ぶ)が生まれた一方で、最近はほとんど使われなくなったfax(faxを送る)は、廃れていくことでしょう。今後もどのような語が動詞化するのかについて、注目してみたいと思います。