学生による映画レビューの魅力



原田知子  武蔵野音楽大学

2007年から授業で映画やドラマを使い始め、夏休みに「好きな映画を英語音声で観てレビューを書く」課題を出すようになりました。ヒントになったのは、映画『スクール・オブ・ロック』で主人公のデューイがロックを教えるため生徒たちにCDを渡し、聴く宿題を出す場面です。「これを映画でやったらどうだろう。学生自身に映画を選んでもらったら、さらに楽しいのでは」と思いつきました。

当初は夏休みの必修課題でしたが、2017年から英語が半期科目になったので、任意参加のレビューコンテストに変更しました。前期最後の授業で趣旨を説明し、GoogleフォームのURLを履修者全員に知らせておきます。書式には「映画の原題、邦題、おすすめ度(星1~5で評価)、映画の感想、印象に残ったセリフ」を入力してもらいます。

視聴媒体は自由ですが、劇場での視聴だと印象に残ったセリフを書き留めるのが難しいため、DVDかストリーミングでの視聴をすすめています。映画視聴時は日本語字幕、印象に残ったセリフを書く際は英語字幕を利用し、英語字幕がない場合は自分でできるだけ聴き取るよう指示しています。感想は英語でも日本語でもかまいません。

優秀作は本人の同意を得て、私の担当するクラスの授業で発表し、扱われた映画の予告編を見せます。おすすめ度の星を集計したランキングも紹介します。16年間の1,500名の学生による評価ランキングは以下の通りです。(カッコ内は映画製作年)

1 魔法にかけられて(2007)

2位 プラダを着た悪魔(2006)

3位 塔の上のラプンツェル(2010)

4位 チャーリーとチョコレート工場(2005)

5位 アナと雪の女王(2013)

6位 サウンド・オブ・ミュージック(1965)

7位 オペラ座の怪人(2004)

8位 レ・ミゼラブル(2012)

9位 パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち(2003)

10位 ヘアスプレー(2007)

10位まで紹介しましたが、実は1位の映画について書いた学生は37名、2位は25名、10位にいたっては13名のみです。過去に1〜2名だけが取り上げた映画も多くあり、製作年、ジャンル、内容などバラエティに富んでいます。ただ、音大なのでやはりミュージカル映画や音楽を題材にした映画は人気があり、製作年が1965年と古い『サウンド・オブ・ミュージック』が6位にランクインしているのが特徴的です。ミュージカル以外の映画のレビューでも音楽への言及が多く、専門的なコメントも見られます。

任意参加にしてから提出者の人数は減ったものの、意欲のある学生ばかりで、以前だったら最終選考クラスの優秀なレビューが集まるようになりました。「今まで日本語吹き替えだけで洋画を観ていたが、この課題をきっかけにオリジナル音声のおもしろさを初めて知った」という学生もいます。同じ大学の学生が選んだ映画ということで学生の関心は全体に高く、レビューに惹かれて映画を観たという声もよく聞かれます。

  映画レビューを通じて学生の嗜好や心理を知るだけでなく、知らなかった映画に出会えたり、知っていた映画の新たな魅力に気づかせてもらえたりするなど、私自身が学ぶことが多くあり、非常に有意義です。授業をお持ちの先生方にヒントになれば幸いです。