丁寧さを表す過去進行形

タイトル:「丁寧さを表す過去進行形」
投稿者:金田直子(京都女子大学・非)

誰かに何かを丁寧に依頼する時、どんな表現を使いますか?学生に「私のレポートを手伝ってくれませんか?」という英文を書くよう指示すると、多くの学生がCan you〜?や Will you〜?を使った依頼文を書きます。ですが、英語にはこのような助動詞を使わない依頼表現も多く存在し、また相手との関係によってその丁寧度も変化します。では相手に大変なお願いをする時はどう表現すれば良いのでしょうか。Could you〜?やWould you〜?のように助動詞を過去形に変えることでより丁寧度が増すということは大半の学生が理解しているようですが、動詞を過去進行形にした際にも丁寧度が高まることを理解している学生は多くはないようです。

一般的に進行形は「一時的な行為」を表します。また進行形が依頼表現で使われる時は、相手に対して「仮にこちらの要求が通らなくても問題ありません」というメッセージを伝えていると言われています。そして時制を過去形にすることで現在形のもつ直接的なニュアンスが薄れ、相手と自分の間に心理的距離が生まれます。これによって相手に対して多少のためらいを持った丁寧な表現として響くことになります。またこのような用法は、wonder, think, hope, wantなど心理状態を表す状態動詞に多く見られるようです。

映画『プラダを着た悪魔』(The Devil Wears Prada, 2002)では、主人公Andreaが大嵐の中、上司から自分のために飛行機を手配するよう命じられた場面でも、航空会社に次のように過去進行形を使って依頼をしています。

Andrea: But I was hoping that you could maybe get a flight for my boss… (上司のために今夜中にマイアミからニューヨークへ飛べます?)<00:29:08>

また別の場面では、出版前の入手不可能なハリー・ポッターの原稿をなんとか手に入れられないかと、出版社に電話口でお願いをしている次のセリフが見られます。

Andrea: Yes, I know. I know it’s impossible to get, but, well, I was wondering…if you could make the impossible possible, if that’s at all possible? (無理なのはわかってますけどあなたなら不可能を可能にしてくださるかと)<00:50:31>

このように過去進行形を使うことで相手に対して無理難題と思われることを丁寧に、婉曲的に表現することが可能になるのです。また、I was wondering if / whether〜 はTOEICの新形式テストの公式問題集5冊(10テスト)で10回の生起しており、TOEIC対策の授業やビジネス英語の授業において学ぶべき表現といえます。ただし、授業で音読をさせる際も闇雲に発音させるのではなかなか定着には至りません。映画のシーンを提示することで、登場人物たちの関係だけでなく、過去進行形を使った依頼表現のより深い理解を促すことにつながるのです。この点を踏まえた上で音読練習を行うとより効果的ではないでしょうか。