オンライン会議システムを利用した国際交流授業

タイトル:オンライン会議システムを利用した国際交流授業
投稿者:井村誠(大阪工業大学)

2020年に発生したコロナ禍によって、学校の授業はオンライン化を余儀なくされましたが、それはこれまでにないスピードでコンピュータを介在させたコミュニケーション(CMC: Computer Mediated Communication)を世界中に普及させることにつながりました。その大きな役割を担ったのがZoomやMicrosoft Teams、Google Meetといったオンライン会議システムです。

技術革新の目まぐるしい進歩についていくことは、日々忙しいわれわれ教師にとってチャレンジングなことですが、同時にそれは、ネット上に存在する教材を効果的に利用したり、これまでにはなかなか出来なかったような新しい活動を授業に取り入れたりするチャンスでもあります。この逆境が開いた新たな機会として、オンライン会議システムを利用した日韓国際交流授業の例を紹介したいと思います。

参加者は筆者のゼミに所属する大阪工業大学の学生9名と韓国国民大学のSeo Jiyong先生(姉妹学会STEM会員)の学生9名で、2000年の6月から7月にかけて約4週間にわたって交流活動を行いました。自己紹介から始まったペアワークでは、1回目は緊張して英語に詰まって沈黙する場面もありましたが、2回目は画像や動画、翻訳ソフトなど、インターネット上の様々なリソースを共有しながら、なんとかコミュニケーションをとろうとする様子が見られました。

最終週には、映画を使った異文化理解を目的とするグループディスカッションを行いました。学生にはSDGsのテーマにもなっている貧困問題を扱って、同時期に世界的な話題となった日韓の映画『万引き家族』(是枝裕和監督 2018)と『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督 2019)を各自で前もって見た上で、Zoomのブレイクアウトルームを使って6人ずつのグループに分かれて、以下の議題について話し合ってもらいました。

1. Talk about the impressions you got from each movie. Are they similar or different? In what way?
2. Did you find any cultural differences in people’s behaviors, communication styles, or the way things are described or expressed in the scenes?
3. Why do you think both movies received so much media attention?

これらの映画はいずれも洋画ではないので、英語自体を学習リソースとするものではありませんでしたが、活発な意見が交わされ、お互いの文化を理解するうえで有効なコンテンツであったと思います。ともに貧困問題をテーマにしているとはいえ、『万引き家族』のほうは描き方が直接的ではなく、家族の絆ということに焦点が当たっているのに対して、『パラサイト 半地下の家族』の方は、より直接的に格差社会に対する怒りを描いているのではないかというのがグループディスカッションで達した結論です。また貧困の象徴である半地下という家屋構造が、もともと朝鮮動乱の時に作られたシェルターに端を発するものであったということは、日本人の学生にとって驚きであったようです。この間の活動について、自由記述のレポートを書いてもらっていましたが、それぞれにとって母語ではない国際共通語としての英語を通じて互いに意味交渉をする中で、英語を話すことへの不安感が和らいだという感想が見られました。

コロナは確かに禍ですが、このように新たな機会も開かれました。オンライン会議システムを利用すれば、教室や国の壁を超えて学生同士が交流し、豊富なメディアリソースを活用して、互いに学び合う場を作ることができます。またそこで学生たちは、国際共通語としての英語(EIL: English as an International LanguageあるいはELF: English as a Lingua Franca)を実際のコミュニケーション(authentic communication)の中で使うことを通して、身につけていくことができる可能性が広がります。これは長年果たし得なかった日本の英語教育界の夢である「実践的コミュニケーション能力の育成」を現実のものにする、絶好の機会ではないでしょうか。