TOEIC® L&Rテストにおける初学者の口語表現理解について

タイトル:TOEIC® L&Rテストにおける初学者の口語表現理解について
投稿者:福井美奈子(京都産業大学)

TOEIC® L&Rテストのここ数年の傾向として、口語表現が生起する頻度が高くなっていることが挙げられます。例えば、“I’ve got to get going.”(もう行かなくちゃ)、“I’m in.”(私も参加するわ)、“I’m on my way.”(向かっている途中です)などは、表現そのものの意味が理解できればよいので、初学者の学習に困難さが伴うことはないでしょう。しかし、“Will do.”などの、相手の発言に対する応答表現は、表現を単に日本語訳することにより理解しようとしてしまいがちな初学者にとって、ハードルが高いものです。『公式TOEIC Listening & Reading問題集3』(IIBC, 2017)より、Part 7のテキストメッセージチェーンを例に考えてみましょう。

Filiz Budak 8:30 A.M.
Hello all. Once again when I opened up the shop earlier today, all the lights were on. Does anyone know how that happened?(おはよう、皆さん。今日先ほど店を開けたときに、また照明が全部ついていたの。どうしてそんなことが起こったのか、誰か分かるかしら)

まず、8:40 A.M.にBudakさんが開店時の照明の状況ついて、他の店員たちに問いかけました。すると、ある店員が照明を切るためのタイマーを確かにセットしたことや、別の店員が閉店30分後に店の前を通った時には照明は消えていたなどの情報が寄せられました。そして、3日間も同じトラブルが続いていることと店員たちから寄せられた情報を元に、Budakさんはタイマーに問題があることを結論付け、8:48 A.M.にある依頼をしますが、それに対するやりとりは次のようなものです。

Filiz Budak, 8:48 A.M.
Contact the company that did the installation. The paperwork should be in one of the filing cabinets. And until the timer can be fixed, the last person on duty will have to turn off each light before closing. (設置を行った会社に運絡してちょうだい。事務書類は書類整理棚の1つに入っているはずよ。それから、タイマーが修理できるまで、勤務の最後の人が店を閉める前に各照明を消さなければならないわね)

Jae Woo Han, 8:50 A.M.
Yes, I remember filing their invoice at the time of the installation.(ああ、設置のときにその会社の請求書をファイルにとじたのを覚えています)

Luke Ciccone, 8:51 A.M.
Will do.(そうします)

8:51 A.M.のCicconeさんの応答は、直前のHanさんに対するものではなく、8:48 A.M.のBudakさんの命令に対するものです。このことは、初学者が“Will do.”の意味や用法を理解することを難しくさせていると考えることができるのではないでしょうか。

そこで、映画『ナイト・ミュージアム』(Night at the Museum, 2006)を通して、この表現を考えてみることにします。

どんな仕事も長続きしない主人公のLarryが、自然史博物館での仕事の面接に行く時のシーンです。Rebeccaは館内を案内しながらLarryを面接会場に誘導していきます。すると、展示物を好き勝手に触る子供たちを見て、突然現れたMcPhee館長が‟Please don’t touch the exhibits!”(展示品に触るな!)<00:11:18>と注意します。そして、このような「悪い客」は追い出すべきだと考える館長とRebeccaは次のようなやり取りをします。

McPhee: Work it out, please. (目を離すな)
Rebecca: Will do, sir.(はい、そうします)<00:11:40>

このシーンでは、RebeccaはMcPhee館長から受けた命令に対し、‟Will do, sir.”と深くうなずきながら応えます。つまり、この表現は直前の依頼に対しての応答であり、相手の発言内容を実行する意図を表すものであることを初学者ははっきりと理解するでしょう。

TOEIC® L&Rテストの指導に限らず、どういったレベルの情報を学習者に与えるべきかについては、バランスが難しいものです。先の2例を元に考えると、初学者への“Will do.”の指導については「直前の依頼に対する応答」であることの理解を優先し、定着を目指すのが適切ではないかと考えます。